後夜祭と二人 3/3
「健太郎」
花火がまた辺りを照らす。
「幻滅したかい?」
「するもんか!」
咄嗟に大声で返してしまった。
理央は女の子だった。
可愛い。
俺は今、完全に正気を失っている。
だって女の子だったんだ! うわーいやった! バンザーイ!!
伝えるぞ、この想いを!
勿論男でも構わなかったが、女の子なら何の障害もない! 好きだ!
改めて伝えよう。
どうか受け止めてくれ、俺と恋人になってくれ! 頼む!!
「天ヶ瀬 理央さんッ」
勢いよく頭を下げる!
「好きです! どうか俺と付き合ってください!」
絶対幸せにするから! 死んでも浮気はしないから! だからお願いしますッ、俺のものになってください!!
ギュッと目を瞑って返事を待つ。
心臓と花火の音を聞いていると、そこにクスクスと笑い声が混ざった。
恐る恐る目を開けて顔を上げる。
理央が笑っている。
「こちらこそ」
花火が綺麗な姿を照らす。
「どうぞよろしく、嬉しいよ、健太郎」
「ッあ!」
あ、あ、あッ!
やった! やったぞ!!
やったぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!
「理央!」
「なんだい?」
「ほ、本当に? 俺と付き合ってくれるのか?」
「ああ」
「理央も、俺が好き?」
「好きだよ、ずっと君だけ見詰めていた」
「ッ理央!」
「こんな僕を受け入れてくれて有難う、健太郎」
「理央ぉッ!!」
形振り構わず抱きしめる!
柔らかくて細い、ああ、本当に女の子なんだな。
今更だろうが調子が良かろうが、この事実を俺は素直に感謝しよう。
理央が男でもよかった。
だけど女の子なら、その、生涯を共にすることだって可能かもしれない。
理央は天ヶ瀬財閥の跡取りだから、男なら俺はどれだけ頑張っても傍にいることしか出来なかった。
でも女の子なら、大それた話だが、家族にだってなれるかもしれない。
男でもそれは可能かもしれないけれど、そうじゃないんだ、俺は、その、本気だから。
理央に相応しいと認められるかどうかまだ分からない、だけどこの温もりを手放す気はもう無い。
俺のものだ。
一生大事にする。
理央、愛してる。
俺を好きになってくれて本当に有難う。
「健太郎」
腕の中から呼ぶ声に、目を合わせる。
そのまなざしの引力に引き寄せられるまま―――そっと唇を重ねた。
視界の端で煌めく七色の光。
あのジンクス、きっと本当になるぞ、理央。
これからもずっと一緒だ。
「ん、んん」
理央の唇は甘くて柔らかい。
ゆっくり距離を取って見詰め合うと、胸がいっぱいになり過ぎて苦しい。
「理央」
「健太郎」
鼻先が擦れて、二人で笑う。
幸せだ。
他に何もいらない、ここに、俺の腕の中に理央さえいてくれたらいい。
「あのさ」
「なんだい」
「これからは、その、恋人として改めてよろしく」
「こちらこそ」
もう一度キスをすると、理央は俺の胸元に柔らかく体を預ける。
その髪を撫でて、校庭に上がる花火を眺めた。
―――綺麗だな。
「なあ、理央」
「ん?」
「俺さ、理央のこと好き、本当に好き、愛してる」
「フフッ、僕もだよ」
「ちゃんと言ってくれよ」
理央はまた笑って俺を見上げる。
「健太郎、愛してる」
うん。
有難う、幸せだ。
今この時を、この光景を、理央の言葉を、俺は決して忘れない。
そしてきっと花火を見るたび思い出す。
腕の中の愛しい温もりと、この胸の高鳴りを、何度でも。




