表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い百合  作者: 森本有介
第二章出発

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/18

第二章出発 第六節「再会の扉の前」

長編小説「白い百合」が、『小説家になろう』純文学週間(連載中)ランキングで9位にランクインしました。


応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。よろしければ感想や評価もお待ちしております。


************************************************

二十八年という歳月を越え、ついに運命の再会の時が訪れます。

けれど、その場所には、どこか言葉にできない重苦しい空気が流れていました。

だが、気まぐれな十八歳の少女は、ときに僕を軽くもてあそぶ。


その笑い声が、どこか懐かしく、そして、少しだけ胸を刺した。



やがて、アンドレイが運転するタクシーが、古ぼけた七階建てのアパートの前に停まった。


その辺りには、同じような、おそらくはソ連時代の、四、五十年くらい前の建物がたくさん建っていた。


壁の塗装はせ、鉄の手すりには長年の錆が食い込んでいる。


だがその古さが、なぜか懐かしい。


時間ときの風が吹き抜け、建物の隙間に、まだ生きている街の匂いがした。


約束通りの金額にその半分のチップを乗せ、アンドレイに渡すと、喜んで何度もお礼を言ってきた。


そして車から降りて、荷物を降ろしてくれた。


帰り際に、アンドレイが僕の肩を叩き、


「二度と大事な女を手放すなよ」


その言葉は、冗談めかしているようでいて、なぜか胸の奥に深く響いた。


「ああ、分かっているよ。この二十八年、身に染みたよ」


僕がそう答えると、アンドレイは満足そうにうなずき、握手をして、最後に、電話番号が書いてある紙切れを僕に渡し、


「トビリシにいる間は、いつでも呼んでくれ」


そう言って帰って行った。


上手いアンナの通訳に、ついに僕は、アンドレイが日本人であるかのような錯覚におちいった。



陽気なアンドレイが去ったあと、僕とアンナは、その古ぼけたアパートの前に取り残された。



空気がよどんでいる。


重苦しい。


高いアパートが密集しているせいか。


僕の気が重いせいか。



目の前には公園がある。


七、八人の子供たちが、何度もペンキを塗り重ねられた古い遊具で遊んでいた。


でも僕には、その喧騒はまったく聞こえてはこなかった。


 

いよいよ、アナスタシアに会える。



僕は、現実に引き戻され、嬉しさと不安が入り混じっていた。


さっきまであんなに明るかったアンナの顔まで、心なしか暗く見える。



まるで、これから僕が出会う運命の重さを、彼女だけが知っているかのように……。




長い旅は終わり、いよいよ運命の再会が始まります。

次回、二十八年間止まっていた二人の時間が、再び動き出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