↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/31

短編8 『最強!Knights of Strongest』の活動録その1 前編

 集会場、ここは軍施設の一部であり主に騎士団に所属していない野良の義勇兵爵がその日の軍からの依頼を求めて集まる場所だ。ただ勿論それだけを目的としている人だけではない。同じ兵爵同士や軍の人間を交えて食事をして情報交換したり、依頼に使うための道具を軍備品から購入したり、ナンパしたり、酔っ払ってそこらへんで寝たりと、いろんな人が集まる。そして中でも一際目立つ行為をしているのは…大きな看板に『来たれ!最強!Knights of Strongest 新人大歓迎』と書かれた看板を持って勧誘活動をしている男達だった。


「はぁぁ~…飽きてきたぜ」


「そう?僕はゆっくり寝れて快適だよ」


「勧誘中に寝るんじゃねぇホオズキ!ジョンも遊んでねぇで俺と代われよ」


「やだよ、その看板無駄に重いじゃん。そういうのを持つのがイプロクスの役目だろ」


「んなわけねーだろ!順番に交代で持つんだよ!!つかファイグルとアルフィーはどこ行ったんだよ!!」


「さぁ?寝てたから見てないよ?」


 イプロクスと呼ばれたガタイの大きく、後ろから蠍のような尻尾を持つ男は看板を持ったまま大きくため息をついた。すると集会場の奥…いわゆる軍の管轄エリア、依頼受付を行っている部署が騒がしくなったのが見え、一人の軍の人間がこちらに気付き歩み寄ってきた。


「君達、騎士団だよね。今さっき依頼で欠員が出たって報告が上がったんだ。急で大変申し訳ないが、依頼参加は出来るだろうか?」


「「「あん?」」」




   …———…


 …ってなことがあって急遽行くことになったんだよ。分かったか?」


「納得するわけないだろ!化粧直して戻ってきたら、急にバスに乗せられてこんな辺鄙なとこまで連れてこられて…まだ依頼の概要すらも聞いていないんだぞ!!」


 揺れるバスの中、肌がグレーみたいな黒っぽい色をした耳の長い軽装の女性がさっきまで勧誘を行っていた三人に詰め寄る。横にもう一人赤い肌にヒレの様なものが生えている男がいるが彼は我関せずと言った様子。三人は戸惑ったような様子で荷物の中から依頼書を引っ張り出した。


「た、大した依頼じゃないって聞いてるから…、ほ、ほら。内容は畑の作物を食い荒らす小型~中型の野生動物の駆除ってあるし」


「…虫じゃないでしょーね」


「それは知らねーよ、それくらいは我慢しろってアルフィー」


「そ・れ・と、そもそもこのバス今どこ向かってるのよ?」


 アルフィーと呼ばれた彼女に詰められ黙り込む三人。それでも鋭い眼光で睨み続ける。


「…農業都市です…」


「アンダルハーグ!?信じらんない…一日でいける距離じゃないでしょ!!泊まりの荷物私持ってきてないわよ!」


「だ、大丈夫だ…俺達も何も持たずに来たから、な。はは…」


「猶更ダメじゃない!!しかもあんたら男と違って私は旅行するのに荷物が必要なんですーっ!!あーもー…どーすんのよ…」


 しょぼくれるアルフィーの傍に1人の女の子が椅子に支えられながらゆっくりと歩み寄る。その姿は体のラインがはっきり浮き出ているような薄い布地の白いチャイナドレスを着たツインテールの少女だ。


「ちょいとそこの精人種のおねーさん。話が聞こえちゃったけど、よかったら私の旅先用荷物貸してあげよっか?未開封で使ってないから安心してほしいんだけど…」


「…え、いいの、ホントに!?ありがとー!!」


「いーのいーの、困った時は助け合いが一番アル。私はシャオュアン、私達は後ろに座っている『ドン将』荘のメンバーと私の5人で一緒にこうして仕事してるからちょっとお酒とか煙草臭いかもしれないけど…」


「ホントにありがとー!私はアルフィー、私達5人は、その…ナ、ナイツオブストロンゲストって名前で活動中の騎士団のメンバーで、男達がバカなせいでこうして欠員補充に駆り出されたってわけ。メンバー勧誘もろくにできないくせに…」


「なんだとー」「お前もさぼってばっかだろー」「最強つけろー」


 シャオュアンとアルフィーが仲良く打ち解けている後ろで、男達がブーブーと文句を垂れる。そんな調子でバスに揺られ長い旅路を退屈なく進んでいく…。




「ったぁ~、やっと着いたぁ…」


 近くの村で休憩を挟みながら6時間、一行は自然豊かで牧歌的な大型都市であるアンダルハーグ、その都市の中心部から離れた今回の目的地でもある農場区画に停車したのだった。バスからはアルフィー達騎士団の5人、シャオュアン達グループの5人組、そしてそのどちらにも属さない2人の計12人の義勇兵爵がバスから降りるとそれぞれ凝り固まった体を伸ばしたり、バスから荷物を下ろしたり…そして各員それぞれ自身の武器の調子確認や調整も行う。


