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第三章再会 第六節「白い百合」
白い百合は、どれほど長い冬を越えても、再び静かに花を咲かせる。
この日、僕たちの心にも、小さな幸せが咲き始めた。
「そうね」
アナスタシアが、微かに微笑んだ。
その笑顔は、二十八年前のままだった。
自分の部屋にいた、アンナが戻ってきた。
目は真っ赤に腫れていた。
泣き腫らしたその顔は、子どものように弱々しかった。
「アンナ、こっちにおいで」
僕が手を伸ばすと、アンナはゆっくりと僕の隣に座った。
そして、何も言わずに僕の胸に顔を埋めた。
「アンナも随分、辛かったんだね。これからは、僕がいるから大丈夫だよ」
僕は、娘のようにアンナを抱き寄せた。
アンナの体が震えていた。
そして……アナスタシアもまた、静かに僕の肩に寄り添った。
三人の涙が混ざり合い、ひとつになった。
二十八年分の痛みが、静かに溶けていく。
誰のせいでもない。
ただ、運命が、僕たちを少し遠回りさせただけなのだ。
ああ、やっと……。
僕たちは、家族になれたのだ。
白い百合は、長い夏の終わりにも、静かに咲き続ける。
僕たちの幸せもまた、この日、小さく花開いた。
再会は、一つの物語の終わりではなかった。
それは、「新しい家族」という物語の、静かな始まりだった。




