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最強召喚のはずがレベル1の俺でした~でも課金スクロールでボスを倒したら追い返された件~  作者: あおおに


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2/20

落下と嘲笑

 ――─目を開けた。

 見慣れた天井。

 自分の部屋。

「……戻って、きた?」

 ベッドの上。

 現実。

 夢――─だったのか?

 いや。

 あの少女の顔だけは、やけに鮮明に残っている。


「……リョウマ」

 不意に、耳元で声がした気がした。

「……は?」

 振り返る。

 誰もいない。

 当然だ。ここは俺の部屋だ。

 なのに。

 心臓だけが、やけにうるさい。

「気のせい、だよな……」

 そう呟いた瞬間。


 ――─ふっ、と。

 体が、浮いた。

「……え?」

 違和感は、一瞬だった。

 重力が消える。

 ベッドも、床も、全部が遠ざかる。

「ちょ、待っ――─」

 次の瞬間。

 視界が“裏返った”。


 上下が消える。

 空間が歪む。

 そして――─

 落ちる。

「うわああああああああああああああああああ!?」

 風が叩きつける。

 空だ。

 雲を突き抜けて、俺は“落ちている”。


 はるか下に、街が見えた。

「いやいやいやいや死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 操作不能。

 何もできない。

 ゲームじゃない。

 夢でもない。

 ただの――─自由落下。


「ふざけんなあああああああああああ!!」

 その時。

 頭の奥に、あの声が蘇る。

『リョウマ……私、あなたをもう一度呼ぶ』

「……お前かよおおおおおおおおおおおお!!」

 叫びは、風にかき消された。

 そして――─

 俺は、そのまま街の外壁に向かって、一直線に落ちていった。


 ―─―激突。

 衝撃と同時に、視界が弾けた。

「ぐっ……!」

 息が詰まる。

 石畳に叩きつけられた俺の体は、しばらく動かなかった。

「な、なんだ今のは!?」

「空から……落ちてきたのか?」


 ざわめき。

 気づけば、周囲を槍を構えた兵士に囲まれていた。手入れの行き届いた金属鎧。身長程の長さの槍。こちらに向けられた穂先がピカピカ光っている。

「動くな」

 迫力のある低い声。

 先頭の男が、俺を見下ろす。

「所属は? どこから来た」

「え、いや、その……」

 言えるわけがない。

 “空から落ちてきました”なんて。


「答えられないか」

 空気が冷える。

「不審者として拘束する」

「ちょ、待ってくれ! 俺は―─―」

「なら、ステータスを見させろ」

 遮られた。

 有無を言わせない口調。


 ……マズい。

(見られたら終わる)

 でも拒否したら、それも終わる。

「……分かりました」

 そう言うと、一人の文官が近づいて来た。

「マグナス様だ。鑑定スキルを持っておられる」

 街に入る者を調べる為に、常駐している人なのだろうか。

「お願いします」

 兵士たちの要請により、マグナスの瞳が俺を射抜く。

 

 そして――─

「……レベル、1?」

 一瞬の沈黙。

 次の瞬間、

「は?」

 空気が変わった。

「今、なんと?」

「此奴、レベル1だ」


「いや、違うんだ、これは―─―」

「スキル欄、空白……魔法もなし……?」

 マグナスのつぶやきを聞き、周囲の兵士たちもざわつく。

「ただのガキじゃないか」

「なんでこんなのが空から落ちてくるんだ?」

 笑いが漏れる。

 緊張が、嘲笑に変わる。


「……解散だ」

 隊長格の男が、ため息をついた。

「脅威でもなんでもない。ただの無能だ」

 その言葉が、妙に刺さった。

「街には入れる。銅貨5枚だ。ただし─――」

 男がしゃがみ込み、俺の目を覗き込む。

「問題を起こせば、次はないと思え」


 視線が冷たい。

 完全に“見下した目”だ。

「……はい」

 それしか言えなかった。

 インベントリに入っているお金を、手の中に実体化させて渡すと、普通に受け取ってもらえた。

 立ち上がる。

 足が、少し震えている。

 門の方へ歩く。

 背後から、声が飛んだ。


「おい見ろよ、あれ」

「レベル1だってさ」

「子供の遊びかよ」

 笑い声。

 全部聞こえている。

 でも、振り返らない。

(……くそ)

 その時。

 視界の端に、表示が浮かぶ。


 メニューの一覧───。

 ミニマップ。

 インベントリ。

 ショップ。

 ゲームで見慣れた項目群。

 ログアウトの文字だけが無い。

 が、インベントリは使えた。

 この世界でも。


 思わず、手を伸ばしかけて――─止めた。

(ダメだ)

 ここで使えば、終わる。

 さっきの連中の目が変わる。

 今度は“笑い”じゃ済まない。

 囲われるか、消されるか。

 どっちにしろ、自由はない。


(……我慢しろ)

 拳を握る。

 痛みで、思考を止める。

 そして、門をくぐった。

 知らない街。

 知らない世界。

 レベル1。スキルなし。

 無能扱い。


 ――上等だ。

(見てろよ)

 心の中で、吐き捨てる。

(絶対、強くなってやる)

 その理由は、一つだけ。

 脳裏に、あの少女───セルティの顔が浮かぶ。

『リョウマ……私、あなたをもう一度呼ぶ』

「……待ってろよ」


 小さく呟く。

 誰にも聞こえない声で。

 そして俺は、

 嘲笑の残る街の中へと、足を踏み入れた。


読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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