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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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二千百八十三話 女神が魅入る規格外、スラウテルの無念を汲む神律の適格者

 ヴィーネたちともアイコンタクト。

 そこで周囲に、


「氣になると思うが、手出し不要――」


 隆起し、共鳴中の魔皇碑石へ片手を向けた。

 スラウテルの無念は神律の適格者しんりつのてきかくしゃで理解はできている――。

 空間を裂くような高周波を撒き散らし、黒虎(ロロ)の耳をも震わせる魔皇碑石が飛来する。 

 眼前で静止したそれは、絶対的な法を具現したかのように微動だにしない。

 暗剣の風スラウテルの遺骸が、その圧倒的な質量に共鳴し、狂おしいほどに震動を始めた。右腕を緩やかに振り下ろすと、碑石は重力そのものを書き換えたかのように、音もなく大地の深奥へと突き刺さった。


「――暗剣の風スラウテル、魔皇碑石を自由に使え、そして、これも送ろう――」


 両掌を荒れた大地へと叩きつける。

 ――血管を駆け巡る<血魔力>が、深紅の奔流となって地殻の亀裂へと雪崩れ込んだ。

 <始まりの夕闇(ビギニング・ダスク)>の静謐な闇とは異なる、<霊血の泉>の根源的な生命力が、枯死していた骨の峡谷を脈動させる。俺の意思が血管となり、大地そのものがルシヴァルの一部へと作り変えられていく感覚だ。


「マスター、傷場からの魔力と魔素には、バイコマイル胞子、エレニウム粒子などが強く含まれています!」

「ご主人様……暗剣の風スラウテルの復活!?」

「おう」


『……オォ……黎明ノ王、我ヲ、引っ張リ上ゲル……ぬぉぉ、牙ヲ感ジルゾ、コノ大地モ……オォォォ』


 スラウテルの思念が、数千億年の時を超えて俺の脳髄を直接揺さぶる。

 それは歓喜であり、飢餓であり、神としての矜持。

 足下から突き上げるような震動が世界の秩序が崩壊する前兆のように激しさを増していく。


「――いいぞ。その渇きを、この戦場のすべてで癒せ、スラウテル」


 俺の言葉が触媒となり、大地が悲鳴を上げて爆散した。


 その言葉が響いた直後、ズゴゴゴゴゴォォォッ!!


 東南と真南から砂煙を上げて進軍してきていた闇神リヴォグラフ、十層地獄の王トトグディウスらの先遣隊の足下で、大地が突如として爆ぜた。

 赤黒い血の魔力を帯びた巨大な『白骨の茨』や『呪怨鉄の槍』が、地殻を突き破って無数に隆起する。魔神復活の起動のトリガーを押したか。

 


「――な、なんだこれはッ!?」

「足下が……ギャアァァァッ!」


 悲鳴を上げる間すらなかった。

 進軍の先頭を切っていた重装魔族の鎧が紙細工のように容易く貫かれた。

 地底から噴出した『白骨の茨』は、獲物の生命力を啜りながら天へと伸び、無数の魔族を串刺しのまま虚空へと掲げ上げる。立ち昇る死臭と、鉄錆の混じった魔風。瞬く間に、俺たちの前には絶望的なまでの高さを誇る『神骸の城壁』が聳え立った。


 続けて、宙に浮遊している幾つもの『魔皇碑石』が、スラウテルの骨と融合しながら要所へとズシン、ズシンと重低音を響かせて鎮座していく。


 碑石から放たれる蒼白い魔線が【砂城タータイム】と結びつく。

 ボーフーンの領域で、蒼白い魔力が漆黒の魔風と混じり合いながら、絶対的な魔導要塞陣地が、自動的に構築されていった。


 圧倒的な質量と大地の猛威を前に、進軍を試みていた神々の軍勢は完全に足を止め、恐れをなしてジリジリと後退を始める。


「ふふ、あらあら」

「ンン、にゃ~」


 魔毒の女神ミセアは、いつの間にか傍らに寄っていた相棒へ、巨大な魔魚の切り身と思しきご馳走を差し出していた。手懐けるための餌まで用意済みだったとは、抜け目ない。

 と、魔毒の女神ミセアは、こちらの視線に気付く。


「ふふ、ふふ、魔神の論理に動かない槍使い、堪らなく素敵。暗剣の風スラウテルに、恩はないはずなのに……あ、ううん、何か過去にあったのかしら、ね? ふふ、でも、得たばかりの神格を切っ掛けに、ボーフーンの領域そのものをスラウテルのために、触媒にして書き換えるなんて、ほんっと、傲慢な漢の、粋を感じるわ……女が靡くのも当然よ、まさに規格外……」


