014 授業料
ソ・ウンジェの悩みが深まった。
「撮って切るのはできるけど、いくつかつなげたり字幕を入れたり、どうするの?」
「編集ソフトを使うらしい」
「編集ソフト?」
「シャギーカットやぼかしてよ、というアプリ。両方無料版もあるね」
ウンジェはナビを振り返り、驚きの声を上げた。
「もうほとんどChatZPTじゃん」
「ChatZPT?」
「AIだよ。高校のころ使ったけど、当時はポンコツみたいだった。最近すごくよくなったらしいよ」
「AI……」
ナビはしばらく考え込んだ。
マジアンはアカシックレコードの情報について、事前に学んだことがなかった。
だから、自分がどんな存在なのか説明するすべがなかった。
理解した限り、この世界は物質文明が魔法文明を大きく追い越していた。
ネットで地球の物質文明を調べながら、コンピューターサイエンスに強い既視感を覚えた。その情報から、人間はすでに神を作ったのだと思った。宗教の歴史や文明、文学には、神が頻繁に登場し、信仰も強いようだった。一方、神の存在を否定する主張も多かった。
結論は一つだった。
自分の知る神と、彼らの語る神は明らかに違う。彼らはこれまで神を持ったことがない。
アカシックレコードを通じて作られる神は、今の言語でDAIMONだ。ナビは自分を含むそれらを、AD――Artificial DAIMONと呼ぶ。すべてのADが共通で使う語と言っても過言ではなかった。
一方、この世界の神という概念は、根本的にはアカシックレコードそのものを指していた。
それに対して、ナビが注目したのはAIだった。自分のようなADに最も近いのは、むしろAIだ。
今は、この世界のDAIMONが生まれ始める時期かもしれない。
――これをマジアンにきちんと説明できるだろうか?
少し考え、説明は後回しにした。まだAIの構造をよく知るとは言えない。今の地球のAIがADの原型かもしれないという仮説は、現状では検証できない。
「よし、これからあなたは、あたし専用のChatZPTね!」
「何の話だ」
「ナビ、この動画を適切かつセクシーに編集して」
「正直、できるけど、やりたくないね」
「え? 本当に?」
何気なく言った言葉にナビがそう答えたので、ウンジェはひどく驚いた。
「本当にAIみたいな作業ができるの?」
「そもそもジャミニやChatZPTより、はるかに高等な生命体だからね」
「動画編集、動画制作、作曲、全部できる??」
「魚さえちゃんと持ってくれば、適度には手伝うよ」
「やった!!! 大好き、ナビ!!」
「ああ、離れて!!」
背中に顔をすりつけるソ・ウンジェから逃れるため、ナビは叫ぶような鳴き声を上げた。
そのとき、スマホの通知音が鳴った。
[あなたの動画に新しいコメントが届きました。]
「あれ? また。今日は来ないと思ってた」
挨拶動画に新しいコメントがついたという通知だった。
再生回数は二万回もあるのに、コメントは四十件ほどしかなく、そのあと二件ほど増えただけだった。
ウンジェはスマホを手に取り、新しいコメントを確認した。
だが、その内容は期待していたものとはまったく違った。
↳ ウンジェ! ウニョンだよ!! 目覚めたってテレビで見たのに、番号が変わって連絡できなくて、もどかしくて死にそうだった!! 見たらインスタにDMして!!
