表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

後夜祭と二人 3/2

「なあ、理央」

「ん?」


振り返って俺を見上げるまなざし。

星みたいだ。

見惚れて動けなくなる。


「あの、さ」

「なんだい?」


後夜祭のジンクス、それは―――


「俺、前はお前のこと、その、いけ好かない奴だと思っていたんだ」

「へえ?」

「だって俺よりモテるし、ファンクラブまであるし、いつも女の子を侍らせて、調子に乗ってると思った」

「ふふ、なるほど」


知らなかったんだ。

天ヶ瀬 理央が本当はどういう奴なのか。

たいして興味もなかった、だって俺は、男なんか別に好きじゃないから。


「だけど薫とあんなことがあって、お前も何故か一緒にループを繰り返して」


今も理由は分からないままだが、どうだっていい。

いつも俺を支えて、励ましてくれた、苦しい場面を一緒に乗り越えてくれた。

だから俺は理央がいい。

男でも理央が好きだ。


「迷惑だったかもしれないが、俺にとって、お前だけが唯一の拠り所だった、本当に感謝してる」

「そうか」


優しく微笑む理央にいつも救われている。

俺はもう何度も、何度も、理央に助けられている。


「有難う」


改めて深く頭を下げる。


「いいさ、顔を上げてくれ、健太郎」


体を起こすと、理央は何となくからかうように少し笑う。


「随分と殊勝じゃないか、急にどうした」

「いや、今回紅薔薇王(クリムゾン・キング)になれたのも、理央のおかげだと思ってさ」

「君の努力の賜物だよ」

「だとしても、理央がいてくれたからだ」


グッと手を握る。

心臓の音が早過ぎてうるさい、喉も渇いて、手汗だって酷い。

言おう。

伝えるんだ、この気持ちを。


「理央」


不意に外からドン、ドン、と破裂音が響く。

花火だ。

いよいよ後夜祭もクライマックス、鮮やかな光が夜空を彩っている。

―――気合を入れろ、健太郎。


「俺は」


理央の瞳が潤んで見える。

何かを期待されているような、そんな気配を感じる。

俺の勘違いかもしれない、でも、でも!


今のこの関係を壊したくない。

だけど、俺は―――


「お前が、好きだ」


告げた直後に喉がぐっと詰まる。

苦しい。

理央、答えてくれ。

お前は俺の気持ちをどう受け取ったのか。

知りたい、早く。

俺をどう思っているか教えてくれ。


校庭ではドン、ドンと、花火が夜空を彩り続けている。

この花火が上がっている間に告白をして、結ばれたカップルは永遠に幸せな関係でいられる。

それが後夜祭のジンクスだ。

前に聞いた時は夢のある話だなと思いつつ、正直しょうもないと軽く見ていた。

でも今は、それすらあてにするほど必死だ。

ずっと理央と一緒にいたい。

結ばれなくても、せめて幸せな関係でいられたら、そんな一縷の望みを賭けた。


格好付かないよな。

フラれる前提で捨て身のアタックなんて。

どうか茶化したり、ひいたりしないでくれ。

でも理央はそんな奴じゃない、ただ困らせるだけかもしれない、だとしたらごめん。


「そうか」


理央は静かに言う。


「では僕も、君に秘密を打ち明けなくてはならない」

「えっ?」

「真実を明かさず、君が告げてくれた想いに答えるのはフェアじゃない」


秘密?

なんだ急に?


「健太郎、僕はね」


校庭でひときわ大きな花火が上がり、用具室内を明るく照らす。


「実はその、女なんだ」

「は」


―――はい?


「諸事情で表向きの性別を偽っているが、男ではない、生物学的性別における女だよ」


お、女?

理央が?


「君は信頼のおける奴だし、このことを他言しないだろうから打ち明けるが」

「ちょ、ちょっと待て!」

「うん」


頭が、混乱する。

理央が女? 女の子? えっ本当に?

女の子なのか? 理央が?

そりゃ女の子だったらいいなーと思ったり、女の子みたいだなと思ったりしたことは何度もあるが、本当に女の子?

理央が?

女の子、なのか?


「お、女の子?」

「そうだよ」


改めてじっくりと理央を見る。

可愛い。

もの凄く可愛い、とんでもなく可愛い、最高に可愛い、どこからどう見ても可愛い、全方位可愛い!

顔も、髪も、体も、腕も足も目も鼻も口も肩も胸も腰も脚も全部全部可愛いッ、可愛いッ!!

この可愛すぎる理央が、女の子?

そうか、そうだよな、やっぱりそうか、当然だよな。

確かに薫みたいに絶世の美少女な男はいるが、理央もその枠かと思っていた。

でも違った、理央は本当に女の子だった。

女の子だった。

理央が、女の子。

この可愛い理央が、美人で綺麗で可愛すぎる理央が女の子なのか! そうか!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