 その言葉に含まれる熱を静かに肯定した。


 ディペリルの傍らに控える魔界騎士ヴェルモットやリサマベルたちも、目前で起きた神々の軍勢の蹂躙劇を見て、一切の隙を見せずに警戒を強めている。

 ディペリル本人は恐怖するどころか、豊満な胸を揺らして妖艶な笑みを深めた。


 そこで、先ほど『極上の夜』を条件に同盟を迫ってきたことを思い出しながら、


「……同盟の件だが。条件の『夜の相手』は却下だ」

「あら……」


 ディペリルが艶やかな唇をわずかに尖らせる。


「だが、不可侵同盟ならあり。同時に先程の傷場の防衛にも手を貸してもらう」

「承知しました。では、これを差し上げます――」


 すんなりか。ディペリルは手元に召喚した袋を俺に放る。

 ユイとレベッカにヴィーネも動こうとしたが、『大丈夫だ』と言うように俺が前に出て、その袋を掴む。


「……これは?」

「中身は、王淫の蜜……と……」


 そこでディペリルはキサラを見やる。


「な、何を仰っているのですか! シュウヤ様は、この世界の運命を背負う闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)……真なる救世主であらせられるのですよ! そのような、淫蕩を煮詰めたような王女の誘惑になど、屈するはずがありません!」


 キサラの焦りに満ちた声が響く。

 普段は冷静な彼女がここまで声を荒げるのは、滅多に見ない光景だ。

 

 ヴィーネたちもキサラと先程のいさかいからか、同意するように数回頷いている。

 ディペリルは、


「……ふふ。元氣ねぇ、そして四天魔女、名はキサラだったわよね……ゴルディクス大砂漠のノートイゼの件は、忘れていないわよ? 貴女たちのせいで破壊されてしまったけれど……そう、その時と同じ物が、それに入っているわよ」

「「え?」」


 キサラたちは俺が持つ魔法袋を凝視。

 キサラは、


「では、魔境の大森林からの……」

「うん、ゴルディクス大砂漠と狩魔の王ボーフーンが持っていた傷場から近いし、傷場の防御も、私たちなら突破は可能。無論、神格は、ちょいちょいとした後だけどね」


 ……ディペリルは神格をわざと落として惑星セラに入ったこともあると言いたいのか。

 そのディペリルに、


「……ごたくはいい、王淫の蜜と、その魔神具の名、効果を教えてくれ」

「王淫の蜜も、とっても貴重な魔神具でもあるんですよ?」

「へぇ」


 と、ラムーたちとアイコンタクトし、視線をディペリルに戻す。


「では、その貴重な、王淫の蜜の効果は?」

「『王淫の蜜』の効果は主に二つ。一つは、これを体に塗布すれば、多少の相性はあれど、数年間はあらゆる魔力消費を極端に抑えることが可能になります。そして二つ目は……」


 ディペリルは己の唇を艶かしくなぞりながら、視線を流す。


「蜜に己の血や体液を混ぜ、対象に触れるか注入すれば、相手はシュウヤ様を強く好むようになりますわ。耐性を持つ者も多いので絶対ではありませんが……そうねぇ、SSSクラスのモンスターなら容易く使役できるほどの効果、と言えば伝わるかしら? もちろん……うふふ、単純な媚薬としてお使いになっても、夜のお楽しみが何倍にも膨れ上がることは保証いたしますわ」

「ん、危険、絶対副作用がある。クナの怪しい薬の強化した奴!」

 

