015 Vlog
コパンで買ったスマホ用ジンバルに載せたスマホが起動した。ウンジェは録画ボタンを押し、口を開いた。
「こんにちはー。ウンジェです。何でカメラをつけたかというと……退院して一人暮らししてるんですが、二年ぶりに意識が戻ると、おいしいものが多すぎて。配達を頼みすぎて、すごく太っちゃいました」
ダウンを着て歩きながらスマホに話しかけるウンジェを、何人かの通行人が眺めたが、ウンジェは気にしなかった。少し離れてついていくナビは、意外とYouTuberの素質があるのかもしれないと思った。
特に、恥ずかしいという概念を知らないように振る舞うのは、大きな才能だ。
〈意外とうまいね〉
「だからダイエットします。標準カメラだと、顔がくっそ汚く見えますが、実は肌きれいなんです。でも配達ばかり食べたらこうなりました。皆さんもチキンとトッポッキを食べすぎないで。でもシンジョントッポッキはおいしくて、食べないのは無理。揚げオムクは必ず二つ頼んでください」
〈うまいどころじゃないな……〉
ウンジェは話し始めると止まらなかった。おしゃべりで有名なパク・チャンホの再来のようなその姿に、ナビは本当に向いているのかもしれないと思った。
しゃべりながら歩き続け、ウンジェは近所の中浪川公園に着いた。
「食べ物の話で興奮しましたが、走ります。この前VANSで走ったら足が痛くて、初心者もランニングシューズがいいそうです。ASICSにしようと思ったら、くっそ高い。やめようと思ったけど、自分の体への投資ですよね? 買いました。ネットは並行輸入も多いって。偽物かは知らないけど……本物でしょう。違ったら悔しすぎる。日本だと安いらしいです。海外へ行ったことがないので、いつか日本でASICSを一足買うのが目標です、皆さん」
〈異世界旅行は海外に入らないのか?〉
三十分もの間、一度も休まず話し続けるウンジェに、ナビは心から感心した。
軽く体をほぐしてから、ウンジェはジンバルを持ったままゆっくり走り始めた。その間も口は休まなかった。
「ランニングを知らないので調べたんですが、急に太ると走るのが大変で。言葉も難しい。ミッドフットだとかゾーン二だとか。Apple Watchもないし、とりあえず走ればいいかと思ったら、スロージョギングがあるって。一キロ九分台? あたし向けじゃんって。それにしようと……はあ、はあ……」
ゆっくりとはいえ、しゃべりながら走るのは難しかった。だがウンジェは話すのをやめる代わりに、走るのをやめて歩き始めた。
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「二時間のフル動画……」
「どう?」
「これを編集しろと?」
「手伝うって言ったじゃん」
「毎回こんなに話すの?」
「それが面白いでしょ」
ナビは言葉を失った。よくしゃべるとは思ったが、限度というものがあった。
「編集を手伝うと言ったけど、編集地獄へ落ちるとは言ってない……」
「大好き、ナビ!」
「離れろ!!」
顔をすりつけてくるウンジェに猫パンチをしてから、ナビはパソコンの機能と通信プロトコルを確認した。
肉体にはWi-Fiのデータから情報を得る機能だけを開いており、実際にアプリが動いているわけではない。パソコンのソフトを使う方法を覚える必要があった。
いくつか遠隔操作を試し、ウンジェのパソコンを制御できると分かった。
「これならシャギーカットを使えばいい。それに、アプリを直接使うなら、音楽も考えないと」
「音楽を作る?」
「YouTubeでは他人の曲を使うと、著作権の問題や、収益がそちらへ行くことがあるから……」
ウンジェが即座に反応した。
「絶対駄目!!」
「ジュノなら作曲できる。ウォークウェイでアニメーションも作れるし、制作方法はいろいろあるね」
「何言ってるか、一つも分からない」
「こんなの大したことない。魔法さえ使えれば……」
「もう、ほとんど魔法が戻ったみたいだけど……」
ウンジェは嬉しくなってまた頬をすりつけたが、ナビが机へ逃げると、それ以上は追わずにInstagramを開いた。そこには、ウニョンとやり取りしたDMがあった。
――ウニョン、ウンジェだよ。
――ウンジェ!!! 本当に何があったの!! 死んだと思ってたんだよ!!