「おぉ、兵爵の皆さん…よくぞ来てくださいました。ささ、どうぞ早く畑の方に。すぐにでも取り掛かってくださいませ」


 すると農場の方から一人の年老いた男性がやってきてはすぐにみんなの背中を押して畑の方へと急かせる。


「…なぁ、そういやぁよく考えたらアンダルハーグにも集会所あるし兵爵もいるし、なんならこういうの駆除専門にしてる騎士団だってあんだろ」


「今は作物の多く収穫できる時期だ、それに野生動物だって活発になる時期でもある。既にみんな動いててそれでも手が回らないから帝都にヘルプが来たんだよ」


 なるほどなぁと思いながら畑の様子を見ると、そこには立派に実った野菜畑の中にいくつか既に食い荒らされた跡が、しかも道にまで作物がつぶれて転がっている。


「うわぁ…ひどい…」


「そうなんです、せっかく育った野菜をネズミ共が食い荒らすんですよ!兵爵の皆さん、さっさと皆殺しにしてしまってください!!」


「よかったなアルフィー、虫じゃなくて」


「…最悪」


 なんて愚痴りながらさらに畑の奥へと進んでいくと、そこには40㎝程の大きな茶色の毛玉が落ちていた。いや落ちているのではない、もぞもぞと動いて野菜をかじっているのだ。その顔はまさに…角が生えているが巨大なネズミそのものだ。しかもそれが数十匹もの群れでいたのだ。その様子にアルフィーとシャオュアンが悲鳴を上げる。


「ちょっと待って何あれ何あれなにあれ———っ!!?ネズミじゃないのー!?」


「何ってエピガウルス、通称アルミラージだろ。まぁネズミというか兎というか…」


「なんにしても畑を荒らす害獣だ、さっさと始末するぞ!」


 イプロクスの音頭取りでほぼ全員が一斉に動き出すが、アルミラージはすぐ危険を察知すると強靭な後ろ足で地面をけり一目散に逃げだし群れが散り散りとなった。


「おい!畑を傷つけたら許さんからな!!」


「っくそ、めんどくせぇな…どうやって畑からおいだしゃいーんだよ」


「ふん、しょうがないの…わしに任せんしゃい」


 シャオュアンのメンバーのうちの一人、高級そうなブランド品に身を包み口に煙草を咥え、まるでホビットを思わせるような子供みたいに背が低く耳の尖った老成した女性が、香台の様なものを取り出し、中のものを袋に詰め替えていくつか畑に投げ入れる。すると畑から煙が立ち上り…まるで煙から逃げるように畑からアルミラージが逃げていった。


「シェイシェイ、シージャァ」


「おいあいつらにばっかいい顔させてていいのかよ、ファイグル!」


「俺に命令するな!ったく」


 ファイグルと呼ばれたヒレの生えた赤い肌の少年は呪文を唱え地面に手を置くと、畑とアルミラージの群れの間に氷の壁を作りこれ以上荒らさせないように分断した。


「ほらよっ、ホオズキ!てめぇは左から回れ!!」


「えー、めんどくさいなぁ」


 ファイグルが足元を凍らせながら滑るように壁の右側へと回り込み、ホオズキと呼ばれた頭に二本の角を生やした気怠そうな少年がそのぼんやりとした様子からは想像できないほど物凄い速さで走りファイグルの逆側に向かう。さらに逃げ場を失ったアルミラージの群れはさらにさらに畑から逃げるように、逃げ場を制限されたルートを走る。


「ちょっと待て!このまま追いかけても未開拓の森に逃げられて捉えられなくなるだけじゃねーか」


「だから野生動物を捉えるためのデカい戦場用に囮畑が各農場区画ごとにあるんだろ」


「そこに誘導するってわけね。リュァンゼン!」


「はいはい、お任せくださいお嬢ちゃん」


 リュァンゼンと呼ばれた背中に大きな青い翼が生えたピアスの多い好青年はその翼で空へと飛び、呪文を唱えると毒々しい粘液のような魔法を放ち、アルミラージたちの進行を妨害し、進路を変える。その向かう先には、デカい鉄柵に囲まれたまさに巨大な檻…そのサイズはまるで巨大なコンサート会場と同程度以上の広さがありアルミラージたちもその鉄柵の中に逃げ場がないと思わないほどであった。


「さぁ、追い詰めたわよ…ここからが、仕事開始よ!」


 俺達も全員入り鉄柵が閉まる。アルミラージたちも逃げ場が完全になくなった事には気づいたらしく、威嚇し戦闘態勢に入りだした…。

次回投稿は4/11予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。