 エヴァの瞳は、白皇鋼(ホワイトタングーン)の輝きを帯びたまま、ディペリルの本質を射抜いている。

 ディペリルは唇に人差し指を当て、エヴァに向け『しー』と言うような仕草を取った。

 <ベイカラの瞳>を発動させているユイが、


「シュウヤ、交渉は任せる。どちらに転んでも、大丈夫だからね」

「あぁ」


 逃げても追跡は可能ということだろう。ディペリルの配下の大魔術師(アークメイジ)にも見える存在が、ブツブツと呪詛のような小言を呟いている。

 指先から漏れている魔力が、俺の<血魔力>や<霊血の泉>の効果に干渉していると察せられるが、その指先が時折、不自然に手の甲側に折れ曲がっては、瞬時に再生し、何度も、何かの魔法を試み続けている。皆も、その行為には、氣付いているが、指摘はしない。


 そして、ユイの体から凄まじい勢いで<血魔力>と白銀の魔力が放出されている。

 そのユイからヴィーネたちは、神格の片鱗を感じ取っている。

 存在感は、もはや一国の軍勢に匹敵するほどの魔力の密度、氣の強さを有していた。

 

 ディペリルの配下たちが、その威圧感に気圧され、わずかに後退するのが分かる。


 ヴィーネが、銀の長髪を揺らしながら俺の隣へと歩み寄る。

 その瞳には、主を案じる忠誠心と、隠しきれない鋭い嫉妬の火が灯っていた。


「ご主人様……あの王女が差し出す『毒』は、甘美であればあるほど深く魂を蝕みます。夜の帳を下ろす相手は、どうか慎重に選んでくださいませ」


 その真っ直ぐな想いに、俺の胸に疼くような愛しさが走った。

 頷いてからディペリルを見て、


「では、この魔法袋に入っているだろう、他の品は?」

「……もう一つは、〝幻夜の転晶体〟です。効果は転移。一度記憶したら、その場所への何度でも転移です。転移場所の記録もほぼ無限、己の才覚次第。証明もしましょう――」


 ディペリルは掌に高密度結晶体のようなアイテムを浮かばせる。

 それを宙空へと放った直後、ディペリルの姿が高密度結晶体らしき物と共に視界からブレた。

 世界のフレームが数秒抜け落ちたかのような錯覚。

 氣付けば彼女は遥か頭上――潜伏していたカメレオン状の多頭魔術師の背後に現れていた。

 彼女の両手から伸びた紫黒の毒刃が獲物の核を無慈悲に貫く。

 

 魔術師が断末魔すら上げられず霧散する中、彼女は何事もなかったかのように俺の眼前に着地した。手元には〝幻夜の転晶体〟が浮いている。


「この〝幻夜の転晶体〟も差し上げます。私たちは、これを用いて魔界を移動していますの。尚、登録者は三人のみです。呪いではないですが、それに魔力を込めたら、登録完了、同時に、私の位置が分かるようになる仕組みでもあります」

「……」


 ラムーたちを見やる。

 ラムーの霊魔宝箱鑑定杖はもう使用済み。そのラムーは頷いて、


「本当です」


 と短く付けた。


「ん、悔しいけど本当……」


 と、エヴァはディペリルに触れていないが、あぁ、また<紫心魔功パープルマインド・フェイズ>が成長したのか。


「了解した。じゃ、同盟と行こう」

「ふふふふふ! やりました!」


 ディペリルの艶めいた歓喜の声に呼応するように、彼女の体から濃密な魔力が立ち昇る。

 それはただの力の奔流ではなく、見る者の理性を奪うような紫黒の香氣となり、彼女の豊満な肢体をヴェールのように包み込んだ。魔力の風に長い髪が妖しく舞い、興奮に染まった肌が魔夜の光の下で真珠のような艶を放つ。圧倒的な力と淫魔の王女たる絶世の美貌が融合し、その場にいる者の視線を強制的に惹きつけるほどの凄絶な魅力を放っていた。


