千九百九十四話 氷の新魔法と、いざイゾルガンデの迷宮に
光精霊フォティーナが、
「旭日~」
「いい朝じゃ」
「「はい」」
と、朝焼けに染まる空の下を沙・羅・貂たちと共に駆けていく。
フォティーナは妖精にしか見えない半透明な翼のような翅は綺麗だ。
すると、シャウラが、
「では、皆さん、こちらです」
アドリアンヌの部下【星の集い】に所属するシャウラさん。彼女の背には魔力を帯びた弓がある。
アドリアンヌは、『月詠みの寝台』にて、レザライサ、シキ、メル、砂城タータイムにいるルシェルが中心の地上制圧組の指揮を任せている。
シャウラさんの背の弓を見ながら進む。
第三の円卓通りを行き交う馬車の数が多く、ひっきりなしに通ってる。
右の通り向かいに並ぶ家屋は、魔力を帯びた花屋、パン屋、シチューなどが売りな食事処、モンスターや動物を売っている店、魔法書が売っている店があった。
「寄り道して行こう――」
古びた羊皮紙とインクの匂いが漂う、間口の狭い魔法書専門店が目に留まった。ガラスのない窓からは、びっしりと本が詰まった書架が見える。
「少し見ていってもいいか?」
シャウラに断りを入れると、彼女は快くOKしてくれた。
ギシギシ軋む扉を開けて中へ――。
そこは本の迷宮だった。壁という壁が天井まで届く書架で埋め尽くされ、そのほとんどに埃をかぶった古書がぎっしりと詰まっている。店内は狭いが宙空にも書物は積まれて、と、傘を片手に浮いて、スカートの下に穿いていたパンティが見えている魔法使いの女性もいた。
「ちょっ」
と、レベッカに引っ張られて、「しゅうやん、だめでしょ、碧色の可愛いパンティを見ちゃ」
「え? レベッカも凝視していたじゃないか」
「それはそれよ」
「ん、そう!」
「ふふ」
と、なぜか女子組たちに怒られる始末。
宙空にいた女性の魔法使いは、恥ずかしそうな表情を浮かべて、俺たちから離れて、店の奥に向かう。
「ゴホンッ、これは中々の品揃えじゃな」
グラド師匠が、わざと咳払いをしてから、感心したように呟く。
カウンターの奥で、レンズの分厚い眼鏡をかけた老人がこちらを一瞥したが、すぐに手元の魔導書の解読作業に戻ってしまった。商売っけはないらしい。
「すみませ~ん。魔法書をみたいんですがー」
少し声を強めに呼ぶと、奥の紺色の布帳が揺れ、今度は先ほどの老人とは違う長い銀髪を三つ編みにしたエルフの女性店主が姿を現した。その目は、まるで値踏みするかのように鋭い。
「……いらっしゃい、魔法書かい?」
「はい、水属性の魔法書があれば、言語魔法、紋章魔法、問わずです」
俺の言葉に、彼女は品定めするような視線を一度だけこちらに向けると、やがて、
「……見るだけならタダさね、最初は言語魔法――」
とだけ言い、書架の一角から数冊の魔法書を取り出し、カウンターに無造作に並べた。
中級:水属性の水陣壁
烈級:水属性の氷縛柩
烈級:水属性の氷槍乱舞
烈級:水属性の凍てつく波動
王級:水属性の氷塔の嵐
皇級:水属性の絶対零度の吐息
「次が、紋章魔法の魔法書さ」
紋章魔法:水属性の氷刀魚沼。
烈級の言語魔法と紋章はどれも強力そうだ。
全部覚えてもいいが、俺は槍使いだからなぁ。
広範囲攻撃魔法は、既に<氷竜列>や<王氷墓葎>など強力なものを複数習得している。
《暗黒銀ノ大剣》などもある。
スキルにしても、三日月形の魔刃を飛ばす<仙玄樹・紅霞月>や、牽制に有効な魔力の刃を形成する<仙羅・絲刀>、無数の短剣を繰り出す<煉獄短剣陣>など、遠距離への攻撃手段は既に豊富に揃っているし、相手を引き寄せる<魔神式・吸魔指眼>のような特殊な飛び道具もあれば切り札として霊獣の力、<朱雀閃刹>も控えている。
