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最強召喚のはずがレベル1の俺でした~でも課金スクロールでボスを倒したら追い返された件~  作者: あおおに


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15/17

初の対人戦?

「……まずい」

 俺は慌てて振り返る。

 隠し通路の入口から、三人の男が入って来るところだった。 三人とも三十代から四十代ぐらい。装備はそれなりに整っているが、顔つきはあまりよろしくない。 いかにも、荒事に慣れている冒険者という感じだ。


 先頭の男が、俺を見て目を細めた。

「ああ? なんだ、ガキじゃねえか」

 二人目の男が、奥にある開いた宝箱を見た。

「おい、まさか……こいつ、もう開けやがったのか?」

 三人目が舌打ちする。

「ふざけんなよ。せっかく見つけた隠し通路を、ガキ一人に先越されたってのか」


 空気が悪い。

 俺はすぐに愛想笑いを浮かべた。

「あ、えっと、すみません。俺、もう出ますんで」

 下手に刺激しない。 こういう連中は、理屈より面子で動く。 宝箱の中身を渡せと言われたら、最悪、安物の指輪だけ渡して逃げることも考えるべきだ。


 だが、先頭の男は腰の剣に手をかけた。

「おいガキ。中身、置いてけ」

「……え?」

「聞こえなかったのか? その宝箱の中身は俺たちのもんだ」

「いや、俺が先に見つけて……」

 言い終わる前に、男が剣を抜いた。


 ぞっとした。

 脅しではない。 こいつら、本気で斬るつもりだ。

「ガキが隠し通路なんぞ見つけるから悪いんだよ!」

 男が踏み込んで来る。

 速い。

 俺は咄嗟にブレイドを展開し、剣で受けた。 金属音と一緒に、腕が痺れる。


「ぐっ……!」

 重い。 レベルが上がっているとはいえ、まともに鍛えた大人の冒険者三人を相手に出来るほどではない。

 横から二人目が回り込んで来る。 逃げ道を塞ぐつもりだ。

 俺はアイスボルトを放ったが、男は盾で弾いた。


「魔法も使えるのかよ、このガキ!」

「なら余計に生かしとけねえな!」

 まずい。 本当にまずい。

 ここで強い魔法を連発すれば、あとで面倒になる。 けれど、出し惜しみして死んだら意味がない。

 俺は一瞬だけ迷い、すぐにメニューを開いた。

 アイテム欄。 ゲーム開始時、課金石で買っておいたランダムペットモンスターの卵。


 いつ使うか迷って、ずっと温存していたものだ。  まさか、こんな形で切ることになるとは思わなかった。

「頼むぞ……!」

 俺は卵を使用した。

 空間が光る。 通路いっぱいに魔法陣が広がり、その中心から巨大な影が現れた。


 鶏のような頭。 鋭い嘴。 逞しい脚。 蛇のような尾。

 体高二メートル近い、異形の鳥型モンスター。

「コ、コカトリス……?」

 俺が呟いた瞬間、三人の男たちの顔色が変わった。

「な、なんでこんな所にコカトリスが!」


「知るか! 逃げ──」

 最後まで言わせなかった。

 コカトリスが、凄まじい速度で跳ねた。 太い脚が先頭の男の胸を蹴り飛ばす。 男は壁に叩きつけられ、そのまま崩れ落ちた。

 二人目が悲鳴を上げながら剣を振る。 だが、コカトリスは首をひょいと傾けて避けると、嘴で男の肩を突いた。 それだけで男は絶叫し、剣を取り落とす。


 三人目は逃げようとした。 しかし、コカトリスの尾が鞭のようにしなり、足を払う。 転んだ男の背中に、コカトリスの脚がどすんと乗った。

「ひっ、ひいいい!」

「……殺すなよ」

 俺が慌てて言うと、コカトリスは不満そうに首を傾げた。


 通じている。 どうやら、ちゃんとペット扱いらしい。

 俺は息を吐いた。

 三人の男たちは、全員気絶している。 死んではいない。 たぶん。

「よし。俺は何もしてない。こいつらは隠し通路でモンスターに襲われた。そういうことだ」

 自分に言い聞かせる。


 実際、倒したのはコカトリスだ。 俺ではない。  いや、召喚したのは俺だが、それを言わなければ分からない。

 俺はコカトリスを見上げた。

「助かった。ありがとう」

 コカトリスは得意げに胸を張った。 ちょっと可愛い。


 しかし、こんなものを連れて歩けば大騒ぎになる。 俺はすぐにインベントリへ戻した。 光に包まれ、コカトリスの姿が消える。

 残ったのは、気絶したおっさん三人と、開いた宝箱だけだ。

「……帰ろ」

 余計なことに関わる前に、俺は隠し通路を後にした。


 ダンジョンを出ると、俺はいつも通り受付へ向かった。 そして、隠し通路で宝箱を見つけたこと、指輪が二つ入っていたことを報告する。

 査定の結果、宝箱から手に入れたのは、俊敏を高める指輪だった。


 力の指輪も俊敏の指輪も冒険者には需要があるらしく、二つ合わせて金貨十枚になった。

「金貨十枚……」

 袋の重みを感じた瞬間、頬が緩みそうになる。  慌てて真面目な顔を作った。


 受付嬢は感心したように俺を見る。

「リョウマさん、また隠し通路を見つけたんですか?」

「あ、はい。たまたまです」

「たまたまで二度も見つけられるものではありませんよ。探索の才能があるのかも知れませんね」


「いやあ、そんな大したものじゃ……」

 俺は曖昧に笑う。

 だが、周囲の冒険者たちの視線が、以前とは少し違っていた。

 レベル一。 スキルなし。 お荷物。

 そういう目だけではない。

 あいつ、何か持ってるんじゃないか。 そういう探るような視線が混じっている。


 その日のソロ行で、俺のレベルは八まで上がっていた。 新しく、アイスストームという範囲攻撃魔法も使えるようになった。

 着実に強くなっている。 金も増えた。 切り札のコカトリスまで手に入った。

 なのに、素直に喜べない。


「……目立ちすぎたかな」

 俺は金貨の入った袋を懐にしまいながら、小さく呟いた。

 強くなるのはいい。 稼げるのもいい。

 だが、この世界で一番大事なのは、たぶんそこじゃない。

 力を持っていると知られた時。 その力を、誰にどう利用されるか。

 それを間違えたら、きっと取り返しがつかない。


 俺は宿へ戻る道すがら、今日の出来事を頭の中で整理する。

 指輪二つ。 隠し通路。 気絶したおっさん三人。  コカトリス。

「……うん。何もなかった。俺は宝箱を開けて帰って来ただけだ」

 そういうことにしておこう。

 ただし、次からはもっと慎重に動く。


 そう決めた俺の視界の端で、メニューに新しい表示が出ていた。

 ――ペットモンスター:コカトリス

 ――名前を設定してください。

「名前……」

 俺は少し考えた。

 あの頼もしくも妙に得意げな姿を思い出し、苦笑する。


「じゃあ、お前はコッコだ」

 途端、メニューに文字が刻まれる。

 ――コカトリス『コッコ』が登録されました。

 こうして俺は、誰にも言えない相棒を一羽、手に入れたのだった。

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
強く儚い者たち...
ヒヨコにつけるようなかわいい名前とのギャップに笑いました。命名したんだから活躍して欲しいなあ。
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