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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で雨にも風にも負けないことを誓います!

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107/110

107.人生初のお仕事です! ②

「ぷぎゃっ!!」


 ドシン、と土浦が派手に転んだ。

 少し先まで、土浦が運んでいたトレイが転がっていく。


「コップ、使わなくてよかったですね」

「汚れか何かで滑りやすくなってたのだろうか……」

「いや、多分彼女の才能ですよ」

「萌揺、大丈夫ッ!!」

「凄い音」

「鈍い音がしましたね~」


 火之浦先輩は土浦の方へ駆け寄った。

 水無瀬先輩と新樹先輩は、微笑ましげに笑っていた。

 火之浦先輩に抱き起されて、土浦は真っ赤に染まった顔を下に向けている。


「ま、まあ、得手不得手ってあるから」

「そ、そうだね。御形君の言う通りだ」


 俺と山本さんで、土浦のフォロー。


「萌揺はどんな仕事を担当する?」

「ん~、可愛い服を着て客呼びをしてもらいましょ~」

「いいわね! 萌揺の可愛さなら、百人なんて朝飯前よ!」

「う、嬉しいけど、嫌ァ!!!」


 土浦の可愛い服か。

 メイド服とか、似合いそうだけどな。

 フリフリの。


「変な想像するな!」

「ぶふぁっ!」


 土浦の投げたトレーが顔に激突した。


「見た感じ、当日は問題なくできそうだから安心したよ」


 山本さんは土浦から目を逸らしながらそう言った。


「萌揺は彼がなんとかするんで」

「え、俺ですか?」

「それは安心だね」

「え、俺ですか??」

「次は何するの!」

「コーヒー作りもやったし、接客のやり方を教えたからね。あとは仕事に慣れてもらうだけだよ。ここで働いていけば、当日の動きなんて簡単だよ」

「今日は終了?」

「特にすることはないかな……?」

「じゃあ、ここでお茶をしていきたいわ!」

「もうお昼前ですから~」

「そうか。じゃあ、準備をしようかね!」

「メニュー表、いただいてもいいですか?」

「そうだね、はいどうぞ」


 山本さんからメニュー表を受けとる。

 青春同好会は一つのテーブルを囲んで休憩に入った。

 土浦はまだ顔が赤い。


「思ったより安いですね」


 コーヒーは二百円程度。

 お菓子も、パンケーキやクッキーがあるが、どれも高くて五百円だ。

 モーニングメニューやランチメニューなどもある。

 だがやはり、どれもワンコインで済む値段だ。


「色々と節約して、この値段にしているらしいよ」

「学生向けってことですか?」

「それもあるけど」

「どのお客さんにも、ここのお店を楽しんでほしいんでしょうね~」

「とてもやさしいお店ね! 私、大好きになったわ!」


 火之浦先輩もご満悦のようだ。


「じゃあ、私はこれ!」

「凍里ちゃんはおススメありますか~」

「私が前頼んだのは、これと」


 先輩三人は、メニュー表を囲んで楽しそうだ。

 一方、この女子生徒。


「ほら、土浦元気出せって」

「……るさい」

「誰にだって失敗はあるだろ」

「失敗しかしてないもん」

「次は成功するかもしれんだろ」

「それはあり得ないから……」

「案外、予想は外れるもんだって」

「うっさい」

「パンケーキでも食べようぜ」


 落ち込んで、手すら動かない土浦に代わって。

 パンケーキを二つ注文しておいた。


「大丈夫よ、萌揺! 私達がいるもの!」


 火之浦先輩の一言に、土浦はちょっと笑った。

 無理しているようにも見えるけど。

 俺から慰められるより、火之浦先輩の方が幾分マシだろう。


「私達もサポートするから」

「心配しないでくださいね~」

「お、お姉ちゃん……」


 土浦、感動している。

 先輩三人の献身に。

 俺には、どうやらしてくれないらしい。


「はあ」

「……何よ」

