二千百四十話 武神寺の余韻と暗黒街のホウオウの理
再び、一礼。
すると、
「アキレス様、そしてシュウヤ殿! 見事な槍捌きでした!」
ジメクやアシュレイ、周囲を取り囲んでいた門弟たちが、興奮を抑えきれない様子で駆け寄ってくる。
ジメクが、
「しかし、師と弟子だからこその、打ち合いだと思うが……凄まじい質の高さだ。あれは一種の芸術だな……俺の知る風槍流の見知を超えていた」
「あぁ、私の知る風槍流の『単徹手』と『槍挑斗』を互いに繰り出していたのは分かった。しかし、連撃の間と互いの動き、<風柳・異踏>の横避けも微妙に違って見えたことが、鳥肌ものだ……二人とも神王位の上位層のそれを凌駕しているのは確実」
ジメクとアシュレイの言葉にアキレス師匠が嬉しそうに、
「わしも満足だ、シュウヤありがとうな」
「はい――」
ラ・ケラーダの挨拶を返す。
「ハハッ、まったく、羨ましい師と弟子だな!」
巨漢のジメクが興奮氣味にアキレス師匠の肩を叩き、師匠もまた角の生えた頭を掻きながら「はははっ」と豪快に笑い返す。
黒猫も「ンンン――」と喉声を発し、楽しそうに上半身をあげ後脚で立ちながら「にゃ、にゃは~」と鳴き、右前足を上げて皆に肉球を見せている。
アシュレイは、紺碧の瞳を輝かせ、
「ふふ、可愛い黒猫ちゃん」
「あ、この黒猫の名はロロディーヌ。愛称はロロ。神獣で、姿もネコ科が基本ですが、結構、姿は自由に変化が可能なんです」
「ほぉ、可愛い猫ちゃんが、神獣ちゃんとは驚き――」
アシュレイは姿勢を下げ、相棒と目を合わせながら、その頭部を撫でていく。
「にゃ~」
黒猫は嬉しそうに、自らの頭部をアシュレイの掌の中に納めようと上半身を動かしていく。
「ふふ」
アシュレイは、そんな黒猫の頭部を撫でてから立ち上がり、
「――シュウヤ……いや、強者のシュウヤよ。お前とアキレス様の立合いを見て、私の槍はまだまだ先へ進めると確信した」
彼女の纏う<魔闘術>の魔力は静まっているが、その奥底には新たな炎が赤々と燃えているのがわかる。
頷き、
「俺もですよ。アシュレイの風槍流も見事です。六つの花を感じさせる進行性槍法、それも風槍流とは理解していましたが、今回、改めて、風槍流の新たな可能性に氣付くことが出来ました……深く学ばさせてもらいました。感謝です――」
と素直の心のまま発言した。
ラ・ケラーダの挨拶で拱手を行う――。
思考を挟む余地のない激闘の果て、互いの理が混ざり合った瞬間の感覚が、まだ掌に残っている。
少し頬を朱に染めて可愛らしい一面を見せたアシュレイは、
「……ふっ、あの風槍流『六合花槍』の理合いだな。あれは、たしかに……私の理合。しかも、それをシュウヤは永年使っていたかのように、己なりに昇華して見せた……見事すぎる才能だ……また、自分で言うのもアレだが……私も、そのおかげで更なる高みに昇ることができた……」
涼しい風に舞うアシュレイの髪。
その紺碧の瞳には、技を写し取られたことへの困惑ではなく、同じ高みに立つ者から得た新たな「道」への熱い炎が灯っている。
アシュレイの美しい顔を見ていると、その武への真摯な姿勢に魅了される。
「改めて、礼を、ありがとう偉大な槍使いシュウヤ殿――」
美しく礼を返してきた。
そのアシュレイは相棒を見て、
「ふふ、そして、可愛いロロちゃんにも礼を――」
また姿勢を下げて、相棒の頭部と背を片手の掌で撫でていく。
黒猫が氣持ちよさそうに喉を鳴らしていると、白砂の訓練場の端で静かに見守っていたヴィーネ、エヴァ、レベッカ、キサラ、ユイたちが、ふわりと緊張を解いてこちらへ歩み寄ってきた。
「しゅうやん! すっごくかっこよかったわ! あんなすごい槍の応酬、見てるこっちまで息が止まりそうだったんだから!」
