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監査令嬢~仕事を減らしたいだけなのに、王国が勝手に改革されていきます~  作者: 涙目
第十章 教育機関創設編

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第三話 それよりもこちらですわ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王都。

 王国人材育成計画第一期選抜試験会場。


 大勢の人々で賑わっていた。


 商人の子。

 農民の子。

 職人の子。

 孤児院出身者。

 下級貴族の子弟。

 王国各地から集まった若者達である。


 当初。

 貴族達は集まらないだろうと考えていた。


 だが結果は逆だった。


 募集開始から数日。

 予想を大きく上回る応募が集まったのである。



「思ったより多いな」


 選抜会場へ視察に来たルーカスが呟く。


 受付前には長い列ができていた。

 試験開始を待つ受験者達である。


「そうでしょうか?」


 隣で資料を確認していたミリアが答える。


「人材不足なのでしょう?」


「まあそうだが……」


「でしたら当然です」


 ミリアは受験者達へ視線を向けた。


 平民達。

 下級貴族達。

 年齢も境遇も様々。


 だが共通点がある。

 皆、自分の未来を変えたいと思っている。


「機会があれば挑戦したい方は多いのですね」


 ミリアは少し嬉しそうに呟いた。



 試験は数日に渡って行われた。


 読み書き。

 計算。

 記憶力。

 論理問題。

 観察力。

 行政実務を学ぶために必要な基礎能力。


 そして。

 最終日。


 結果が発表された。



 王城。

 特設会議室。


 机の上には大量の答案用紙。


 集計結果。

 得点表。

 順位表。


「応募者総数六百八十七名」


 担当官が報告する。


「一次通過百九十四名」


「最終選抜五十名」


 ルーカスは軽く目を見開いた。


「そんなに優秀な人材がいたのか」


「はい」


 担当官が頷く。


「しかも半数以上が平民出身です」


 会議室が静かになった。


 予想以上だった。

 貴族達も口を開かない。

 数字がそう示している。


 能力は身分と一致していない。


 ただそれだけだった。



 翌日。

 選抜された五十名が王城に集められた。


 緊張している者。

 喜んでいる者。

 信じられない顔をしている者。


 反応は様々だった。


 その様子を見ながら、ミリアは小さく頷く。


「皆、良い顔をしていますね」


「そうだな」


 ルーカスも答えた。


 未来への期待。

 不安。

 緊張。


 全てが見て取れる。


 そこには確かに可能性があった。


「ところで」


 ルーカスは周囲を見回した。


「アメリアはどうした」


 会場にいない。


 今回の計画の発案者である。

 いるものだと思っていた。


 するとミリアは平然と答えた。


「監査局です」


「監査局?」


「通常業務に戻られました」


 ルーカスが固まる。


「なぜミリアがやっているんだ?」


 当然の疑問だった。

 するとミリアは苦笑した。


「希望しました」


「アメリアがか?」


「私がです」


「……は?」


 ミリアは五十名の若者達を見る。


「この子達がどう育つのか」


「少し見てみたくなりました」


 ルーカスは何となく理解した。


 会議で最初に賛成したのもミリアである。


 彼女なりに思うところがあったのだろう。



 その頃。

 監査局。


「局長」


「何でしょう」


「本日は選抜者発表の日ですが」


「そうですわね」


 アメリアは書類から目を離さない。


「行かれなくてよろしいので?」


「担当はミリア様ですので」


 当然だった。


 問題は発見した。

 計画も提出した。

 実施責任者も決まった。


 ならば。

 監査局長は監査局の仕事へ戻る。


 それだけだった。


「それよりもこちらですわ」


 どさっ。


 新しい資料が机に置かれる。


 局員が青ざめる。

 嫌な予感しかしない。


 表紙には大きな文字。


 『教師候補者一覧』


「局長」


「何でしょう?」


「もう次の段階ですか」


「必要ですので」


 即答だった。


 どうやら。

 王国人材育成計画はまだ始まったばかりらしい。

お読み頂き、ありがとうございます。

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