血魔剣を使えば<血外魔道・石榴吹雪>による転移する爆弾の石榴も飛ばせるし、奇襲も可能だ。
そして、<始祖ノ古血魔法>、これも必殺技に近い<水血ノ断罪妖刀>――。
<始祖古血魔法・血文王雷鬼槍刃>も必殺技の一つ。
遠距離攻撃は多彩にあるからな……。
手数が増えれば選択肢は豊富になり、多彩な戦術も可能になるが……。
今求めるべきは、風槍流もせっかく覚えられるようになったし、この槍を主軸とした自分の戦いを補助し、戦術の幅を広げるための魔法にしたい。
その点を考慮しての……この三つは魅力的だろう。
敵を拘束する氷縛柩。
陽動や牽制に使える氷槍乱舞。
そして、敵の足下を奪い、槍の間合いに引きずり込むための布石となり得る紋章魔法氷刀魚沼。
どれも戦い方をより立体的にしてくれるはずだ。
とりあえず、この三つの魔法書を手に取り、
「……これらの魔法書の説明を頼みます」
「氷槍乱舞は見ての通り、氷槍の強化版と言えるさね、氷の槍を連弩のごとく複数生み出す魔法さ。使い手の詠唱と魔法力、イメージ力次第で、応用が効くから烈級だが、王級をも軽く凌ぐ威力にもなるだろうねぇ。同時に、威力を減らすように連想すれば、幻影のように使えるかもさ、まぁ、使い手の能力次第だね。時間差で、対象を襲わせられるのが基本、牽制や足止めには有効だろうね。敵が氷の槍に氣を取られている隙に、本命の一撃を叩き込む……そういう使い方が定石さ」
左目に戻っているヘルメが、視界に出現し、
『うふふ、《氷槍》の強化版。閣下とわたしの《氷槍》が炸裂する日がくるのですね!』
『おう、ヘルメと共に打つ日がくるかもだ』
店主は、
「次は、烈級:水属性の氷縛柩対象を極低温の氷棺に封じ込める拘束魔法。分厚いから物理的な破壊は困難だが、炎には少し弱いさね。ただ、連発できれば、氷棺で周囲を埋めることもできるさ、なかなか応用度が高い」
ビュシエと同じようなことができるってことか。
店主は、『氷刀魚沼』を指し、
「次にその紋章魔法、氷刀魚沼。指定した範囲の地面を、使い手の魔力次第の、底なしの魔力の沼に変える。踏み込んだ相手は動きを著しく制限されるが、これは相手次第さね。そして、本当の厄介さはそこじゃない。沼の魔力そのものが、刃のように鋭い鱗を持つ無数の氷刀魚となって、獲物の足元から群れで喰らいつくのさ」
俺のような槍使いが後衛から一時的に使っての前線に飛び込む時には、良いかもしれない。
鈍重な相手を一方的に倒せるかもだ。
「では、これの三つを買います」
エルフの店主は値札を一瞥しただけで「……合わせて白金貨八十九枚。高いが、これでもだいぶ勉強しとるのよ。珍しい魔法書だからねぇ……」とぶっきらぼうに告げた。
言い値で支払い、早速その場で書物を開いた。
ペルネーテの時と同じく、読み終えるごとに書物は塵となり、その知識が魂に直接刻まれていく。
一瞬で、氷槍乱舞と、氷刀魚沼と、氷縛柩は覚えた。
「やったわね~」
「ん、シュウヤは一瞬」
「シュウヤは魔法の才能も高い」
「おう、皆のフォローに回った時に使うさ」
すぐに使いたい衝動を抑え大通りを進む。
商店街の街並みは徐々に変化、左右の舗道が広くなり、馬車の道が狭まる。
都会の通りに似てきた。
と、酒場と娼婦館が増えてきた。
色違いの制服を着た女衒の婆さんを筆頭に、娼婦たちが列を成して大通りを堂々と進む。
先頭を歩く老婆の威厳ある眼光は少し怖い。
その背後の女性たちは派手だが、美しい。
娼館ごとに意匠を凝らした揃いの艶やかな衣装を纏った女性たちの行列か。