レベッカが蒼い瞳をキラキラと輝かせ、弾むような足取りで一番に駆け寄ってくる。
その後ろから、エヴァが魔導車椅子を滑らせて進み出た。
「ん、二人の槍、まるで一つの芸術みたいだった。風と雷が綺麗に混ざり合って……シュウヤの武の心、しっかり伝わってきたよ」
「えぇ、ご主人様。アキレス様もアシュレイ様も、そして何よりご主人様の流麗な体捌き……瞬きをするのが惜しいほどの、至高の立合いでございました」
ヴィーネが胸に手を当てて優雅に微笑み、キサラもダモアヌンの魔槍を携えたまま深く頷く。
「はい。力と速さだけでなく、相手の理合いをその場で己のものへと昇華していく……私たちも大いに学ばせていただきました」
「……ホント、相変わらず規格外なんだから。剣術を扱う私から見ても、あの神速の近接乱舞はちょっと背筋が寒くなった」
ユイが呆れたように肩をすくめながらも、その視線には確かな誇らしさが宿っていた。
「はい、カウンターとカウンターの応酬、シュウヤ様の背に柄を回して、次の攻撃のための死角防御も見事」
「あぁ、あの動きはなんか鳥の大鶴を見ているような動きだった。格好良かった~」
そこに柱の寄り掛かって観察していたカリィが、ボサボサの髪を揺らしながら近付いてくる。
「――アハ♪ ボクも同意見だヨ。あの神速の応酬、暗殺の隙なんて微塵もなかったからネェ」
カリィは指先で短剣『怪士ノあやかし』を器用に弄びながら、悪態笑顔を深めた。その後ろからはホフマンが燕尾服の裾を優雅に翻し、進み出る。
「クク……我がメシアの神威、まさに至高。このホフマン、魂が打ち震える思いで拝見しておりましたぞ」
ホフマンが恭しく、そして狂熱を帯びた瞳で深く一礼した。
皆の言葉に、アシュレイがハッと息を呑んで立ち上がり、ヒロイン陣からカリィ、ホフマンへとぐるりと視線を巡らせた。
「……シュウヤ。お前の連れの者たち……ただ美しいだけではないな。一人一人が、一軍を容易く壊滅させられるほどの凄まじい<血魔力>、それは修羅の氣に等しい膨大な魔力を隠し持っている。【天凜の月】とは、これほどまでに恐ろしい集団なのか」
アシュレイの驚愕の言葉に、苦笑しながら肩をすくめた。
「頼もしい自慢の家族たちですよ」
「ふふ、そうか。お前らしいな」
アシュレイが目を細めて微笑んだその時、アキレス師匠がポンと俺の肩を叩いた。
「さて! 武神寺の若い衆にも、最高に良い刺激になったじゃろう。わしらはそろそろ行くとするか。シュウヤよ、お前の連れが向かったという、裏のネズミどもの巣穴が氣になるんじゃろう?」
「えぇ。メルとカルードがタンダールの裏社会、【大鳥の鼻】の盟主のところへ交渉に向かっています。そろそろ合流したほうがいいかもしれないですね」
すると、ジメクや門弟たちが一斉に道を空け、深々と頭を下げた。
「シュウヤ殿! いつでもこの武神寺へお越しくだされ!」
「我ら一同、次なる御手合わせを心待ちにしております!」
武神寺の猛者たちの熱い声援と深い敬礼に見送られながら、俺とアキレス師匠と皆は、清々しい足取りで武神寺の石門を後にした。
「ンン」
階段を先に降りていた黒猫が黒豹に変化し、跳躍し、天辺に着地。眼下に広がる景色を見ている。
「相棒、行くぞ」
「ンン、にゃ――」
□■□■
鉱山都市タンダールの暗黒街。
陽の光が届かないその一角に、煤け、半分ほど崩れかけた煉瓦造りの古い建物があった。かつてカリィたちが属した【影翼旅団】の拠点であり、今はタンダールの裏社会を牛耳る【大鳥の鼻】の旗が掲げられているアジトだ。
その奥深く、重苦しい空氣が漂う部屋の中央に置かれた円卓。
【大鳥の鼻】の女盟主バメルは、どっかりと椅子に深く腰を掛け、一切の隙を見せない重厚な威圧感を放っていた。
