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短編14 『鈴蘭の祝福』の活動録その1 前編

 騎士団…この世界にある聖ルーマルコーランド帝国に限っていう話だが、騎士団とは帝国における帝国軍に認可された義勇兵爵達による組織的小規模部隊の総省の事である。帝国軍が認可するために決めている基本的な条件として、明確な住所番地を持つ騎士団拠点を所有している、固定団員数が16人以上の集まりであることだ。


 現在数百にも及ぶ様々な騎士団が存在しており、その騎士団の多くは義勇兵爵として軍からの依頼を受け報酬を貰い稼ぎとする他、その騎士団としての集団で副業的に事業を展開。それぞれの騎士団がやっている業種に合わせメンバーも成長、募集要項も複雑化していく。そして騎士団として戦闘のあり方も入団条件としていった結果…


『バイク愛好会 入団条件 普通魔導二輪運転免許以上、もしくは車両整備資格』


『クラブ【サンクチュアリ】 入団条件 エルフ系精人種のみ、顔がいいこと』


『円卓騎士団 入団条件 特になし(ただし入団後のメイン武器は剣のみ)』


『南鳩羽海水プール 入団条件 魔法属性に水を持つ人のみ』


『ひよりが温泉宿 入団条件 過去一度以上ランキングに載ったことがある人』


『槍サー騎士団 入団条件 槍を得意としている者(※卑猥なことはしていませんっ!!)』


『アラタ騎士団 入団条件 無し、初心者大歓迎』


『最強!Knights of Strongest 入団条件 無し、追記 アラタ騎士団に入ろうと思っているそこの君!そんなかび臭そうなところよりも是非この騎士団に入ろう!【アホ Byアラタ】』


 …このように様々な特色を見せる騎士団が増え日々入団を希望する人達にとって欠かせない情報の1つとなり、今日もまた集会場の職員によって騎士団から頼まれた新しい募集用紙が募集掲示板に張り出されていた。

 すると突如集会場内に魔導通信機に入った一本の連絡により呼び出し音が鳴り響いた。用紙を張り出していた職員は早足で魔器を手に取り通信を受ける。最初は穏やかな表情をしていたのが内容を聞いていくうちに緊迫した面持ちへと変化し、慌てた様子で通信を切る。


「本日分の依頼中の義勇兵爵が未開拓区域で身動きが取れなくなったとの情報が入りました!原因はビーゴラドンの毒とのこと、至急『鈴蘭の祝福』に緊急の応援要請をお願いします!!」




 『鈴蘭の祝福』現在の騎士団ランキング26位に位置し、魔法属性に毒を持つ人のみが入団することが出来る毒魔法のエキスパートの騎士団。彼らの主な活動は毒に関する様々な研究であり薬学にも深く精通しており毒物を利用した便利な医薬品や医薬道具を開発。彼らの活動は現代帝国医学の発展に大きく寄与しているのは間違いない。

 そしてもう1つの活動は、本来義勇兵爵が毒に犯されたとしても軍である国衛兵爵達にも医療部隊が存在しており帝都及び七大都市内のどこにいても治療を受けられ、依頼中の兵爵達も軍が設営してくれるキャンプに医療部隊が同行をしてくれている。ただし軍である以上キャンプから離れての治療をすることが禁止されている。つまり依頼中にキャンプに戻ることの出来ない状態に陥ると治療を受けられないのだ。そのためこの騎士団が応援要請を受け直接現場に急行し治療をするのである。


「…今日の現場はここか…はぁ、早く研究室に帰りたい」


「シャキッとしてくださいユカリさん。急を要する事態なんですよ」


 帝都と城塞都市『ムルフィルテンジュ』の中間に位置する広野、未開拓区域との境に設営された軍のキャンプに止まった8台のオフロード救急車みたいな車から降りる『鈴蘭の祝福』騎士団の面々。その中でもユカリと呼ばれた下着姿の上によれよれの白衣を肩に掛け、タバコのようなものを咥えながらフケ混じりのボサボサの長く汚い金髪をかきむしる隈が酷く耳の長い高身長の女性がダルそうに軍の職員達との話を聞くために近づくと、職員達は彼女の匂いにいやな顔をする。


「…お、応援要請を受けていただきありがとうございます。現場はここから1km程先にあり依頼には8人の兵爵が参加し6人が帰ってこれない状態とのこと。正確な場所は無事にキャンプまで戻ってこれた彼から聞き出しましたので地図に示しておきます」


「ん」


 ユカリは軍の話をタルそうに聞き他にもキャンプで準備を済ませると団員である屈強そうな男女20人程のメンバーと共に再度車に乗り込み出発した。

 険しい道を走破し進む8台の車、森とも違う草木は生い茂りながらも岩肌が露出している荒れ地の中道なき道を進んだ先に2人の男が倒れているのが見えた。まだ目的地ではないが2人の姿は依頼参加メンバーの内の2人で間違いないのはキャンプで受け取った書類で確認できた。すぐさま団員達が車から降り2人のもとに駆け寄る。