チン問屋ってわけでもない。ゆったりとした独特の足取りで大通りを練り歩くその様は、大名行列的なものなのかな。
単なる移動ではなく、一種の儀式めいた荘厳ささえ感じさせる。
沿道には彼女たちの姿をひと目見ようと人だかりができ、まるで騎士団のパレードのように熱心な声援が飛び交っている。投げ銭や花を投げる者までいる始末だ。
道端で客引きをする娼婦たちとは明らかに格が違う。
あれは美貌や技芸を極め、この都市の夜を支配する一流の証しなのだろう。
通りの端で立ちんぼの娼婦に、冒険者たちを誘う娼婦たちとは、あの色鮮やかな娼婦たちとはあきらかに異なる。
「……娼婦の祭り」
ユイが呟く。シャウラさんが、「〝花踏み〟ですね」と呟くと、シャイナスが
「ふむ。〝花踏み〟か。一流の娼館が自分たちの抱える妓女をお披露目する行進だ」
「はい、ただの客引きとは格が違うのです。芸を磨き、客を選び、時にはフロルセイルの各国の貴族さえも手玉に取る」
「あぁ、ここの一流どころは、一種の権威なのさ、裏ではギルド並の情報網を持っているともっぱらの噂だ」
【星の集い】のシャウラさんと魔界騎士シャイナスが語る。
「「へぇ」」
「なるほど、ペルネーテには無かった文化だ」
頷いた。
日本の吉原で言うところの花魁道中。
単なる遊郭というより、それ自体がこの都市を動かす一つの勢力なのかも知れない。
娼館同士のライバル争いなども熾烈を極めそうだ。
その様子を皆で感想を言い合いながら、迷宮都市イゾルガンデの心臓部の第一の円卓通りの大広場へと向かう。
「冒険者ギルドでの依頼は、五層の依頼を、わたしたちが受けてあるから行かなくて大丈夫よ」
「了解した」
「ふむ、我もイノセントアームズ入りした」
ルリゼゼの言葉の後、セレスティアと魔界騎士シャイナスたちも、
「はい、冒険者カードを作り、イノセントアームズに入りました」
「私もイノセントアームズ入りさせてもらった」
「我もだ」
「わしらもじゃ、イノセントアームズ入りしたからな」
「「おう」」
「お弟子ちゃんたちと同じグループ入りよ」
「うむ、どうせなら、いずれは光魔ルシヴァル入りをしたいもんだな」
ソー師匠の言葉に、
「そうね~でも、体を得ても回復系スキは元々豊富に持つ私たち。しかも、魔軍夜行ノ槍業に再度入れることは分かっている。だから、そこまで光魔ルシヴァル入りは必須ではないような氣もするわ」
「ふむ」
師匠たちは頷く。
「体を得ても弟子と一体化できるのか、<魔軍夜行ノ憑依>を試してみたいが、弟子、今度使ってくれるか?」
イルヴェーヌ師匠の言葉に、頷いた。
「はい、五層で、<魔軍夜行ノ憑依>を試しましょう。レベッカたちが、五層に湧くモンスター討伐の冒険者依頼を受けてましたから」
「うむ」
「でも、弟子ちゃん。私たちの光魔ルシヴァル入りは大丈夫なのよね?」
「はい、入るなら今度眷属化を行いましょう」
「うん」
「わしらも光魔ルシヴァル入りとなれば、<血魔力>による大幅な戦闘能力向上となる……」
「あぁ、魔人武王ガンジスはさておき、ベフェキラと良い勝負ができるようになるはずだ」
グルド師匠の言葉に師匠たちが頷き合う。
そんな会話をしながら、進むと、イゾルガンデの中心地と呼べる巨大な石の円環が徐々に大きくなってきた。もう何十回と見ているが、結構な観光名所だな。
通称『神々の砕環』。この都市の迷宮への唯一の入り口。
その手前の大広場には、冒険者以外にも、色々な方が集うのは前と変わらず。
商人の売り子さんも様々。