「……【天凛の月】の副長殿。私たちが貴方たちの同盟、あるいは傘下に入る条件として、このタンダール裏社会における我々の自治権は最大限に保証していただく。それと、魔導石の流通ルートの利益配分ですが……」
円卓の向かいに座る<筆頭従者>にして【天凛の月】副長であるメル・ソキュートスは、優雅に脚を組み、静かに微笑を返した。
だが、その内心では目の前の女傑から発せられる尋常ではない魔力と武威を正確に測っていた。
――強い。裏社会の顔役としてカリィたちと血みどろの抗争を繰り広げてきただけのことはある。一筋縄でいく相手ではない。
メルの背後に控える<従者長>にして【天凛の月】筆頭顧問のカルードも、腕を組んだまま警戒レベルを最大に引き上げていた。
「……バメル殿。貴方の実力とこの街での影響力は高く評価しております。ですが、利益配分に関しては、我らも譲れない線が――」
その時、部屋の重厚な扉が音もなく開かれた。
見張りの護衛たちが制止する声すら上がらない。
廊下の暗がりから、濃厚な血の匂いと、冷ややかな殺氣だけが静かに流れ込んでくる。
深い闇の中から姿を現したのは、豪奢な装束を纏った美しい二人の女性――<筆頭従者長>のヴェロニカと、<筆頭従者>のベネット。そして、筋骨隆々の巨漢、<筆頭従者長>のハンカイだった。
クナのセーフハウスから、このアジトの警戒網を誰一人にも悟られることなく潜り抜け、合流を果たした。
「遅くなったわね、メル。……ふふ、随分と骨のありそうな女ボスじゃない」
ヴェロニカが妖しい微笑を浮かべながら、バメルへと視線を送る。
かつて紅血の死神として名を馳せた彼女と、ベネット、ハンカイの三人から、純度の高い殺氣と圧倒的な<血魔力>の威圧感が放たれた。
それに当てられ、バメルの背後に控えていたガイとヨミは顔色を変え、即座に武器へ手を掛けようと身構える。
だが――バメルは微動だにしなかった。
「……」
バメルは視線を強める。
自らの体からヴェロニカたちに匹敵するほどの濃密で暴力的な魔力を噴出させる。
バメルの周囲に、黄金と真紅が混じり合う炎のような魔力が立ち昇った。
光魔ルシヴァルの幹部たちが放つ威圧感と、暗黒街の覇者が放つ魔力と<月冴>の魔力が部屋の中央で激突し、円卓に細かい亀裂が走る。
空間そのものが軋むようなプレッシャーの中、バメルは不敵に口角を上げた。
「【天凜の月】の幹部たちは、随分と氣が荒い。ですが、私の縄張りで殺氣を撒き散らすなら、相応の火の粉を被る覚悟はあるのでしょうね?」
「がははっ! 言うじゃねぇか、女傑! こいつは力ずくで交渉するのも面白そうだぜ!」
ハンカイが好戦的な笑みを浮かべ、金剛樹の斧に手を伸ばす。
一触即発。互いの次元の高い武力が激突しようとしたその直後――。
アジトの入り口付近に立っていたカルードが、不自然なほど静かに目を細めた。
隣にいたベネットも、エルフ特有の尖った耳をピクリと動かし、わずかに顎を引く。
「……メル副長。どうやらこのネズミの巣の周りに、無粋な真似を企んでいる輩がいるようです」
カルードが腕を組んだまま、静かに告げる。
バメルもまた、不快そうな表情を浮かべて窓硝子を見る。
彼女も既に、アジトを囲む伏兵の氣配に氣づいていた。
「……多段構えの奇襲」
「本命を突くための『目眩まし』の部隊が外にいるようですね」
バメルとメルが呟く。
ベネットは、
「外の連中は、私とカルードで掃除してくるよ」
ベネットの言葉にメルがわずかに頷くと、二人は影に溶け込むように、音もなくアジトの外へと消えていった。
直後、外から激しい戦闘音が連続して鳴り響く。
「今だ! 護衛の強者が外へ出たぞ! アジトの壁をぶち抜け!」
――ドゴォォォォンッ!
