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最強召喚のはずがレベル1の俺でした~でも課金スクロールでボスを倒したら追い返された件~  作者: あおおに


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勝てない敵

 咆哮が、通路を震わせた。

 振り返る。

 闇の中から現れた“それ”は、これまでの敵とは明らかに違っていた。

 重そうな身体。

 二メートル近い、棘だらけの歪な甲殻。

 六本の脚が石床を軋ませる。


「……無理だろ、あれ」

 誰かが呟く。心なしか声が震えている。

 同感過ぎる。

「撤退する!」

 ミラの判断は速かった。

「全員、入口まで走る! 隊列は崩すな!」


 即座に動く。

 俺も続く。

 だが――

 遅い。

 背後から迫る音が、明らかに速い。

(追いつかれる)

 マップを見るまでもない。


 分かる。

 ドンッ!!

 衝撃。

 盾役が吹き飛ばされた。

「がっ……!」

「止まるな!!」

 ミラが叫ぶ。

 盾役も、なんとか立ち上がって走り始める。


 でも、隊列は崩れた。

 ローブの少女が足を止める。止めてしまった。

「え……」

 恐怖で動けなくなったのだ。

(まずい)

 このままじゃ、全滅する。


 選択──。

 手札は隠して、逃げる。

 手札をさらして、全員助ける。

 どっちかだ。

 両方は無理。

(……くそ)

 足が止まる。


「リョウマ!?」

 ミラが叫ぶ。

「何してる!」

「……少し時間稼ぐ」

 それだけ言う。

「バカ! 死ぬわよ!」

「いいから行け!」

 振り返らない。


 背後に、あの影。

(やるしかない)

 深く息を吸う。

 ここで中途半端は意味がない。

(バレる? 上等だ)

 誰かが死ぬよりマシだ。


「――来いよ」

 構える。

 怪物が突っ込んでくる。

 速い。

 デカい。

 圧が違う。

「……っ!」

 ギリギリで回避。

 風圧で体が持っていかれる。


(化け物かよ……!いや、化け物か)

 でも――

(見える)

 マップと感覚が重なる。

 動きは追える。

 急速にUターンして来る怪物。

 なら。

「――アイスボルト!」

 連発。


 一発じゃ止まらない。分かってる。

 二発、三発。

 当たる。

 だが、止まらない。

「ちっ……硬ぇ!」

 氷弾が甲殻を貫くどころか、傷つける事さえ出来ていない。

 それでも、効いてないわけじゃない筈だ。

 ただ、圧倒的に足りない。


(なら――)

 一瞬、迷う。

 出力を上げれば、完全にバレる。

 でも。

(ここでケチってどうする)


「――凍れ!!」

 魔力を叩き込む。

 今までで一番大きなアイスボルトが怪物に命中する。

 砕ける甲殻の細片。

 MPが一気に減る。

 空気が凍る。

 床が白く染まる。

 氷の奔流が、怪物の脚を絡め取る。


「……止まれ!」

 ギリギリで、動きが鈍る。

 完全じゃない。

 でも――

(十分だ!)


「よし! 走れ、走れ!!」

 後ろに叫ぶ。

 足音が遠ざかる。

 全員、動いた。

 これでいい。

 俺も反転する。

 全力で走る。


 背後で、氷が砕ける音。

「くっ……、だよな!」

 あんな程度で、いつまでも止まってる訳がない。

 でも距離はできた。

 出口が見える。

 光。


「あと少し!」

 肺が焼ける。

 足が限界。

 でも止まれない。

 外に飛び出す。

 光と風。

 そして――

 地面に転がる。


「はぁ……っ、はぁ……!」

 全員、倒れ込む。

 しばらく、誰も動かない。

「……生きてる?」

 ローブの少女が震える声で言う。

「ああ……なんとか」

 ミラが答える。


 全員無事。

 ギリギリで。

 そして。

 視線が、俺に集まる。

「……今の」

 ミラが言う。

「スクロール、よね?」


 沈黙。

 重い空気。

(……さて)

 どうする。

 ノノがへばったまま笑った。

「だから言ったろ」

 肩をすくめる。

「こいつは“使える”って」

 助け舟。


 でも――

 ミラの目は、逸れていない。

「……そうね」

 小さく頷く。

 だが。

「あとで、話がある」

 完全に逃げ切れてない。


(だよな)

 苦笑する。

 空を見上げる。

 青い。

 さっきまでの地獄が嘘みたいに。

「……勝てねぇな、あれには」

 ぽつりと呟く。


「ええ」

 ミラが隣に立つ。

「今の私たちじゃ無理」

 はっきり言う。

 でも――

「いつか、倒す」


 その目は折れてない。

 俺も同じ方向を見る。

 ダンジョンの入口。

 あの奥に、あれがいる。

「……だな」

 短く答える。


 今回は、逃げた。

 でも。

 終わりじゃない。

(次は、勝つ)

 心の中で呟く。

 それが、次の目標になった。

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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