短編8 『最強!Knights of Strongest』の活動録その1 後編
「うおらぁぁ!!」
どおおぉん…と地面に振り下ろされたハンマーの振動が辺りに響き渡る。その振動に驚いて角の生えた大きなネズミ…アルミラージたちは距離を取る。民族衣装のような上着だけのような恰好をして、蠍の尾の様なものがある背が高くガタイのいい男、イプロクスがハンマーを持ち上げ直すその隙を狙ってかアルミラージの突進が襲い掛かる。それをなんとか腕やハンマーで防ぐ。
「くそっ…こういうすばしっこそうなのはどうにも分が悪い…」
「でも的としては丁度いいよ」
するとイプロクスの足元が突然光り出し、イプロクスを中心として電撃が迸る。もろに喰らっているイプロクスは勿論の事、イプロクスを襲っているアルミラージ数匹も電撃の餌食となったのだ。
「…ジョン、てっめぇー!ふざけんじゃねーぞ!!」
「ふざけてねーよ。大真面目だわ、お前がどんくさくしてるのが悪いんだろ」
イプロクスの怒りの先には、背が低く黒い毛の犬の顔をした男がぶっきらぼうに返事した。
「まー確かにその方が楽になるなら僕も任せっきりに出来るしいいかもね」
「お前ら、無駄口叩いてねーで手ぇ動かせよ」
イプロクスとは対照的にアルミラージ相手に機敏な動きで、ファイグルは短弓による走り撃ちで、ホオズキは刀で各個討伐を図る。
「つか一番はアルフィーだろ!お前が一番さぼってんじゃねぇ」
「だって…ネズミとか気持ち悪いし」
アルフィーとは後ろの方ですっかりおさぼり状態、とはいえそれはアルミラージにとっては関係ない事、剛脚な後ろ足で猛スピードを付けてアルフィーに襲い掛かる。
「ほいっと」
すると近くにいたのかいつの間にかシャオュアンが飛び上がったアルミラージの首に強力な裏拳がクリーンヒットし、顔がへしゃげたまま大きく吹っ飛んでいく。
「ありがとうシャオュアン。私は私で戦えるから気にしないで」
「プークーチー。んじゃ行ってきまーす」
勢いよくシャオュアンが飛び出すと、早速襲い掛かるアルミラージをひらりひらりと回避し、足元を走るアルミラージを蹴り上げると思いっきり掌打を叩き込む。さらに複数で襲い掛かるのに対し、まるで新体操のように体を柔らかく倒立したまま開脚し一回転するなど見事な身のこなしを見せる。いつの間にかかなりの数のアルミラージの注意を引き受けていた。
「ドゥアン!」
「おぅ、ちゃんと躱せよ!」
シャオュアンの合図とともにドゥアンと呼ばれた青い仮面のような防塵具、さらに防弾チョッキを身に着けたような緑色の鱗が映えるトカゲの尻尾の様なものが生えた男?が両腕に取り付けている二丁のマイクロミニガンを発砲する。それと同時にシャオュアンが飛び上がり散弾がアルミラージの集団を襲う。
「おい見ろよイプロクス。あれが手本だぜ」
「うるせー!悪かったな!俺が鈍臭くて!!俺はこういうちっちぇえのを相手するのは向いていないって俺でもわかっとるからな!!」
イプロクスも怒りを露わにしながらアルミラージに襲われながらも奮闘し…そして味方の魔法の中心地点として使われ巻き込まれる。
「アイヤー…あっちも苦戦、こっちも苦戦、意外と大変アルね」
「あん!?俺のは苦戦じゃねーよ嫌がらせだ!…って、他も苦戦してるのか?」
シャオュアンが指をさしたその先は、和甲冑姿にホオズキのような頭に一対の黒い角を生やした銀髪の初老の男が見事な太刀捌きでアルミラージを蹴散らしている一見どこも苦戦しているようには見えない…その奥で、その男の影で、今回騎士団とシャオュアン達のメンバーそのどちらにも属していない、二人の女の子が一匹のアルミラージに翻弄され悲鳴を上げている。
「いやああああぁぁぁぁああぁ!!怖い怖い怖い近い近い近い!!」
「やだやだやだやだ、こないでぇ~~~」
アルミラージが攻撃とも思えない足元をウロチョロするだけの行動なのに、2人は攻撃をしないで…というより片方は背丈と同じくらいの魔法を使うための杖に、もう片方は二人の背丈以上に長い大鎌…足元でウロチョロされてはどうしようもない武器同士の組み合わせでお互いにそんな振り回せない位置で一緒にいたらそりゃ何もできないだろう。
「はぁ…おいアルフィー!仕事だぞ、良かったな~」
アルフィーはあからさまに不機嫌そうな態度を見せながらイプロクスの足元から強力な水柱を噴き上げさせて…アルミラージを攻撃するためかイプロクスを嫌がらせするのが目的なのか分からないが、全身ぐっしょり濡れたイプロクスを近くで見ていたシャオュアンはゲラゲラ笑いこけ、そんな二人をよそにアルフィーは自分の得物である鞭を取り出し、野良参加の女の子二人の元に向かう。
「そらよっ」
軽く鞭を振るうと、女の子達の足に当たらない見事な鞭捌きでアルミラージのみ巻き取り、そのまま上空へと投げ飛ばした。空中で身動きの取れないアルミラージはじたばたもがきながらゆっくり落下する…そして空中にいるアルミラージをアルフィーの鋭い蹴りがクリーンヒットし身体をくの字に曲げながら飛ばされる。
「…えっと、い、イザ…、ジュリ…二人とも大丈夫?」