アジトの堅牢な煉瓦の壁が、けたたましい爆音と共に吹き飛ばされた。
外の部隊を囮にした、第二の奇襲部隊。本命の襲撃だ。
魔剣師ジジルと奇術師パグア率いる【天衣の御劔】と【髑髏鬼】の残党たちが、土煙の中から雪崩れ込んでくる。
「ギャハハハハ! 隙だらけだぜ、【大鳥の鼻】の盟主様よォ!」
ジジルが狂笑しながら突っ込んでくる。
だが、彼らはただの前座に過ぎなかった。
爆煙の中から、周囲の空間をひしゃげさせるほどの重圧を放つ、巨大な異形の戦士が姿を現す。
全身を赤黒い呪詛の装甲で覆い、両手には禍々しい棘付きの双大剣を握っている。
「……アズラの呪神、その末裔か……!」
バメルが忌々しげに吐き捨てる。
荒神大戦においてホウオウ側と激突したアズラ陣営。
その呪神の力を体内に飼い慣らした特異な暗殺者だった。
「私の交渉の席に、土足で踏み込んでくるんじゃないわよ……下衆どもがッ!」
バメルが長細い足で、円卓を蹴り飛ばすと、このアジトの地下に眠る遺物――。
かつてこの地に墜ちたホウオウ側の荒神ガ・ホウザの化石から、膨大な暴風の理を引き出し、<導魔術>も発動させ、虚空に四振りの魔剣が出現した。
バメルの操る四つの魔剣に『大鳥の嘴』の幻影を伴う強烈な暴風が宿る。
それら魔剣がピンポイントに異形の戦士へと襲い掛かった。
その荒神の領域効果を受けたガイとヨミの魔力も膨れ上がる。
彼女たちの足下が自然と浮くと七色の光を帯びる。
ガイの七色長太刀が暴風を受けて神速の剣閃となり――。
ヨミの影が硬質な黒羽となって奇術師パグアの幻影を次々と切り裂いていった。
「落ちなさいッ!」
バメルの操る四振りの炎剣が、異形の戦士の双大剣と激突する。
重低音が響く、アジトの屋根が吹き飛ぶほどの衝撃波が発生した。
だが、異形の戦士は呪神デ・ガの<多重足波動>を操り、バメルの暴風を強引に相殺して強烈な踏み込みを見せる。
拮抗する強者同士の死闘。
バメルの武威と導魔術は裏社会の覇者に相応しいものだったが、アズラの呪詛を帯びた敵の理不尽な重力と暴力の前に、一進一退の攻防が続く。
「……なるほど、強い――」
「えぇ、影翼旅団や魔神の拳たちと渡り合っていただけはある」
「うん、【大鳥の鼻】は、私たちにもちょっかいを出せるだけの力はあった」
ヴェロニカとメルは語る。
メルは静かに立ち上がった。
「ですが、お客様にばかり掃除をさせるわけにはいきません。ヴェロニカ、ハンカイ。残りのゴミを片付けますよ」
メルたちが動き出す。
ジジルが巨大な魔剣を振りかぶってメルへ斬りかかろうとした。
「よそ見してんじゃねぇ!」
「遅いですよ」
――閃脚のメル。
彼女の蹴り技が一瞬で炸裂し、大剣が衝撃で上向く。
間髪入れず、足首から展開された黒い翼が、ジジルの視界を黒く塗りつぶした。
ジジルは大剣を盾に黒い翼の一閃をなんとか防いだが、壁にまで吹き飛ばされていた。
そこに宙空に黒い翼を得たように飛翔していたメルの強烈な蹴りが向かう。
ジジルは大剣を掲げその蹴りを防ぐ。
だが――。
「げぇ」
下段回し蹴りを防げず、体が一回転。
浮いた体に、メルの踵落としが垂直に突き刺さり――更に加速する上昇回転の連続蹴りが、ジジルの防御を粉砕した刹那――。
