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白い百合  作者: 森本有介
第二章出発

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第二章出発 第三節「出会い」

本日、長編小説「白い百合」が、『小説家になろう』純文学日間ランキングで10位にランクインしました。

応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。よろしければ感想や評価もお待ちしております。

************************************************

二十八年という歳月は、人を変える。

けれど、変わらない面影も、この世界には確かに存在していた。

まだ朝の七時前だった。


空港のロビーは、夜明けの名残を留めた淡い光に包まれている。


長旅の疲れがどっと押し寄せ、思考はかすんでいた。……八時頃まで時間を潰してから出るか。それとも、今すぐ出発するか。迷いながらも、胸の奥では答えが出ていた。一刻も早く、アナスタシアに会いたい。アナスタシアの顔を、この目で確かめたい。今すぐに、今すぐにでも。アナスタシアだってきっとそうに違いない。


そう信じて、僕はタクシーを探そうと足を踏み出した。


……そのときだった。


「ぼんやりしていると荷物を盗られますよ。ここは安全な日本じゃないんだから」


流暢な日本語。聞き覚えのある声だった。


反射的に振り向いた瞬間、僕の胸が凍りついた。


そこに立っていたのは、若き日のアナスタシア、そのものだった。


信じられない。


あの笑顔、あの青い瞳。木彫りの人形のような高い鼻。背中の真ん中まである、長く、艶やかな金髪。背の高さは、僕と同じ、百六十八センチくらいだが、体重は、四十五キロくらいに見える。かなりスリムで、とにかく足が長い。そして、顔も小さい。並んで歩くと、僕の足の短さと、顔の大きさが目立って恥ずかしくなる。そんなとこまでアナスタシアにそっくりだ。


僕の記憶の中に封じ込めた、二十歳のアナスタシアが、そのまま時を超えて現れたようだった。


「……アナスタシア?」


震える声でそう呼んだ。


少女は小さく肩をすくめ、唇の端を上げた。


その笑みの癖までも、アナスタシアと同じだった。


「残念でした。あたしは、アンナよ。ユーサクさんの大好きなアナスタシアの娘」


その瞬間、頭の中が真っ白になった。



目の前に立っていたのは、アナスタシアではなく、その面影を受け継いだ娘・アンナでした。

次回、二十八年間の空白を埋める会話が静かに始まります。

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