 そのディペリルは、


「……光魔ルシヴァル側の、北のバーヴァイ地方と地続きで繋がっている暗剣の風スラウテルの復活がしそうな、この地、大平原コバトトアルの一部への領域への戦争行為をしないことも誓いますわ、その上で、応援として、傷場を巡る争いに光魔ルシヴァル側の戦力で駆けつけます。近くにいたら? ですが、うふ♪」

「了解した、それでいい」


 ディペリルは自らの親指を強く囓ると、その血を吐き出した。

 吐いた血飛沫と血肉が、一瞬で、魔法紋の契約書に変化。

 そこには、こちらが今述べた条件がずらりと並び、俺たちやディペリル本人、彼女の王国暦らしき難しい漢字類が<翻訳即是>で翻訳されていく。更に、証人として魔毒の女神ミセアと、眷族たちの名が刻まれていく。


「ディペリル、生意気ねぇ、我の魔力を、いつの間にかかすめ取っていたとは」

「それはそちらもでしょう……うふ」

「ふふ」


 とミセアが笑っているが、笑っていないだろうな。

 その直前、突如として空間が滲み、ダークエルフ風の男性魔族が音もなく出現した。

 ミセア配下の魔界騎士の一人だろうか。彼は恭しく跪き、魔毒の女神の耳元で何かを囁く。

 ミセアの頭部を飾る蛇の数匹が瞬時に消えては再出現し、そのまま彼女の艶やかな口の中へと怪しく吸い込まれていった。

「あら、本当のようね、道理で……」


 と、俺たちを見やるミセアは少し溜め息。

 ダークエルフ風の男魔族は足下に薔薇の魔力を発生させながら、ディペリルと、その大眷属らしき方々に睨みを利かせていた。バーレンティンと似て、かなりのイケメン。

 黒いジャケット風の魔貴族軍服は、魔毒の女神ミセアの軍の印も刻まれている。

 体格からして、かなりの強者。


 魔毒の女神ミセアは、


「シュウヤ、ヴィーネちゃん、吸血神と仲が良いならアスタロトのことは注意するように伝えておくのよ?」

「あ、はい」

「ふふ、では、ヴェモガとキュルレンス、闇神たちだけに権益取らせるわけにはいきませんことよ」

「はい、ミセア様」

「はい、既に三千長の一部を展開済み。そして、槍使いへの配慮は、もう十分かと、厖婦闇眼ドミエルなどもおりますが、狩魔の王ボーフーンを屠ったのですから」


 と、キュルレンスは語ると、魔皇獣咆ケーゼンベルスの鳴き声が響く。

 魔皇獣咆ケーゼンベルスは、宙空で跳ねるように前進し、飛翔中の炎竜ヴァルカ・フレイムと合流するように、巨大な闇の不死鳥のようなモンスターとの戦いを始める。


 あの闇の炎鳥も、どこかの勢力ということか。


 視線を下げて、キュルレンスと目が合うと、その視線が揺れた。

 謝るように頭を少し下げていた。この間の反応とは少し異なる。

 ……主がいる場と、個人の現場とは、また違うのかな。


 神々の大眷属たちも己の立場があるんだろうな。

 中間管理職や、部長ポストを争うような、派閥の柵があるのなら……大変そうだ。


 ミセアは、


「では槍使い、貴方の征く道の先に、再び薔薇の香が満ちることを願っているわ――」


 指を鳴らすと周囲に幻惑的な大輪の薔薇が咲き乱れた。

 彼女の姿を包み込むように収束した直後――数キロ先の大平原で空間を震わせる爆鳴が轟く。


 その真上の魔夜世界に赤い目の幻影が無数に浮かぶ。

 あぁ、いつもの闇神リヴォグラフ連中だ。


 闇神リヴォグラフの軍勢が待ち構える地点へと魔毒の女神ミセアたちは、嵐となって突っ込んだのか。では魔毒の女神ミセア、否、『様』とつけるべきだな。俺たちを守るために戦った? 