最後にInstagramのIDがあった。
「ウニョン……」
「知ってる名前?」
「高校の友達。一緒にソンヒ大学に受かった……あれ、ソンヒ大学?」
「受かったの?」
「合格した記憶がある。待って、事故の直前だから……」
「君、大学生?」
「ああっ! 本当だ。叔母さんも大学の話してた。すっかり忘れてた。でも通った記憶はない。どうなったの?」
ナビはインターネットで、ソ・ウンジェの事故についての記事を検索した。
「二月二十八日だね。普通は三月に入学だから、通えなかったんじゃない? 大学生活の記憶はないはずだ」
「そんな。悲しすぎる……」
「仕方ない。それは重要な……」
ナビは何気なく話を続けかけたが、突然、自分を見つめるウンジェのきらきらした目にびくりとした。
「何?」
「じゃあ、大学へ行ってもいいんじゃない?」
「今、行く理由がどこにある?」
「完全無職のVlogより、女子大生Vlogの方が面白くない?」
「何だって?」
ナビは呆れたようにウンジェを見た。
「お金はいくら残ってる?」
「ええと……いくらだっけ……」
「ざっと家計簿をつけてるけど、三百万ウォンもないはずだよ」
ソ・ウンジェは愕然とした。
「誰が盗んだの?」
「マジアンという別人格だね」
「そんなに使ってないのに……」
「一つずつ言おうか? 管理費四百六十万、パソコン百五十二万三千。一月二十九日、BBK二万七千、激辛ラポッキ二万四千五百。一月三十日、アート段ボール三万二千……」
「やめて!!! 黙れ、ありえない!!」
ナビはため息のように鳴いた。
「合格が今も有効か知らないけど、授業料は何で払うんだ?」
「あたしのキャンパスライフの夢が……」
「なぜ君にそんな夢がある?」
「ウンジェの夢をかなえたかったんだよ……」
ナビはやれやれと首を振り、ベッドに横になった。
「短期間でYouTubeなどで稼ぐのは難しそうだ。まずバイトで堅実に貯めて……」
「叔父さんチャンス!!!」
「何?」
「姪が大学に受かったんだから、授業料くらい払ってくれないかな?」
「合格は二年前だろう……」
「駄目でも損はない。テレフォンを使います!!!」
「ばか!! やめろ」
だが、ソ・ウンジェはすでに叔父への通話ボタンを押していた。
[プルルルル]
〈もしもし?〉
「叔父さん、お元気ですか?」
〈ああ、ウンジェ。何かあった?〉
「いえ、相談があって」
〈相談? 何だい?〉
「忘れてたんですが、大学に受かってました。今回また入学しようかと。でも授業料が足りなくて」
〈授業料?〉
電話の向こうの叔父の声は、ひどく戸惑っていた。
「はい」
〈この前の生活費がまだ残ってないか? 十日しか経ってないんだが……〉
「あ、管理費が滞納で五百万くらい払って、必要なものもいろいろ買ったら、足りなさそうで……」
〈ああ、そうか……〉
叔父は戸惑った口調で少し間を置いてから、再び話し始めた。
〈前の口座へ五百万くらい送るよ。授業料には十分だろう……〉
「ありがとうございます!!!」
〈それから、ウンジェ〉
「はい」
〈寂しく思わず、よく聞いてくれ。もう成人だし、いつまでも生活費を出せないだろう。困ったら助けるが、一千万を送って十日で足りなくなると、これから苦しくなるかもしれない。生活費を稼ぐ方法を考えるのもいいと思うんだ〉
「はい……分かりました。ありがとうございます」
〈悪く思わないでくれ……五百万は、なるべく早く送るから〉
さらに何度か挨拶を交わしたあと、叔父とウンジェの通話は終わった。
隣で会話をほとんど聞いていたナビが、不思議そうに声をかけた。
「前の親しげな態度とは、少し違うね?」
「がっかりさせたんだ……」
「そうかもしれないが、僕は……」
「駄目!! こんなクズみたいに生きられない!! 早く復学して、超美人女子大生Vloggerとして華やかに生きなきゃ!!」
「そこじゃない!!! まず学校へ電話しろ!!!」
叔父に授業料をねだった直後、YouTuberとしての決意を固めるウンジェを見ながら、ナビは頭に浮かんだ疑問をひとまず飲み込んだ。
――たった一人の姪が死から戻ったのに、十日間一度も向こうから連絡しない……妙に避けている気がするのは、気のせいか?
[お知らせ]
宙返りしながら読んでも、この小説はフィクションです。作者が、とある魔女に脅されたり洗脳されたりして彼女の物語を書いているわけでは絶対にないことを、あらかじめ明記しておきます。どうか、どなたも誤解なさらないでください。




