再びの隠し通路
それからも、俺は一人でレベル上げに邁進した。
ノノから声がかかれば、ミラのパーティーにも参加したが、基本はソロだ。その方が魔法や魔剣技を使いやすいし、経験値も入りやすい。
そして、とあるダンジョンを一人で攻めていた時───。
俺は、またも隠し通路を発見した。
思わず、辺りを見回す。
人影はない。
マップには地形とモンスターの位置が表示されるが、人間の位置までは表示されないのだ。
ロロがやっていたみたいに壁を叩いていると、手応えの違う箇所があった。そこをいじると、ガコンという音とともに隠し通路が口を開く。
「来た来た」
前回は、パーティーで山分けをして、金貨一枚もらえたのだ。今回はソロなだけに金貨五~六枚はいけるかも知れない。
それに、ショップで安物の指輪でも買って、一緒に出た事にすれば、金貨十枚とかも狙えるんじゃなかろうか。
俺は捕らぬ狸の皮算用をしながら、隠し通路を進み始めた。
マップには、赤い光点がいくつか見えている。
他のパーティーが通路に気づく前に、モンスターたちを殲滅して、宝箱を開かねばならない。
隠し通路の中は、思ったよりも広かった。
人ひとりがやっと通れる抜け道、みたいなものを想像していたのだが、実際には普通の通路より少し狭い程度で、天井も高い。壁にはうっすらと青白い鉱石が埋まっていて、松明がなくても進めるぐらいには明るかった。
「いかにも宝箱ありますって感じだな……」
などと呟いた直後、マップ上の赤い光点がこちらへ近づいて来る。
現れたのは、氷をまとった狼のような魔物だった。 フロストウルフ。 数は二体。
今の俺なら、正面からでもやれる。
「アイスボルト!」
指先から放たれた氷の矢が、一体目の顔面に突き刺さる。 怯んだところに踏み込み、俺は剣へ魔力を流し込んだ。
「ブレイド!」
剣身の周りに、半透明の刃が重なる。 実際の刀身より一回り長い、魔力の刃だ。
フロストウルフが跳びかかって来た瞬間、俺は横へ半歩ずれながら剣を振り抜いた。 手応えは軽い。 けれど、魔力の刃は確かに狼の胴を裂いていた。
「よし!」
続けて二体目。 こちらは距離を取ろうとしたが、逃がすつもりはない。
「アイスボルト、もう一発!」
足元を狙って撃ち込む。 氷が弾け、フロストウルフの前脚が凍りついた。 そこへ駆け寄り、ブレイドを展開した剣で首筋を叩き斬る。
モンスターは黒い霧になって消え、小さな魔石を残した。
「ふう……。だいぶ慣れて来たな」
実際、俺は少しずつ強くなっていた。 魔法も、魔剣技も、戦いながら使えるようになって来ている。
もちろん、調子に乗るつもりはない。 この世界で本当に強い奴がどれだけいるのか、俺はまだ知らないのだ。
通路の奥へ進むと、さらにスライムや小型のゴーレムが現れた。 スライムはアイスボルトで核を撃ち抜き、ゴーレムはブレイドで関節を狙う。 真正面から力比べをすれば厳しい相手でも、弱点が見えていれば何とかなる。
そうして赤い光点をすべて消した頃、俺は通路の突き当たりに辿り着いた。
そこには、石台の上に宝箱が置かれていた。
「……来た」
思わず喉が鳴る。
前回の隠し通路で出た宝は、かなりの値段になった。 今回は独り占め。 しかも、うまくやれば水増しも出来る。
俺は慎重に宝箱へ近づき、罠がないか確認する。
剣の鞘で軽く箱を突き、反応がないことを確かめてから蓋を開けた。
中に入っていたのは、小さな布袋。 その中には、指輪が一つ収まっていた。
「指輪か……!」
鑑定能力があるわけではないので、効果は分からない。 だが、こういう宝箱産の装飾品は高い。
ゲーム通りなら、能力値を上げる指輪の可能性が高い。
「……二つ出たことにしよう」
メニューを開く。 ショップ機能。 そこに並んでいる初心者向けアイテムの中に、銀貨一枚で買える安物の指輪があった。
力+1の指輪。
ゲーム開始直後なら、ちょっと嬉しい程度のアイテムだ。 この世界でどれほどの価値があるかは分からないが、少なくとも普通のアクセサリーよりは高く売れるだろう。
俺は銀貨一枚を消費し、その指輪を購入する。
手のひらに現れた二つ目の指輪を見て、思わず口元が緩んだ。
「宝箱から指輪が二つ。うん、自然だな、自然」
自分で言っておいて何だが、かなり怪しい。 けれど、宝箱の中身なんて確認した者はいない。 隠し通路を見つけたのも、宝箱を開けたのも俺一人だ。
問題は、欲をかきすぎて目立つことだが……。
「まあ、金貨十枚ぐらいなら許容範囲だろ」
そんなことを考えながら、俺は指輪二つを懐にしまった。
その時だった。
背後の通路の方から、複数の足音が聞こえて来た。
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