表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強召喚のはずがレベル1の俺でした~でも課金スクロールでボスを倒したら追い返された件~  作者: あおおに


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/37

学院からの依頼

 一泊二日のコッコの育成は、順調に終わった。

 コッコはレベル五まで上がり、どさくさに俺のレベルも十九になった。

 コッコは石化のスキルを覚え、俺もいくつかの魔法や魔剣技を習得した。


 で、ドロップアイテムを売ろうとギルドに立ち寄った俺は、何かいつもと雰囲気が違う事に気づく。

 窓口でドロップアイテムを並べながら、俺は受け付けのお姉さんに理由を聞いてみた。

「ああ、学院からの依頼が入ったからですよ」

「学院から?」


 俺の心臓が跳ねた。

 どうやって繋がりを持とうかと思っていた学院と、関係を持つチャンスがいきなりやって来た。

「どんな依頼なんです?」

 バクバク鳴る心臓とは裏腹に、平静を装って質問を続ける。


「大規模な野外演習への協力なんですけどね。正直、あまり報酬はよくないんですけど、学院や貴族と繋がりを持ちたい方には人気の依頼で」

 なるほど。その先の目的は別として、学院と繋がりを持ちたいと考える冒険者は、一定数いる様だ。


「俺も……いけますか?」

「残念ですが、リョウマさんのレベルでは……」

「十九だ」

「え?」

「レベル十九になった」

「ええっ!?」


 ギルドに来た初日にレベルを測られた魔道具を、また引っ張り出してもらう。

 ステータス鑑定のオーブ───。

 俺がそれに手を触れると、受け付けのお姉さんの表情が驚愕に染まった。

「本当にレベル十九。スキルも、こんなに……」


「もう、それ以上は口にしてくれるなよ。外野がうるさい」

「え、あ、はい……」

 実際、俺たちの話し声が聞こえる者たちも驚きの表情を浮かべている。

「あいつ、この前までレベル一だったんだろ……?」


 レベルが上がったのは、「頑張った」で押し切るつもりだが、さすがに魔法をいくつも覚えたとなると、言い訳が思い浮かばない。

「それで、学院の依頼は受けられる?」

「は、はい、もちろんです!」

「良かった」


 俺は満足して、ギルドを出た。

 関係者には、後日に依頼の詳しい内容が知らされるそうだ。

 宿に戻ると、ノノが待ち構えていた。

「依頼、受けたのか?」

「学院の依頼なら、受けたよ」

「だよな。俺たちも依頼を受けて、何か機会があったら、後押ししてやるよ」


「良いのか?」

「ああ、お前には、思った以上に稼がせてもらったからな」

 隠し通路の事なんかを言っているのだろうか。

 俺としては、ノノたちにも助けられているつもりなのだが、どうやら向こうは向こうで恩を感じてくれているらしい。


「それでな。学院の依頼について、少し聞いて来た」

 ノノが得意げに言う。こういうところ、本当に頼りになる。

「まず、今回の依頼は学院の大規模な野外演習の補助だ。学院生たちは、いくつかのパーティーに分かれて、森や草原、浅めの狩り場で実戦訓練をするらしい」

「ふむふむ」


「で、俺たちみたいに依頼で集められた冒険者は、その学院生パーティーに付き添う。危険な魔物が出た時の対処、怪我人の搬送、逃げた魔物の処理、あとは周囲の警戒だな」

「なるほど。引率役か」

「まあ、そんなところだ。手を出しすぎると訓練にならないから、基本は見守り。危ない時だけ動く感じだそうだ」


 それなら、学院生と接触する機会はある。つまり、セルティと同じ班になる可能性も───。

 俺がそこまで考えたところで、ノノは少し言いにくそうな顔をした。

「ただし、セルティ嬢たちは別枠らしい」

「……別枠?」

「ああ。学院でも特に実力のある連中は、普通のパーティーには入らない。遊撃部隊として全体を見て回るそうだ。危険な魔物が現れた時や、どこかの班が崩れた時に駆けつける役目だな」