――とにかく戻ったじゃん。学校は順調?
――うん、今年三年生……ソヒとあなたの話をするたび泣いてた。昨日電話したら、生きてると知って大泣きしてたよ。
――本当に平気。元気だし、近いうちにソヒと一緒に会おう。
――絶対電話して。番号教えて。
――うん、010-……。
――ソヒにも教えるね。
ベッドに横になって友達とDMをやり取りするウンジェは、微妙で複雑な感情に包まれていた。ソ・ウンジェの記憶はかなり残っていたが、退院してからはマジアンとしての自我が強くなっていると感じていた。それなのに、過去の人々とつながると、ただソ・ウンジェの記憶を持つマジアンではなく、ソ・ウンジェ本人になったように感じることがあった。
「ナビ」
「何」
「何でウンジェって呼ぶの?」
「ここではその名で生きると決めたから」
「だから、何で決めたの?」
「君の顔にマジアンは似合わないから」
「顔を評価するな! くそ猫!」
投げつけられたスクイーズを軽く避け、ナビは机の上で窓のほうを向き、編集に集中した。ウンジェはナビが聞いているかどうかも気にせず、独り言のように訴えた。
「マジアンとしても大学には好奇心があった。でもソンヒ大学と聞いたときの強い愛着は、マジアンのものじゃなかった気がする。記憶でウニョンやソヒは分かるけど、今はそこまで会いたくない」
ナビが少し驚いて振り返った。
「でも会ったら、また泣くかもしれない」
「感情も保存されたデータなのかな?」
「理系の感動破壊、すごいね」
「大事な分析だから」
少し黙っていたウンジェが、突然、勢いよく起き上がった。
「じゃあ今日はVlog二本!! ソンヒ大学へ行こう!!」
「何? まだ編集が一割も終わってない!!」
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冬の大学は静かだった。休みで学生は少なく、時々通る職員と、やつれた大学院生くらいだった。
「というわけで大学へ行っています。電話のつもりでしたが、学生なのか、二年欠席して退学になったか、まったく分からないので、直接聞こうと。本館の教務課へ行けと……」
〈あのおしゃべりは、悪魔の才能か……〉
家から大学までは十分ほどだったが、キャンパスに入ってから本館までも、それなりに距離があった。その間も休みなく話し続けるウンジェに、ナビはまた感心した。
「ここからは撮影していいか分からないので切ります。後で説明します。一階一一三号室……」
本館に入ると、ウンジェは録画を止め、案内板で教務課の場所を探した。
――ギィ。
教務課の扉を開けると、職員が仕切り越しに顔を上げた。
「ご用件は?」
「合格後に事故に遭い、通えませんでした。登録がどうなっているかも分からなくて、復学できますか?」
「そうですか。少々お待ちください」
職員はカウンターまで来て、ウンジェに身分証の提示を求めた。
「お持ちですか? あれ……事故に遭ったソ・ウンジェさん?」
「はい、そうです」
「ニュースで見ました。うちの学生だったんですね……」
「ありがとうございます!」
「少々お待ちください」
ニュースの本人だと確認した職員は、学籍を照会し、ほどなく説明を始めた。
「入学は確定していて、学籍も有効です。事故が入学前だったようで、どなたかが病気で休学を申請していますね」
「休学中ですか?」
「はい、問題なく復学できます。一年生前期の授業料も完納してからの休学なので、復学届を書けばよさそうです」
「完納?」
「すでに払ってあるので、追加の納付は不要……ですが?」
話を聞いているうちに口角が勝手に上がっていくウンジェを見て、職員は戸惑った。
「やった!! 五百万ウォン!!」
〈丸儲け!!!〉
歓声が室内へ響き、テレパシーも同時に頭へ響いた。
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宙返りしながら読んでも、この小説はフィクションです。作者が、とある魔女に脅されたり洗脳されたりして彼女の物語を書いているわけでは絶対にないことを、あらかじめ明記しておきます。どうか、どなたも誤解なさらないでください。




