第四章新しい家族 第三節「小さなレディとの約束」
初めて会ったはずなのに、その笑顔はどこか懐かしかった。
小さなレディは、ためらうことなく僕を「パパ」と呼んだ。
「おはよう。起きた? 『お寝坊さん』」
青い目をぱちぱちさせながら、女の子が笑った。
「君が? エリナ?」
「そうよ。『お寝坊さん』。あなたがお母さんの大好きなユーサクさんでしょ?」
あどけない声に、胸がじんわりと温かくなる。
「そうだよ。よろしくね」
エリナは嬉しそうに、僕の手をそっと握った。
小さくて、柔らかくて、温かい手だった。
「ねえ、あたしのパパになってくれるんでしょ?」
エリナが僕の手に触れたまま、その透き通った青い瞳で、僕を真剣に見つめてくる。
僕は思わず息を呑んだ。
「そうだよ」
気づけば、自然にそう答えていた。
「ほんとうに?」
「本当だよ」
エリナがこぼれんばかりの笑顔を見せ、その小さな手で僕を抱き締める。
エリナは、父親を知らずに育ったから、ずっと寂しかったのだろう。
そう考えると、急にエリナがいとおしくなってきた。
アナスタシアに、アンナにエリナ、この三人を僕は、これから先、ずっと守っていく。
そう、誓った。
「ゆうちゃん、目が覚めた?」
アナスタシアの優しい声がした。
「うん、なんとか。僕、いつの間にかに、眠ってたみたいだね」
「カモミールティー、すごいでしょ?」
アンナがいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「えっ、何?」
「ゆうちゃんが長い移動で疲れてるから、少しリラックスした方がいいかなあと思って」
アナスタシアが微笑みながら言った。
「それでカモミールティーを?」
「うん」
「ふーん。でも、すごいね。ぐっすり眠れて、なんかすっきりしたよ」
僕が苦笑いすると、アナスタシアは満足そうに頷いた。
「でしょ? さあ、ご飯出来たから食べましょ」
その声が、まるで遠い日の春風のように心地よかった。
「ねえ、パパ、早くご飯食べようよ」
エリナの「パパ」の一言に、ユーサクの覚悟も決まりました。
次回、四人で囲む初めての食卓が始まります。