 俺は、思わず固まった。

「つまり……俺が学院生のパーティーに付き添っても、セルティと同じ班になる可能性は低い?」

「低いな」

 ノノの返答は容赦なかった。

 なんて事だ。学院の依頼と聞いて、これはついにセルティと自然に接触出来る機会かと思ったのに。  運命というやつは、なかなか簡単には仕事をしてくれないらしい。


「まあ、顔ぐらいは見られるかもしれないぞ。集合時とか、移動中とか、緊急時とか」

「緊急時か……」

「おい。自分で緊急事態を起こすなよ?」

「やらないよ」

 やらない。さすがにそれはやらない。

 ……多分。


「目が泳いでるぞ」

「気のせいだ」

 俺は咳払いをして誤魔化した。

 しかし、完全に望みがない訳ではない。遠くからでもいい。一瞬でもいい。セルティの姿を拝めるかもしれない。

 そう考えるだけで、依頼の日が急に楽しみになってくるのだから、我ながら単純である。


 とはいえ、浮かれてばかりもいられない。

 今回の依頼には学院生だけでなく、貴族関係者や実力者も集まる。下手に目立てば、面倒な事になる可能性が高い。

 特に、コッコの存在は絶対に隠しておきたい。

 体高二メートル近い巨体。レベル五とは思えない戦闘力。そして、石化のスキル。


 あんなものを普通に連れ歩いたら、確実に騒ぎになる。ノノにも話していない以上、普段はインベントリの中で大人しくしてもらうしかない。

 ……大人しくしているかどうかは、少し怪しいが。

「どうした? 急に黙って」

「いや、依頼までにもう少し鍛えておこうと思ってな」


「またレベル上げか。お前、最近はそればっかりだな」

「強くなって困る事はないだろ」

「いや、そうだけどな」


 翌日から、俺は一人で狩りに出た。

 もちろん、本当に一人ではない。インベントリの中にはコッコがいる。

 人目のない森の奥まで進み、周囲に誰もいない事を何度も確認してから、俺は小さく呟いた。

「出て来ていいぞ、コッコ」


 次の瞬間、目の前に白い巨体が現れた。

「コォッ」

 体高二メートル近い鳥型の魔物───コッコが、嬉しそうに鳴く。

 白い羽毛はふわふわしていて、丸みのある顔にはつぶらな瞳。その顔だけ見れば、妙に愛嬌がある。  だが、太い脚、鋭い爪、そして見上げるほどの巨体は、どう考えても可愛いだけでは済まされない迫力を放っていた。


「声は控えめにな」

「コッ」

 分かっているのかいないのか、コッコは俺に大きな頭を擦り寄せて来る。

「重い重い。潰れる」

 そう言いながらも、俺はその嘴の横を撫でてやった。コッコは目を細め、満足そうに喉を鳴らす。

 強い。でかい。でも、俺には甘える。

 この落差が、たまらなく可愛い。


「よし。今日は無茶はしない。レベル上げが目的だけど、人に見つかるのはもっとまずい。危なくなったら、すぐインベントリに戻すからな」

「コッコ」

 不満そうに鳴くな。お前が目立ちすぎるのが悪い。

 森の奥で、俺たちは狩りを始めた。


 最初に出て来たのは、ウルフ系の魔物が四体。  低く唸りながら俺を囲もうとしたが、コッコが一歩前に出た瞬間、空気が変わった。

 巨体が羽を少し広げる。それだけで、ウルフたちの足が止まった。

「コッ」

 短く鳴いたコッコが、地面を蹴る。

 速い。

 白い巨体が一気に距離を詰め、前脚───いや、鳥だから脚か───を振るう。


 ドゴッ!