 権益があるとか言っていたが……。

 ヴィーネも理解したのか、瞳が揺れて、口元に震えた指先を当てていた。


 ……ミセア様に感謝するが、少し嫉妬を覚えてしまう。

 

 ディペリルは宙空に浮いたままの魔法紋の契約書の一枚を手に取り、仕舞う。

 もう一枚の契約書が飛来してきた。それも受け取って、戦闘型デバイスのアイテムボックスに入れた。


「では、シュウヤ様、魔毒の女神ミセアに良い格好はできませんので、また今度――」


 ディペリルは己の陰の中に吸い込まれ、完全に姿を消す直前に、その陰から片手だけを出して、〝幻夜の転晶体〟を吸い寄せてから、片手は沈み込むように陰の中へと消えた。


 彼女たちの眷族たちは、魅惑の香りを残し、空間を歪めると、自陣へと撤収していった。

 その時――。


『シュウヤ様、乗りました』

『了解』


 レンの血文字を見て、即座に、骨鰐魔神ベマドーラーを意識し、<血魔力>を結構消費するが――。

 

「『ボォォォォォォォンッ!!!』」


 大氣を激しく震わせ、骨鰐魔神ベマドーラーを呼び寄せる。

 魔夜の天空を覆い隠すほどの圧倒的な巨体が、砂城タータイムの横を掠めるように通り抜けた。

 

 空氣が押し潰されるような轟音が轟き、土煙と呪怨鉄の砂塵が猛然と舞い上がる。

 その巨大な骨の顎から、黒色基調の着物ドレスを翻し、レンがしなやかに飛び降りてきた。

 土煙と呪怨鉄の砂塵が舞う。

 【レン・サキナガの峰閣砦】の居残りはバーソロンか。


 レンは、逃げ遅れていただろう悪神デサロビアや闇神リヴォグラフの残党兵へと宙空で加速。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>だろう。血飛沫の残像が、美しい黒髪を追う。前にいるレンは加速を強めて、宙空にいる蛇と鹿を融合させたようなモンスター兵に肉薄し、身を捻る魔太刀の斬撃で胴を真っ二つ。更に、横に飛翔し、ゴブリンのような姿で、背に黒い翼を持つモンスターへと肉薄し、<白炎一ノ太刀>による斬撃を繰り出す。

 

 ゴブリン型の魔族は両腕を上げたが、遅い、その腕と胸元は両断されていた。

 

 レンは次の標的、鹿魔族の頭上へと向かう、一氣に、魔太刀を振り下ろす。

 鹿魔族は腕を上げた。防御創を作るような印象のまま、その片腕ごと頭部を斬られると、止めの<無反動・世斬り>を体に浴びて吹き飛ばされていた。


 骨鰐魔神ベマドーラーは、闇烙龍イトスと闇烙竜ベントラーとすれ違うように降下――。

 闇烙龍イトスと闇烙竜ベントラーはナギサの近くに戻ると消える。

 

 そして、骨鰐魔神ベマドーラーは地面近くを低空飛行――。

 巨大な顎を突き出しながら鹿魔族の首を頭上に掲げていた魔族を喰らう。

 次々とモンスター兵を丸呑みにし、あるいはその巨体で踏み潰していった。


 レンは、ベマドーラーから離れて、こちらに飛翔してくる。

 黒色基調の着物ドレスが似合う。

 太股に刻まれている『血闘争:権化』と『血鬼化:紅』を煌めかせては、身を翻した。

 狙いは、新手の射手の魔族か。間合いを一瞬で潰すまま、魔太刀を左から右へと振るい、射手の魔族の首を刎ねていた。俺の<霊血の泉>の<血魔力>を吸収して肌艶が良くなっているレンは、こちらに向け、低空を滑るように飛翔し、着地。


「――助太刀に参りました。……しかし、ここはまた……凄まじいことになっていますね」


 この惨状は当然。

 巨大な骨の防壁を見渡しては、苦笑する。


「おう、ちょうどいいタイミングだ」


 笑って応えると、黒虎(ロロ)も「にゃお~」と嬉しそうに鳴いて、二人の足下へとすり寄っていった。骨鰐魔神ベマドーラーの援軍で、逃げる魔族たちが明らかに増えている。

 

 そこで、依然として振動が続いている、暗剣の風スラウテルの骨と装備類を見た。

 


続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中。

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