↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/79

第七話 断る理由

予約票には、今日と同じ施術名が書かれていた。

その下に、複数の日付が並んでいる。

私は顔を上げた。

「来週だけではないんですね」

「はい。まとめて申し込んだので」

女性は予約票を折りかけ、手を止めた。

「今日やめたら、来週は受けてもいいんでしょうか」

私には、約束できなかった。

一週間あれば落ち着くのか。それまで何を使い、どんな変化があるのか。何も確かめないまま、日付だけで答えることはできない。

「来週のお肌の状態を見て、判断する必要があります」

女性は予約票へ目を落とした。

「まだ、こんなに残っているんです」

支払い済みの印があった。

受けなければ、払った分が無駄になる。

その気持ちは分かった。私も、不合格の用紙を鞄へ入れたばかりだった。


*


店へ戻り、翌日の空いている時間をご案内した。

女性は通信魔道具の予定表を開き、少し迷ってから予約した。

施術を受けるためではなく、まず相談するための時間。

説明すると、女性は何度かうなずいた。

それから、エデンへ連絡したいと言った。

私は席を外そうとしたが、女性に呼び止められた。

「ここで、電話してもいいですか」

窓際の椅子を勧めた。

女性は予約票を膝に置いて、魔道具を操作した。

来週の施術を延期したい。

その言葉を伝えたあと、返事を聞きながら、少しずつ背中を丸めていった。

「いえ、嫌になったわけでは……」

予約票の端が、指の間で曲がる。

「今日の研修で、肌を休めた方がいいと言われたので」

私は受付に立ったまま、その声を聞いていた。

女性がこちらを見る。

「リネさんという方です」

名前を伝えてから、しばらく黙った。

「……はい」

私は顔を上げた。

女性は返事を聞き終えると、魔道具を膝へ下ろした。

「何とおっしゃっていましたか?」

女性はすぐには答えなかった。

「リネさんは、今日の認定試験に落ちた方ですよねって」

鞄の中に、不合格の用紙がある。

私はうなずいた。

女性の指が、私の店の案内へ触れた。

「認定のない店で肌を傷めた場合は、責任を持てないそうです」

私は口を開いた。

まだ、この人の肌には触れていない。

その言葉が出かかったとき、女性が案内を予約票の下へ戻した。

「明日の予約、少し考えてもいいですか」

「……はい」

そう答えるしかなかった。

女性が帰ったあと、予約帳を開いた。

明日の欄に書いた名前を、私はまだ消せなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。