「イザベルです」「ジューンです」「「ありがとうございます!!」」
二人がお礼を言うとアルディーは照れくさそうに頬をかく。
「ほらジューン、あそこにあるでっかい的を目安に魔法使って」
「え、でも…あの人お姉さんの仲間じゃ…」
「大丈夫、いいから」
「っはい!当たったらごめんなさいっ!!」
ジューンと呼ばれた法衣のようなローブに身を包み、その服の端から見える肌からはヒレの生えた少女は杖を構え呪文を唱えると、イプロクスの足元に炎が広がる、イプロクスもそれにはすぐに気づきすぐさまジャンプするように範囲外へと飛び出すと次の瞬間には巨大な火柱が立ち中にいたアルミラージを炎で包み込んだのだ。
「マジで殺す気かぁ!?」
イプロクスの訴えも届くことなくアルフィーは二人の女の子とハイタッチをする。そんな三人に近寄るアルミラージを刀の一閃で蹴散らす角の生えた老兵。
「…にしても、ゲンさんが斬っても斬っても全然斃せないんだけど…」
「この角ネズミ共は丸々と肥えているからかタフなことで知られておるからのぅ…その上大きいと言ってもたかが膝程度の大きさ、その上すばしっこくて急所も狙いにくい、そして何より…」
ゲンと呼ばれた初老の男が刀を振るうが、アルミラージはささっと草むらの中に隠れ姿を隠す。アルミラージをすっぽり隠すほどの草むらは決して多く、広くないものの草むらから出たり入ったりすることで数の数え間違いや移動ルートなどが見えにくくなり混乱させる元となっていたのだ。
「シャオュアン、フォロー手伝って!イザベル、草を刈って!!」
「っは、はいっ!!」
大きめのぶかっとした緑のワンピース姿をした肌が水色の少女イザベルがその手に持っている大鎌を振るいアルミラージの隠れやすそうな草むらを薙ぎ払う。少しずつだが、アルミラージの逃げられる場所は徐々に減り…永い討伐の甲斐があり半数以上は討伐し、残りの数匹が一か所に集まっている。
「いよぅし…これで最後だな!いっくぜぇ!!」
イプロクスがこれまでの恨み…というか鬱憤を込めてハンマーを思いっきり地面に叩きつけると、その反動なのか衝撃で一か所に集まっていたアルミラージが上空へと打ち上げられ。
「「「はぁぁっ!!」」」
上空で身動きが取れなくなったアルミラージを、ホオズキ、ファイグル、シャオュアン、リュァンゼン、ゲン達五人が飛び上がって一斉に止めをさす。これにてアルミラージは全個体が討伐されることとなった。
「…いやはや、一時はどうなるかと…本当にありがとうございました。収量は減ってしまいますがこれで私達も生活していけます。いつもありがとうございました」
先程までせかせかしていた態度が一変し穏やかそうな村の人のお礼も程々に、全員は撤収の準備を開始した。とは言っても到着後早々に仕事を開始したため殆ど道具は展開していないし、後処理は軍が受け持つことになっている。空はすっかり日が沈み空には星も見え始め暗くなる寸前、まだギリギリ明るいうちに農業都市の軍の宿舎に転がり込む予定だ。全員がバスに乗り込み深々と椅子に座る。
「はぁ~…お腹空いたね」
アルフィーとシャオュアンがバスに揺られていると隣に座っていたイザベルとジューンが何やら二人でぼそぼそ相談しながらアルフィーを見ているのに気がついた。すると何やら二人が意を決したように恥ずかしがりながらアルフィーに声をかける。
「あ、あのー…アルフィーさん!わ、私達も…」
「私達も騎士団に入団してもいいですか!?」
唐突なお誘いに驚くアルフィーとやっぱり恥ずかしいと二人で照れ合うイザベルとジューン。その話を聞いていた男達も後ろの座席から覗き込む。
「あ、あぁ…勿論いいぞ。まだまだ私達は出来たばかりの騎士団だけどそれでもよければな、名前がダサいこと以外は案外いいところだぞ。この馬鹿どもからも私が守ってやる」
「なんだとー」「名前いかしてるだろー」「誰がバカだー」
男共のブーイングを聞き流しながら返事を返すアルフィーに、嬉しそうにお礼を言う二人。
「ふーん…そうだ。私達も入団していいアルか?」
そんな様子を見ていたシャオュアンが口を挟むとアルフィーも男達も、他のドン将のメンバー達もその言葉に耳を傾けた。
「えっ…、い、いいのかシャオュアン。そんな大事な事」
「全然いーと思うよ?いーよねシージャァ?」
「…今の『ドン将』荘は建国前の廃屋を活用しておるが…もう崩壊寸前だしのぅ。ドン将の出来る場所を提供してくれるならわしはどこでも構わぬぞ」
シージャァと呼ばれた背が低く耳の尖った老成した女性が返事するとシャオュアンとアルフィーが見合って喜び、騎士団の男衆もドン将の男連中と一緒に揺れるバスの中で騒ぎ出した。シージャァはそんな様子を見て呆れながらバスの中なので使用だけは控えつつ煙管のような物を口に咥え窓の外をぼーっと眺めた。『最強!Knights of Strongest』騎士団、『ドン将』荘の愉快な連中+αを仲間に加えた彼らが本当に最強の騎士団に至るその日はまだ遠い道のりではあるが、おそらく着実に向かっていっているのだろう。
「…ところで、団長になんて説明しよう…」
「「「「あっ…」」」」
次回投稿は4/15予定