可愛いモデルが商品を持って売りさばく店もあれば、情報屋ギムレットのようなドワーフたちが、巨大ながま口を擁した財布を胸元にぶら下げて、陳列した商品の名を叫び、店独自の謳い文句を言いながら、「あんちゃん、一金貨で、五階層冒険者の迷宮セットはお買い得だぜぇ、買っていきな」と売りさばく。
魔力を有したフライパンを多数宙空に浮かばせて、料理の時短競技でも行われるように、そのフライパンで調理しながら、複数の魔力を有したフライパンを売りさばいている魔法使いの料理人もいた。
奴隷、戦闘奴隷を売っている商人もいる。
熱氣で満ちている。
布告人たちの情報もリアルタイムに流れていく。
素通りして、中心が窪んでいる階段を下りていった。
まだ早朝だというのに、虎獣人の武者のような冒険者たちが集団で、出入り口に向かうの見えた。
武具の擦れる音、高揚した話し声、そして腹を満たすための屋台から漂う香ばしい匂い。
生と死が隣り合わせのこの場所で、誰もがそれぞれの想いを胸に奈落へと挑もうとしていた。
『神々の砕環』は、天を衝くほどの巨大な岩が神々の力により、ねじ切られたかのような、異様な形状をしている。
クリスタルの樹の枝や幹と融合している出入り口を潜ると、すぐに中央の歪な水晶の樹が見えた。
冒険者たちがそれに触るとすぐに消えて、転移していく。
隣には下に向かう幅広な階段もある。
シャウラが、
「あの階段を利用すれば、一階層に行けます」
第一層を利用する冒険者の数は少ない。
冒険者たちの大半が、消えていくが、現れることもあった。
シャウラは、
「迷宮から帰ってきた時は、こちらに転移することもあります」
「「へぇ」」
出入りの魔力粒子が激しくて、眩い。
「壮観だな。この光景は俺たちを奮い立たせる」
トースン師匠が、満足げに煙管をふかしながら呟く。
綺麗だったが、冒険者同士で、
「なんだと、お前、さっきから!」
「あぁ? なんだ、それぐらい屁でもないだろうが」
「ちょっと、待ちなさいって」
「屁? げ、臭っ」
「お前、ほんとに屁をしてんじゃねぇ!」
下らないことで喧嘩のド突き合いをしながら揉み合ったまま転移の光に消えていく。
あの勢いで迷宮に突入して、果たして大丈夫なのだろうか。
「大丈夫なのですか?」
キサラが心配そうにシャウラさんに聞いていたが、「はは……さ、さぁ」と笑いを堪えるのに必死だ。彼女の真面目な性格が窺える。
「ふふ、実に活氣があってよろしい」
面白そうにそう評したのはレベッカ。
その直後、「あぅっ」と短い悲鳴を上げた。不意に背後から現れた黒豹の前足が、見事に彼女の膝裏を捉えたのだ。
「こら、ロロちゃん!」
体勢を崩したレベッカが、素早く逃げたロロの尻尾を捕まえようと追いかける。
その賑やかな光景を、レプイレス師匠が実に愉しそうに眺めていた。
「ふふ、弟子よ。ピクニックと洒落込むには、少々物々しい入り口だな」
「はは、師匠。これくらいが丁度いいですよ」
軽口を叩き合う冒険者たちと、レベッカと黒豹に釣られたレプイレス師匠の言葉だったが、他の師匠たちとバフハールは笑っていた。
だが、徐々に迷宮の出入り口のクリスタルの樹を、鋭い眼差しで見つめていく。
百戦錬磨の戦士だけが持つ視線だ。
足下では黒豹が「ンン、にゃごぉ」と低く喉を鳴らした。
その黄金の瞳は、水晶の樹の奥に広がる未知の世界を既に見据えている。
「相棒、逸るな。まずは挨拶回りだ」
そのフカフカの首筋を撫でてやると、氣持ちよさそうに目を細める。
ヴィーネやユイ、レベッカたちも、それぞれの得物を手に、準備は万端。
「では、行こうか」
皆が、無言で頷く。
他の冒険者たちが畏敬の念を込めて開けた道を進み、歪な水晶の樹へと向かった。
