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最強召喚のはずがレベル1の俺でした~でも課金スクロールでボスを倒したら追い返された件~  作者: あおおに


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3/15

初狩りと、ありえない現象

 街に入った俺は、冒険者ギルドに向かった。

 この街での身分を手に入れる事、お金儲けの手段を得る事、そして情報を得る事が、俺には必要だったのである。

 そして、ゲームやラノベの様に、冒険者ギルドがあるのは、ありがたい話だった訳だ。

 ギルドは、酒場と銀行が一緒になった様な造りだった。窓口は、鉄格子で仕切られている。

 客と言うかテーブルに着いて飲み食いしている連中は、はっきり言ってガラが悪い。あまり仲良くしたくない雰囲気だ。


 俺は、こそこそと窓口の一つに近づいた。

 鉄格子の向こうには、いかにもデキそうなお姉さんが座っている。

「すいません。冒険者になりたいんですけど、登録とか必要ですか?」

「新規登録ですね。では、こちらのオーブに手を触れていただけますか?」

 お姉さんが、ソフトボール大の水晶玉みたいな物を、俺の前に置いた。

「これは?」

「ステータス鑑定のオーブです」


 げ。またか。

 街の入り口での事が、頭の中に蘇る。つか、ついさっきの出来事だ。まだ、傷口からビュービュー出血している。そこを、また抉られるのか。

 俺は観念して、オーブに手を触れた。

「……」

「……レベル1、スキルなし」

 げふっ。


「冒険者……やりますか?」

「やります。レベルはすぐ上げますし、魔法とかも覚えるし」

「何を言ってるんですか。レベルはともかく、魔法は簡単には覚えられませんよ」

「え?」

「魔法は誰かに師事するか、学院で学ぶかしないと覚えられません。時間もお金もかかります」

「そ、そうなんだ……。レベルが上がったら、自然に覚えられる、なんて事は?」

「そんなのは魔族だけです」

「魔族ですか……」


「あ、あと、ここにセルティって召喚士かいませんか?」

 ダメ元で聞いてみる。

「召喚士なんて、いませんね。普通の魔法使いだって、こんなギルドにはほとんどいませんよ」

「そうなんですね……」

 俺は頭を下げると、窓口から離れた。




 ギルドを出たあと、俺はそのまま街の外へ向かった。

 目的は一つ。

「……レベル上げ、か」

 口に出してみると、やけに現実味がない。

 この世界では、スキルも魔法も“教わるもの”だった。

 金と時間がかかる。

 でも俺には、その余裕がない。


 なら――

「レベルを上げるしかない、よな」

 ゲームと同じなら、だが。

 街道を少し外れた林の中。

 草を踏む音が、やけに大きく感じる。

(……怖ぇ)

 正直な感想だった。


 武器は、初期装備の小剣一本。目立ち過ぎるので、課金装備は使う訳にはいかない。

 防具も、ほぼ布。

 昨日までただの中学生だった俺が、モンスターと戦う?

 無理だろ。

 ――ガサッ。

「っ!」

 音。

 反射的に構える。


 茂みから現れたのは、

「……スライム?」

 半透明の塊。

 ゲームなら雑魚中の雑魚。

 だが――

 次の瞬間。

 それが跳ねた。


「うわっ!?」

 避けきれず、肩に直撃。

「いってぇ!?」

 想像以上に重い。

 バランスを崩して、尻もちをつく。

 スライムが、再び跳ねる。

(やばい、普通に強い!)


 慌てて転がる。

 ギリギリで回避。

 心臓がうるさい。

「くそっ……!」

 立ち上がる。

 タイミングを計る。

 来る。


 ――今!

 小剣を振る。

 だが、手応えが浅い。

「効いてるのか、これ!?」

 スライムが揺れるだけで、止まらない。

 再び突進。

「うわああああああ!」

 必死に避ける。


 息が上がる。

 腕が震える。

(無理だろこれ……!)

 でも――逃げられない。

 背後は木。

 左右も狭い。

 やるしかない。


「……来いよ!」

 自分に言い聞かせる。

 スライムが跳ねる。

 今度は、逃げない。

 引きつける。

 ギリギリまで――

「っ!」


 横にステップ。

 すれ違いざまに、小剣を叩き込む。

 今度は、深い。

 ぐにゃりと感触が沈む。

「もう一発!」

 振り下ろす。

 叩きつける。

 何度も。

 何度も。


 そして――

 スライムが、崩れた。

 光になって、消える。

「……は、はは……」

 その場に座り込む。

 息が止まらない。

 全身が汗だく。

「こんなの……序盤の敵じゃねぇだろ……」

 ぼやく。


 その時。

 視界の端に、見慣れた表示が浮かんだ。

 ――レベルアップ。

「……え?」

 固まる。

 次の瞬間。

 頭の中に、“何か”が流れ込んできた。

 言葉。

 イメージ。

 感覚。

 知らないはずの知識が、勝手に“分かる”。


「……これ、って」

 手を見下ろす。

 無意識に、口が動く。

「――アイスボルト」

 空気が震えた。

 指先に、冷気が集まる。

 次の瞬間、小さな氷の弾が放たれ、木に突き刺さった。


「……は?」

 ありえない。

 魔法だ。

 俺は今、魔法を使った。

 でも――

「……習って、ないぞ?」


 この世界では、魔法は学ぶものだ。

 金を払って、時間をかけて。

 なのに。

 俺は今、レベルが上がっただけで――

 “覚えた”。

 その時、はっきり理解した。


「……ゲームと、同じ?」

 ステータスを開く。

 魔法欄に、新しい項目が増えている。

 アイスボルト。

 さっき使ったものと同じ。

「……嘘だろ」

 喉が渇く。


 心臓が、さっきとは別の意味でうるさい。

 これは、強いとか弱いとか、そういう話じゃない。

 ――異常だ。

(これ……知られたら)

 想像する。

 ギルド。

 兵士。

 あの冷たい目。

 “無能”じゃなくなる。

 その代わり――

(囲われるか、消されるか、魔族扱いされるか)

 ろくな未来が待っていない。


「……ふざけんなよ」

 思わず笑いが漏れる。

 さっきまで、“無能”扱いだったのに。

 中身はこれか。

 極端すぎるだろ。

 でも――─


 悪くない。

「……使えるな」

 呟く。

 ただし。

「バレなきゃ、な」

 立ち上がる。

 さっきより、少しだけ足取りが軽い。


 林の奥へと目を向ける。

 まだ、モンスターはいる。

 怖い。

 でも。

 さっきとは違う。

(やれる)

 確信に近い何かが、あった。


 小剣を握り直す。

 そして俺は、

 もう一度、森の中へ踏み込んだ

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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