「大丈夫ですか!?返事できますか?」


「…脈拍異常あり、すぐに毒性検査を」


「戦闘による負傷あり…全部で4か所、重傷部位はありません」


「…よし、ここはE班に任せる。残りの4班は私と共に他の奴らの捜索対応にあたるぞ」


「「「了解っ!!」」」


 ユカリの指示で4人が負傷している2人のもとに残り、車も2台置いて6台がさらに奥へと進んだ。道はさらに険しくなりついには地図に示された場所の手前で車を停車せざるを得なくなり車を降りて全員で歩きながら捜索を行った。


「ユカリさん!いました!」


 1人の団員が叫ぶと皆が一斉に団員のそばに駆け寄った。そこには討伐されたおそらくビーゴラドンと思わしき緑の肉塊と、3人の兵爵が倒れていた。すぐにユカリは3人の元へと駆け寄り状態を確認する。傷の重度は異なるものの三人ともひどく顔色を悪くしていた。


「…とりあえずまだ死んじゃいないな。だが…」


 さらには3人の容体は非常に悪いだけでなく戦闘を行った後なのだろう倒れている場所が安全に担架に乗せれるような場所ではない、下手に動かせば傷口がさらに開いてしまうような状態そのものだった。


「仕方ない、応急措置をここで行う。治療後に搬送するぞ、全員周囲の安全確認するんだ」


 団員達が一斉に辺りの木や草を刈り払い、地面に水を撒き砂誇りが舞わないようにする。ユカリもだらしない格好から一変、タバコを落とし踏みつけて火を消し白衣をしっかり着直しボサボサな髪を白い医療キャップに収めマスクに手袋を装着しまさに女医そのものな姿に変わった。そして1人の兵爵のそばに移動する。その兵爵は傷が酷いだけでなく明らかに顔色が真っ青になり、左腕が異様に腫れ上がっていた。


「補佐、毒性検査!」


「はいっ!…ビーゴラドンの自然毒で間違いないです」


「よし、毒針が刺さった部位から可能な限り毒を吸引するんだ、その後血清と輸血を行う。止血処理は私が行う」


 ユカリの補佐についた団員が酷く腫れ上がった腕から吸引器で血ごと毒を吸出し、さらに血液検査をしながら血液パックの準備を行う。その間ユカリはメスや縫い針を準備すると兵爵の体を切開し手術を始めた。それはまるで鮮やかな手捌きで次々と体の傷を繋ぎあわせていった。その後は包帯や支え木で固定し血清が終わるよりも早く手術を完了させた。その後はその兵爵を屈強な男性団員が担架に乗せ血清をしながら慎重にかつ急ぎ車へと運んでいった。


「ゆ、ユカリさん!こっちもお願いします」


 ユカリは息つく間もなく次の兵爵の元へと向かう。次は先ほどの兵爵とは反応が異なり、顔色の悪さよりも口から泡を噴きながら小刻みに痙攣していた。


「ユカリさん、毒性検査でビーゴラドンの反応が出なかったのですが」


「なんでも原因を1つだと断定するなといつもいっているだろ。この症状はジェリーの毒性の可能性が高い。おそらくビーゴラドンとの戦闘に集中し過ぎて誤って踏んづけたのだろう。よくある事だ」


 その言葉に団員はすぐに検査キットを取り替えると検査は陽性を示した。その間もユカリは兵爵への応急措置を終わらせた。そして最後の1人の元に向かう、既に他の団員によって検査は済ませている様子だが何やら困惑している様子だった。


「ユカリさん、ビーゴラドンの魔力毒反応です!」


「ブレスか…」


 理由を聞いたユカリは魔力毒に蝕まれているという兵爵を比較的安定した場所に寝かせ、指から放出している魔力で文字…術式を宙に生成し術式を発動させる。術によって調整されたユカリの魔法の輝きが兵爵の身体を包み込んだ。


「ゴラドンのブレスや毒の魔法というのは通常の毒とは少し異なる。毒の性質に似た他者の生体エネルギーを不純物として体内に入り込んでしまった状態だが血中に流れ込む自然毒に対して魔力毒と言うのは生物の魔力内に流れ込み犯す。自然毒と同じような対処法はあまり効果がなく、古来より解毒方法のない毒と恐れられていたが…今では解毒方が確立され毒の魔力には魔法を以て解毒すればいいと立証されたのだ」


 ユカリの繊細な魔法によって兵爵の男から溢れ出る生体エネルギーの中に混じった毒を見事に分離して見せると兵爵の顔はみるみるうちに穏やかな表情に戻った。ユカリは毒を処理するとふうっ…と額の汗を団員に拭ってもらい緊張で強張った体をほぐし白衣を着崩し始める。


「…とりあえず、ここいらにいる連中の後は任せる。あと一人だが…」


「っゆ、ユカリさん!!」


 タバコを口に咥え着火器を手に取ったところで団員の声が響き聞こえ、呆然とまるで聞こえていないようなふりをしつつも諦めたか溜息をつきながら煙草をケースに戻しまだ姿が見えない最後の一人を救出すべく呼び出した団員の元へ向かうのだった。

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