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底無し魔力の召喚士~各地に封印された神獣と契約して最強へと至る者~  作者: 半分のリング
番外編

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追憶⑥ 震撼

 領都に帰還したアーサリアは隔離された建物内で、今後の対策を練っていた。




「やっぱり、連携が取れないのは痛いね」

「彼らの対応は目に余るものがありますな。事が終わり次第、報告しておきましょう」


 アーサリアが現状を憂うと、ゴルドバァルは深く同意した。


 領主との面会は拒絶され、まるで汚物でも扱うかのような対応をされている。各地を共に巡った兵士たちも例外ではない。

 せめて資料の閲覧くらいは自由にさせてほしいものだ、とアーサリアは肩を竦めた。


「しかし、嘆いてばかりもいられません。やはり他の町に拠点を移すべきかと」


 ランザムの言うように、物資の調達さえ手間取るようではこの地に留まる意味は薄い。各地の現状を把握した今、協力的な町で活動したほうが何かと都合がいいだろう。


「となると、サラーンが妥当かな」


 病人を受け入れている町はサラーンのみ。それでも郊外に設営された天幕に押し込まれるように隔離されているのだから、民に対する扱いは酷いものだ。


「物資の運搬が問題となりましょうな。利便性はあまり宜しくない」


 大半の村では病に伏せる者を運ぶ手段がない。現状、食糧の配給を行うしか手立てがないのだが、領都と比べて運搬効率が著しく低下してしまう。

 立地条件、つまりは距離の問題だ。


「それは仕方がないさ。現地で人手を補おう」

「サラーンならば食糧の調達も容易かと」

「そうだね。原因究明は難しくなるだろうけど、まずは体力をつけてもらわないとね」


 根本的な解決には至らなくとも、しっかりとした食事と清潔な水は疫病対策として効果が高い。栄養というものは何よりの特効薬だ。




「報告! 報告ー!!」


 地図を囲んで協議を進めていると、勢いよく扉が開け放たれた。


「騒々しいぞ、ゴドウェル」

「ち、父上……。そ、それが……」


 息を切らすゴドウェル。支援物資の交渉に向かっていたはずの彼が、血相を変えて戻ってきた。その様子からただならぬ事態を予感し、顔を見合わせる面々。


「何があった? 落ち着いて話せ」


 大きく息を吸い込んだゴドウェルは、なりふり構わず叫んだ。


「て、帝都――陥落しましたっ!!」

「……」


 この場の誰もが耳を疑った。言葉の意味を理解できずに短い沈黙が訪れる。

 ゴドウェルが力尽きるようにへたり込むと、その音を皮切りにして一斉に立ち上がった。


「馬鹿なっ!? 帝都だぞ! 誤報ではないのか!?」

「ま、間違い……ありま、せん」

「有り得ぬ! 彼らが蛮族などに後れを取るはずなかろうに!」


 宮廷召喚士が使役する神獣は人知を超えた力を有している。そんな彼らが勢揃いする帝都が陥落したなどと誰が信じようか。

 質の悪い悪戯では済まされない。発信者を特定し、打ち首にしても飽き足らぬ所業であると憤りを露わにする。



 息を整えたゴドウェルは多少の躊躇いを見せた後、意を決したように明言した。


「しゅ、首謀者……グラニール・ロータスであります!!」

「なんだって!?」


 何かの間違いではないのか。一番の動揺をみせるアーサリアは咄嗟に声を荒げてしまう。


「それこそあり得ない!」


 なぜ彼が帝都を攻め滅ぼさなければならないのか。共に語り合った理想とは真逆の行為で、そうする理由が欠片もない。

 急成長を遂げた彼を妬んだ何者かが陥れようとしている。アーサリアにはそうとしか考えられなかった。


「アーサリア殿、落ち着かれよ」

「す、すまない」


 椅子に腰を下ろし、取り乱してしまった心を静めるアーサリア。周囲の顔を見回してみれば、動揺はしているものの腑に落ちたような表情をしている。

 愛想のないグラニールならやりかねないと思っているのか。それとも単に、可能かどうかで判断しているのか。




「ゴドウェル、詳細を」


 淡々とした口調でゴルドバァルが続きを促す。グラニールが首謀者と聞いて、平静を取り戻したような印象を受ける。

 確かにグラニールはとっつきにくい空気を醸し出している。近寄りがたい存在といえるだろう。しかし話をしてみれば、彼の愚直な姿勢は評価すべきものだと理解できるはずだ。


 彼を信じて疑わないアーサリアは、ゴドウェルが語る内容を話半分に聞く。


「現在、逆賊討つべしと各地で挙兵しているとのこと。前線ではすでに戦闘が始まっていると思われますが、報告はまだ届いておりません」


 数にものを言わせた大討伐。相手が召喚士なら魔力が尽きるまで戦わせる。たとえ屍の山を築こうとも、この流れを止めることなど出来はしない。

 陛下が崩御されたという、にわかには信じがたい報告。それがもし事実だとすれば、この戦を平定した者が次の皇帝の座に就くだろう。そんな期待のもと、我先にと武功を狙っていた。




「みんな、すまない。私も帝都へ向かおうと思う」


 与えられた使命を放り出し、半信半疑の情報に惑わされている自分がいる。それを理解してなお、アーサリアは逸る気持ちを抑えられなかった。


「うむ。あとのことは我らに任せ、アーサリア殿は真偽を確かめてくると良いでしょう」


 情報が真実ならば、グラニールを止められるのはアーサリアだけだろう。


「馬をまわしてきます。アーサリア殿は準備を」

「ありがとう」




 陰謀に巻き込まれたのだとすれば、何としてでも助け出す。国外逃亡も辞さない構えでアーサリアは馬を駆った――。

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