 一体目のウルフが、軽々と吹き飛んだ。木の幹に叩きつけられ、動かなくなる。

「相変わらず、レベル五の動きじゃないな」

 俺も遅れずにアイスボルトを撃つ。足を凍らせた二体目に、魔剣技ブレイドをまとわせた剣を叩き込む。

 残る二体が逃げようとしたところで、コッコの瞳がきらりと光った。

 石化。

 完全に石になった訳ではない。だが、その動きは明らかに鈍る。


 俺はその隙を逃さず、二体を順に仕留めた。

「よし、いい連携だ」

「コッコ!」

 コッコが胸を張る。体高二メートル近い巨鳥が得意げにする姿は、妙に偉そうで、妙に可愛い。

 俺は思わず笑いながら、その首筋を撫でてやった。


 その後も、俺たちは狩りを続けた。

 巨大甲虫は、コッコが正面から蹴り倒したところを、俺がブレイドで腹を裂いた。角ウサギの群れは、コッコの威圧で散り散りになり、俺が逃げ遅れた個体だけを仕留めた。鎧猪の突進は、コッコが受け止めた。


「いや、受け止めるなよ! 普通、避けるところだろ!」

「コッ?」

 不思議そうに首を傾げるな。お前が頑丈すぎるだけだからな。

 とはいえ、コッコに頼りきりになる訳にもいかない。学院の依頼でコッコを出す訳にはいかないのだ。


 緊急時なら仕方ない。人の命がかかっているなら、隠している場合ではない。

 だが、その時は俺も素顔のままではまずい。

 課金装備のブラッディウルフの革鎧。深い赤黒い革で作られたその防具。装備すれば、顔が隠れる。

 もし人前でコッコを出すなら、先にあれへ装備替えする。その段取りだけは、頭の中で何度も確認しておいた。


「まあ、そんな事態にならないのが一番だけどな」

「コッ」

 コッコは、まるで「任せろ」とでも言いたげに鳴いた。

「いや、任せたら目立つんだよ」

 頼もしい。頼もしいが、非常に困る。


 そんな日々を、依頼の日まで続けた。

 昼は人目を避けて森へ入り、コッコと狩り。夕方にはコッコをインベントリに戻し、何食わぬ顔で町へ戻る。夜は宿でノノたちと雑談しながら、学院依頼の話を聞く。

「お前、最近また雰囲気変わったな」

「そうか?」

「ああ。妙に落ち着いてるっていうか、何か隠してるっていうか」


「気のせいだろ」

 危ない。ノノは勘が良い。

 俺は笑って誤魔化しながら、内心で冷や汗をかいた。

 そして、学院の依頼を数日後に控えた夕方。


 森の奥で、俺たちは大きな牙を持つ猪型の魔物と遭遇した。コッコが突進を横から弾き、俺がアイスボルトで脚を止める。動きの鈍ったところへ、ブレイドをまとわせた剣を振り下ろした。

 猪型の魔物が倒れる。

 その瞬間、身体の奥で熱が弾けた。

 来た。

 俺は息を呑み、自分の状態を確認する。

 レベル二十。


「……よし」

 思わず拳を握る。

「やったぞ、コッコ。レベル二十だ」

「コォッ!」

「声が大きい」

「コッ」

 注意すると、コッコは少しだけ首をすくめた。  その仕草が可愛くて、俺はつい笑ってしまう。


 俺はコッコの大きな頭を両手で撫でた。

「お前のおかげだ。ありがとうな」

 コッコは目を細め、満足そうに喉を鳴らす。

 学院の依頼。遊撃部隊のセルティ。レベル二十になった俺。そして、誰にも知られていない切り札のコッコ。

 準備は、出来る限り整えた。


 あとは当日、余計な事が起きないのを祈るだけだ。

 ……まあ、こういう時ほど余計な事が起きるのが、物語というものなのだが。

「いや、現実にまで物語のお約束はいらないからな」

「コッ?」

「何でもない」


 俺はコッコをインベントリに戻し、何食わぬ顔で町へ歩き出した。

 明日はギルドで、依頼の最終確認。その次はいよいよ、学院の野外演習だ。

 セルティに会えるかどうかは分からない。だが、姿を一目拝める可能性があるだけで、俺の足取りは妙に軽かった。

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここ何話かで、なるほど、コッコがお気に入りになるなあこれ、と納得しました。自分でも好きになりました。隠れてでももっと活躍してくれると嬉しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