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めでたしと転校生 2/1

ようやく教室に辿り着くと、五月女が「よっ、色男!」と声を掛けてくる。

ニヤニヤしやがって。


「いや~、それにしても女好きのお前が男に鞍替えしてくれてよかったよ、今朝もモテモテじゃねーか」

「うるさい黙れ」

「おかげで俺達も平和に暮らせる、あーよかったよかった」

「なんでだよ?」

「そりゃお前、天ヶ瀬とまとまってくれたおかげでこっちにチャンスが巡ってくるってもんだ」

「俺とお前達の事情は関係ないだろ」

「ぐっ!」


俺は、もし理央が他の誰かを好きだったとしても諦めなかった。

流石に相手が女の子なら断念したかもしれないが。

でも実は理央こそがその女の子で、しかも俺を好きになってくれた。


「気になる子がいるなら自分を磨いてアタックしろ、努力が実るかどうかはお前次第じゃないか」

「せ、正論で詰めるなよ!」

「これはアドバイスだ」


渋い顔をする五月女と、近くで話を聞いていたらしい野郎どもまで顔を顰めて舌打ちする。

事実だろうが、女の子はその辺りシビアだぞ?

好かれたかったら努力あるのみ、あとは当たって砕けろだ。


「まあ、五月女は気が利くし、顔だって悪くないんだから、ちょっと頑張ればすぐ好かれるはずだ」

「なっ!?」

「頑張れよ、お前ならきっと大丈夫だ」

「そっ、そうかよ?」


今度は赤くなって、照れたのか?

やれやれと思っていると、背後からまた「流石義兄上」と鬱陶しい声が聞こえてくる。


「斯様な情けを下々に掛けられるとは、漢気が溢れておられる」

「うるさいんだよ、話しかけてくるな、さっさと自分の席に行け」


シッシッと追い払う。

磐梯は犬みたいに鼻を鳴らしてようやく向こうへ行った。二度と寄ってくるな。


「あ、あの、おはよう健太郎君、天ヶ瀬君も、おはよう」


おっ、愛原。

今日も小動物みたいで可愛いな。


「おはよ、騒がしくしてゴメン」

「う、ううん、いいの、それよりこれ」


愛原は俺と理央に、自分の携帯端末の画面を見せる。

動画だ。

―――これは、文化祭でやった薫のライブ映像!


「運営委員がね、撮ってたんだって、画質がいいからコピーしてもらったの」

「おお!」

「素敵だね、流石は藤峰君だ」

「うん、薫ちゃん、すごく可愛いよね」


愛原は目をキラキラと輝かせる。


「あのね、私、薫ちゃんのライブを見て泣いちゃって、それで思ったの」

「なにを?」

「薫ちゃん、留学してもっと素敵になっていたから、私も頑張るんだって、薫ちゃんに追いつけるくらいに」


同感だ。

あの日、薫の眩しさに中てられた奴は、俺を含めてきっと大勢いる。

その輝きは決して手の届かないものなんかじゃない、努力すればいつか掴める、薫は俺達に証明してみせてくれた。

だから負けられないって思ったんだ。

あいつの王子様を名乗り続けるためにも、俺ももっともっと男を磨かなければ!


「愛原、見せてくれてサンキュ」

「う、うん」

「僕からも礼を」

「いいの、それじゃ、またね」


自分の席へ戻っていく愛原に、磐梯がこそっと近付こうとする。


「磐梯、ステイ!」


怒鳴って阻止すると、愛原も磐梯の野郎もビクッと体を震わせて、磐梯はすごすごと椅子に座りなおした。

あいつはマジで犬か。

それにしたって可愛げが無さ過ぎる。


「困ったものだね」


隣で理央も呆れている。

―――間もなく担任が教室に入ってきて、俺達もそれぞれ席に着いた。


忙しない毎日だ。

いつまでこの状態が続くのか、はあ、悩ましい。


午前の授業が終わって、昼休みになる。

磐梯の野郎は相変わらず午前中に下校したが、おかげでようやく少し静かになった。

やれやれだな。


「健太郎」


今日は理央から先に声を掛けてくれたぞ!


「一緒に昼を取ろう」

「おう!」


今は毎日一緒に食べてるんだよな。

その手に持っているのは、さっき天馬さんが届けていた弁当だな?

ちりめんの風呂敷に包まれた重箱だろうデカい包みだ。


「持つよ、行こうぜ」

「うん」


理央から包みを預かり、反対側の空いている手で理央の手を握る。

驚いて俺を見上げた理央は、少し戸惑った様子で隣を歩く。


「健太郎、その」

「ん?」

「手を」

「あ、もしかして恥ずかしいか?」

「いや、そうではなく、君は構わないのか?」


傍目には男同士で手を繋いでいるように思われるから、気にしているのか。


「俺は別に」

「しかし、おかしな噂が立つかもしれない」

「それを言うなら理央だってそうだろ」

「僕は問題ない、そういったことはうちの者が対処するから」


対処って何をどうするんだろう。

ちょっと怖い。


「だが、君には自衛の手段がない」

「俺は平気だって、むしろ見せ付けているんだ」

「何故?」

「理央が魅力的だから、俺のだってアピールしてる」


理央は急に口ごもり、頬をうっすら赤く染める。

可愛い。

それに理央の手、柔らかくてスベスベして気持ちいいんだよな。

今言ったことは半分くらい建前で、あっ、魅力的っていう点に関しては本音だけどな!

ただ手を繋ぎたい。

それだけ、周りなんか知るもんか、言いたい奴は勝手に言えばいい。

突き詰めれば妬み僻みの類だからな、どうってことないぜ。

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