第四話 勧められたもの
瓶の裏へ目を移すと、使用方法の上に小さな紙が貼られていた。
〈毎日、朝晩のお手入れに〉
私は端を少し持ち上げた。その下にも文字があった。
〈週一回を目安に。肌の状態に合わせてご使用ください〉
「朝と夜、両方使っていらっしゃいますか?」
「うん。毎日続けないと意味がないって」
お客様は、瓶を指した。
「そこにも書いてあるでしょう?」
私は、貼られた紙と、その下の文字を見比べた。
同じ瓶なのに、使い方が違う。お客様は、上に貼られた方を信じて使っていた。
「こちらの紙の下に、元の使用方法があります」
瓶を渡すと、お客様は顔を近づけた。
「……週に一回?」
「お店で、別の使い方を勧める理由も聞かれましたか?」
「私の肌には必要だからって。それ以上は……」
お客様が顔を上げる。
「毎日使ったから、ひりひりしたの?」
「今の段階で、原因を一つには決められません。ただ、使う頻度は確認した方がいいと思います」
お客様は瓶を見つめた。
私は、貼られた紙の端を元へ戻した。勝手に剥がしてしまわなくてよかった。
この人が、説明を受けるために持って帰るものだ。
「今日は、この商材をお休みすることも含めて、お手入れを組み直しましょう」
「……うん。でも、買ったものを使わないのも、もったいなくて」
お客様は瓶を持ったまま、困ったように笑った。
「全部捨てると、今決めなくてもいいですよ。使い方を確認してから、考えましょう」
「そうか。捨てなきゃいけないのかと思った」
瓶が、鞄のそばへ置かれた。
私の説明にも不安はあるだろう。それでも、何を確かめればよいかは、一緒に考えられた。
「聞いてみようかな。エデンに」
私はうなずいた。
お客様は通信魔道具を取り出し、店から届いていた案内を開いた。
問い合わせ先を探して、指が止まる。
画面に添えられた印を、私も見ていた。
ディア・ラクリマで働いていた頃、接客マニュアルの表紙にあったものだった。
その下には、短い文字が並んでいた。
〈神殿ギルド認定店〉