シャウラさんが、
「――初めての方は、この樹に触れてください。迷宮への登録が完了し、〝帰り葉〟が与えられます」
冷静に説明してくれた。俺たちの案内人。
言われた通り……『いざイゾルガンデの迷宮に!』と、氣概を込めて、水晶の樹にそっと手を触れた。ひやりとした感触と共に――。
膨大な情報が脳内に流れ込んでくるような感覚。
直後、目の前の空間に光の粒子が集まり、一枚の青白い葉っぱの〝帰り葉〟となって手のひらに収まった。皆も次々と登録を済ませていく。
全員が〝帰り葉〟を手にしたのを確認し、シャウラが頷いた。
「皆様、準備はよろしいですね。これより五階層へ転移します。この樹のクリスタルにパーティ名や案内人の名が出ます。即座に私が思念、念話、五階層を思えば、転移します。転移直後は広々とした空間です」
「あぁ、了解した」
シャウラの先導で水晶の樹の輝きに身を委ねた。
視界が白一色に染まる。転移の光が収まると、ひやりとした、それでいて血と鉄の匂いが混じる濃密な空氣が肺を満たした。石畳と土の地面が多い。周囲には石造りの建造物があちこちに立ち並ぶ。古代都市にあるような壁と柱、そして、天井も石の素材かな。高さは推定で五十メートルぐらいはありそうだ。模様は邪神たちの絵柄が刻まれていた。
その天井の一部には不気味な光を放つ苔が垂れ下がっている。
と、広場の門の先に、大柄のモンスターが見えた。
「――グオオオオッ!」
――耳をつんざく咆哮。
「前衛、盾を構えろ! 後衛は詠唱を続けろ!」
おびただしい数の牛と魔族が融合したようなモンスターとオーガの群れが溢れ出していた。
それを迎え撃つのはいくつものパーティが即席で連携した冒険者の集団だ。
「見ての通りです。ペルネーテの迷宮都市には、あのミノタウロスは浅い階層には登場しなかったはず」
とシャウラさんが指摘した。
ヴィーネは、「ペルネーテでは八階層ぐらいからですね」と呟く。
エヴァとレベッカは、モンスターブックの資料を見ては、頷いていた。
一体一体のモンスターが放つ圧も、それに対峙する冒険者たちの練度も段違いだ。
あれだけの数の敵を相手に、見事な連携で戦線を維持している。
怒号、魔法の詠唱、剣戟の音、そしてモンスターの咆哮が巨大な地下空洞に反響し、凄まじい熱氣となって渦を巻いている。
シャウラさんは、
「…………ここが五階層の入り口の大広間。左のクリスタルの樹と枝の階段を上れば、四階層に戻ることもできます。ここから先は、これまでの常識が通用しないほど強力なモンスターが出現するため、多くのパーティがここで一度体勢を立て直し、情報を交換するのです」
シャウラが冷静に解説する。
彼女はこれまでに何度もこの階層を訪れているのだろう。その目には動揺の色はない。
「なるほど、前線基地というわけか」
ヘカトレイルの冒険者ギルドからヴァライダス蟲宮に転移したことが、つい最近のように思えた。
「はい。では、邪神たちの像が鎮座している遺跡に行きましょう。そこにも時折、強力なモンスターが出現することがあります。そして、途中には、レベッカさんたちが討伐依頼を受けていた、オッドグレイム戦士、オッドグレイム槍使い、オッドグレイム射手、オッドグレイム魔法使いのモンスター兵士が現れます。目は複眼。腕の数は二本から四本とランダムです。肌は灰色で、かなり大型の豹獣人系と言えば分かりやすいですね」
と、教えてくれた。
続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミック版発売中。




