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最強召喚のはずがレベル1の俺でした~でも課金スクロールでボスを倒したら追い返された件~  作者: あおおに


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助けるか、隠すか

「仕事だ、レベル1」

 翌朝。

 宿の前で、ノノが手を振っていた。

「朝からうるさいな……」

「いいから来い。紹介してやる」

 引っ張られるまま、俺はギルドへ向かった。


 中は相変わらずざわついている。

 その一角。

「こいつ?」

 腕を組んだ女が俺を見る。

 短髪。鋭い目。軽装の戦士。プレッシャーをかけて来る。

「ああ、新入りだ」

 ノノが適当に言う。


「リョウマだ」

「……レベル1にしか見えないけど?」

「合ってる」

「は?」

 女――ミラが眉をひそめる。

 レベル2だけどな。


 隣には、大柄な盾持ちの男と、ローブ姿の少女。タンクとスカウトか。

「ふざけてるの?」

「ふざけてない。こいつは“使える”」

 短剣二本持ちのノノがニヤリと笑う。面白がってやがる。

 完全に説明不足だ。

「まぁいいわ」

 ミラがため息をつく。


「人手は欲しかったし」

 こうして、半ば強引に俺はパーティーに入れられた。

 目的は単純だった。

 森の浅い場所での討伐。狙いは、狼モンスターが中心。

 最初は問題なかった。


「前、出るなよ」

「ああ」

 ミラが指示を出す。

 俺は後方。

 小剣を握るだけ。お客さん状態。

 戦闘は、他の四人で回る。


(……楽だな)

 正直、出る幕がない。

 それでいい。

 バレるよりは。

 だが。

「……なんだ、これ」

 途中で空気が変わった。


 森の奥から、低い唸り声。

 出てきたのは――

「……でかすぎだろ」

 通常より明らかに大きい狼。

 赤い目。針金の様な体毛。太い牙。

 威圧感が違う。


「変異種……!」

 ミラが舌打ちする。

「なんでこんな浅いとこに……!」

 次の瞬間。

 狼が突っ込んできた。速い。

「くっ!」

 盾役が受け止める。


 だが――

「重っ……!」

 押し込まれる。

 地面が削れる。

「弓矢、間に合わない!」

 ローブの少女が焦る。狼の動きが速すぎる。

 完全に、想定外。


「一回引く!」

 ミラが叫ぶ。

 だが――

 狼が回り込んだ。

 狙いは、後衛。

「きゃっ!」

 少女が転ぶ。


 間に合わない。

 狼が大口を開けて、少女に噛みつこうとする。

(……やばい)

 時間が止まったみたいに感じた。

 頭の中で、二つの選択肢が浮かぶ。


 助ける。

 でも、魔法を使えばバレる。

 この距離、この状況。

 誤魔化しは効かない。

 ノノもいる。

 確実に見られる。


 見捨てる。

 バレない。

 安全。

 でも――

 目の前で、人が死ぬ。


「……っ」

 歯を食いしばる。

 浮かぶのは、あの時の光景。

 血まみれの戦場。

 そして――

『この子は私が呼んだの……! だったら最後まで、私が守る!』

 あの言葉。

 あの背中。

 セルティ。


「……ふざけんな」

 足が動いた。

「下がれ!!」

 叫びながら、前に出る。

 狼がこちらを向く。

 目が合う。


 近い。

 近すぎる。

(ここで撃てば――)

 バレる。終わる。

 でも。

(それでも――)

「――アイスボルト!!」

 放った。


 氷弾が、狼の顔面に直撃する。

 血しぶきが上がり、狼の顔面を霜が覆う。

 一瞬の隙。

「今だ!!」

 ミラが動く。

 一閃。

 首筋を斬り裂く。


 盾役が押さえ込む。

 少女が弓矢を放つ。

 ノノが短剣を振るう。

 俺も小剣で斬りつける。

 連携。

 そして――

 狼が崩れた。


 静寂。

 全員が、俺を見る。

「……今の」

 ミラが呟く。

「お前、魔法が……」

 空気が、変わる。


(……やったな、これ)

 完全に見られた。

 言い逃れは無理。

 その時。

「バカかお前」

 ノノが割り込んだ。

「こんな至近距離でスクロール使うとか、死ぬ気かよ」


「……は?」

 ミラが眉をひそめる。

「スクロールだよ。見りゃ分かるだろ」

 ノノが肩をすくめる。

「詠唱なしだし、あの威力。安物じゃねぇけどな」

 視線が、俺に集まる。


(……乗れ)

 一瞬で判断する。

「……悪い」

 息を整えながら言う。

「とっさに使った」

「……危なすぎるでしょ」

 ミラがため息をつく。


「でも……助かった」

 小さく言った。

 ローブの少女が、震えながら頭を下げる。

「あ、ありがとう……」

「……気にすんな」

 短く返す。

 心臓が、まだうるさい。


 帰り道。

 ノノが隣に来る。

「貸し一つな」

「……助かった」

「まぁな」

 にやりと笑う。

「でも、次はもっと上手くやれよ」


「……分かってる」

 本当に、ギリギリだった。

 でも。

 後悔はない。

 今度同じ状況が来れば、やっぱり同じ様に振る舞うに違いない。

 ふと前を見る。

 ミラたちが歩いている。

 さっきまでとは少し違う距離感。


(……仲間、か)

 まだ仮だけど。

 危ういけど。

 それでも。

 こういうのも、アリか。

 その時。

 ミラが振り返る。


「リョウマ」

「ん?」

「……あんた、思ってたより使えるわね」

「どうも」

 軽く笑う。

 でも――

 その目は、少しだけ鋭かった。


「……スクロール、ね」

 小さく呟く。

(……疑ってるな)

 完全には誤魔化せてない。

 でも、それでいい。

 全部隠しきるなんて無理だ。


 だから――

(ギリギリでやる)

 それが、この世界でのやり方だ。

 空を見上げる。

 今日も、生き残った。

 そして――

 少しだけ、前に進んだ。

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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