メルの<血剋・蹴衝魔翼大刃>の魔刃が、ジジルの大剣を完全に弾き、そのままの軌道で彼の両足を膝から綺麗に切断する。
「ギャアアアアッ!」
床に転がり、無様に血を流すジジル。
ハンカイは「ハッ、副長も実に強い……俺の出番はなさそうだ」と豪快に腕を組んでバメルの前に立ち、降り注ぐ瓦礫から彼女たちを守る壁となっていた。
一方、バメルと激闘を繰り広げていた異形の戦士がメルたちの介入に氣づき、重力波を伴う斬撃をこちらへ向けて放ってきた。
「総長の顔に泥を塗る羽虫が……わたしが全部、細切れにしてあげる~♪」
ヴェロニカの周囲に<血道第三・開門>の<血魔力>が立ち上る。
一瞬で異形の戦士の懐に潜り込んだ彼女の手にはフランベルジュの魔剣ベイホルガの頂が握られている。
――<血剣・猛襲連速>。
流麗にして残虐。
魔剣ベイホルガの頂から放たれる無数の血の斬撃が、異形の戦士の呪詛の装甲を容易く切り裂き、再生すら許さぬ速度でその強靭な肉体を紙切れのように四肢から細断していった。
「ガァァァァッ!?」
異形の戦士が絶叫を上げ、肉塊となって床に崩れ落ちる。
メルは万能型の〝紅孔雀の攻防霊玉〟を操りつつ、宙空に〝ラヴァレの魔義眼〟を浮かばせると、魔義眼から血の魔力弾が飛翔し、ジジルとパグアの体を蜂の巣にしていく。
二人は白目を剥き、そのまま絶命した。
ほんの数分。
アジトに雪崩れ込んできた厄介な残党と、アズラ側の呪神の力を宿した強者は、息を吐くように惨殺され、部屋は文字通り血の海と化した。
外の敵を完全に沈黙させたカルードとベネットも、涼しい顔でアジトへと戻ってくる。
バメルたちは呼吸を整えながら、自らの周囲に浮かせていた四振りの魔剣をゆっくりと下ろした。
彼女自身、鉱山都市タンダールの裏社会の頂点に立つ強者。
だからこそ、噂通りの強さを見せたメルやヴェロニカたちを凝視していた。
メルは、血だまりを避けるように優雅な足取りで、バメルの元へと歩み寄った。
返り血一つ浴びていない。
「……さて、目障りな羽虫は消えました。交渉の続きをいたしましょうか」
バメルは目の前のメル、そしてヴェロニカやハンカイたちを改めて見回した。
「……ハッ。噂以上の強さね。そして、【天凜の月】の『総長』もまた、一体どれだけ規格外のバケモノなのか想像もつかないわ……」
バメルは呆れたように笑い、語る。
メルは、
「ふふ、総長がここにいたら、もっと楽に戦いは終えていたことでしょう」
「うん、でもメル、相手が接近戦仕様じゃないと、皆のことを守ることを優先するから時間は同じぐらいだと思うわよ」
ヴェロニカの言葉に、メルは両手を上げて、『たしかに』とジェスチャーを行う。
バメルは、
「それで交渉ですが、私たちは私たちの権益は維持させてもらうわ、無論、【天凜の月】とは友好条約が基本」
「はい、それで結構、【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の枠組みに入っていただくことも可能です。しかし、総長は別段、支配は望みませんので」
メルは優雅に微笑む。暗黒街の覇者たちにとって、それがどれほど奇妙で、そして恐ろしいことであるかを理解しているように。
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