「いや別に。世話係も楽じゃないってな」

「世話された記憶なんかないからね!」

「へいへい」


 全員の注文が完了し、山本さんは調理に入った。

 数分後、先に全員分の飲み物が配られた。

 次に、クッキー。


「私が頼んだの! みんなで食べましょ!」


 クッキーを頼んだのは、火之浦先輩。

 そしてまた数分後、全員分のお菓子が配られる。

 俺と土浦のパンケーキ。

 コーヒーゼリーと、プリンだ。


「私、コーヒーゼリー」

「プリン、いただきま~す!」


 三時間ちょいの仕事を終えて、休憩タイムが始まった。


「仕事って、面白いわ!」


 火之浦先輩は快活にそう言った。


「私もそう思いますよ~」

「陽乃女が仕事に熱中している理由も、少しわかった」

「な~ら~、手伝ってくださいよ~、凍里ちゃん~」

「それは嫌。まだ高校生だし」

「私も手伝ってるのよ!」

「え、そうなんですか!?」


 新樹先輩の齟齬地に、火之浦先輩が携わっているのか。

 火之浦先輩、何をしてるんだ?


「前、モデルを依頼したんですよ~」

「すっごい疲れたけど、とてもいい経験になったわ!」

「も、モデルですか!?」


 火之浦先輩。

 言動は色々と問題があるかもしれないが。

 確かに、見た目はかなり素敵だ。

 初めて会った時、先輩の姿を見て時が止まったもんな。


「写真ありますよ~」

「……」

「無言で前のめりになるの、凄いね」

「ちょっと、恥ずかしいわねッ!」

「お姉ちゃんの写真、私も見たことない!!」


 新樹先輩のスマホ。

 画面には、とても綺麗なドレスを来た火之浦先輩がいた。

 赤を基調としたドレスを身に纏い、とびっきりの笑顔をこちらに向けている。

 カメラに向けたピースサインが、なんとも火之浦先輩らしい。


「いいですね」

「そ、そう?」

「後で写真全部送りますね~」

「あ、ありがとうございます」

「わ、私も私も!」

「…………」

「モデルは絶対しないからね」

「凍里ちゃんにも、絶対似合う服を用意しますから~」

「それでまえ、幼稚園の制服持ってきた」

「ぶッ!!」


 水無瀬先輩の幼稚園児姿か。

 似合いそうなのが、また面白い。


「今度御形にスクミズ着せよう」

「へ?」

「とっても面白そう!」

「ん?」

「撮影室を予約しておきますね~」

「本格的じゃん!!」


 水無瀬先輩の幼稚園児姿を笑っただけで、酷い仕打ちである。


「どう? 美味しいかい?」


 と、山本さんがこちらにやってくる。


「とても美味しいわ! 今度色んな人にも広めてみる!」

「それは嬉しい。ぜひお願いするよ」


 やめておいた方がいい、という助言をするのは無粋だろうか。


「コーヒーゼリーとかプリンも当日出すんですか?」

「一応、数量限定で考えているよ。流石に出店中に作るのは難しいからね」

「凍里、何とかならないの?」

「……ちょっと考えてみようかな」


 相当コーヒーゼリーが気に入っているのか。

 すでに、コーヒーゼリーのカップが空だった。

 美味しさを広めたいからか、いつもより前向きに見える。


「このプリンもお願いしますね~」

「パンケーキは、作れるの……ですか?」


 土浦が、初めて山本さんに質問した。


「パンケーキは焼くだけでいいからね」

「やった」


 土浦もこのパンケーキが気に入ったらしい。


「僕もパンケーキ大好きなので、嬉しいですね」

「ふふ。じゃあ、パンケーキの作り方も今度教えてあげようかな」

「ありがとうございます。ふわふわなパンケーキの作り方、知りたいです」

「今度私にも!!」

「……まだ残ってますけど」

「ははは。そういうことじゃないんじゃないかな」


 山本さんはそう言って、空いた食器を片付けて行った。


「じゃあ、教わったら、一緒に、作りますか?」

「一緒に? もちろんよ!!」


 火之浦先輩はさっきの写真と同じ笑顔をくれた。

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