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紅薔薇と転校生 4

「あっ、ケン!」

「遂にロワ・ド・クリムゾンのご登場ね!」


講堂に辿り着くと、出入り口の前で朝稲と杉本が手を振った。

傍には霜月もいる。


「健太郎君、お疲れ様、待ってたよ」

「遅いぞ! これが王様出勤ってヤツ?」

「もう、リン」

「け、健太郎君、おめでとう、って、まだ、ちょっと早かったね」


虹川、清野、愛原。

やっぱり先に講堂へ来ていたんだな。


「いよっ、キング! おめでとう!」

「バカリュウ、まだ早ぇよ」

「健太郎、おめでとう」

「皆が君を待っているよ、さあ、中へ」

「よかったな、健太郎」


常盤兄弟に睦月、緒方と飛鳥もいる。


「健太郎さん」


講堂のドア脇に佇む星野が、微笑んで俺を促した。


「さあ、どうぞ、貴方を待ち侘びる数多の方々が、期待に胸を膨らませておりますよ」


少し緊張する。

そっとドアを開いて、中へ一歩―――踏み出した直後に眩しいライトが俺を照らす!

同時にうわっと沸き起こる大歓声!

あちこちからキング! キング! と呼ぶ声が繰り返し響く!


講堂は満席だ、ここにいる全員が俺を紅薔薇王に選んでくれたのか?

そして特別審査員に選ばれた皆も、きっと一票で百票分の票を俺に投じてくれた。

皆が俺を認めてくれたんだ。


運営委員の腕章をつけた奴が小走りで傍に来て、俺に舞台へ上がるよう促す。

ここまで一緒に来てくれた理央も「行っておいで」と背中を押した。

俺は、前を向いてまっすぐ、一歩、一歩と踏みしめながら舞台へ向かう。

心臓の音がうるさいくらい胸で響いている。

もう目前に迫ったあの輝く舞台に、俺は紅薔薇王として、遂に迎え入れられようとしている。


この頭上に抱くのか。

勝利の証、王の宝冠を。


―――長かった。

苦しくて、痛くて、やりきれなかったこともあった。

三度も殺されたしな。

でも俺は勝った。

そして遂に掴むんだ、その証を。

なあ理央、見ていてくれるか?

薫にも早く伝えたい、お前が太鼓判を押してくれたとおり、俺は紅薔薇王に選ばれたって。


舞台へ上がると、不意に辺りがしんと静まり返る。

何かハラハラと降ってきた。

赤いバラの花びらだ。


舞台の向こう側にパッと光があたり、去年の紅薔薇王の姿が照らし出される。

王はゆっくりこっちへ近づいてくる。

俺の傍まで来ると、羽織っている緋のマントを外し、俺の肩に掛けた。

そして頭上に抱く冠を両手でしずしずと下ろす。

俺はおもむろに王の前に跪き―――瞑目して、その時を待つ。


頭上にずしりと覚える名誉の重み。

紅薔薇の名を冠する王の証が、今、俺に授けられた。


「おめでとう、君が次の紅薔薇王だ」


直後に壮大な音楽が流れ出し、講堂は再び喝采の嵐に包まれる!

有難う、皆! 有難うッ!

選ばれたんだ、この俺が、遂に紅薔薇王に!

ガウンも宝冠も、夢でも幻でもない、全部本物で、俺は紅薔薇王になった!

勝った!

勝ったんだ、磐梯との勝負に、本当の意味で!

は、ははッ! なんだか少し視界が濁る、泣くなんて格好悪い。

王に涙は似合わないだろ。


やっぱり、嬉しいもんだな。

感無量だ。

称えてくれる皆へ大きく手を振り返す。

講堂の入り口に集まっている特別審査員の皆も、俺に惜しみない拍手を贈ってくれる。

そして―――理央。

本当に有難う。

お前がいたから今日を迎えられた、心から感謝している。


皆も有難う!

紅薔薇王バンザイ! 文化祭バンザイ! 今、最高の気分だ!


突然ジャーン! と講堂中にデカい音が鳴り響く!

な、なんだ?

まだ何かあるのか?

―――もしや、紅薔薇王になった俺のスピーチ?

ヤバい、何も考えていない。

何を言えばいい? えーっと、えーっと。


「ケンちゃーん!」


舞台の向こう側にパッとスポットライトが当たる。

え?

あれは、まさか―――薫?


手を振って走ってきた薫は、そのまま俺の胸に勢いよく飛び込む!


「っだ! 痛ぇッ!」

「あっ、ごめんねケンちゃん! そっか、今怪我してたんだっけ、つい嬉しくって」

「いてて、か、薫? お前なんでここに」

「えへへ」


薫は悪戯っぽく笑う。


「会いたくなって、来ちゃった」

「来ちゃった?」

「ケンちゃん、紅薔薇王おめでとう、やっぱり君が選ばれたね!」


パッと俺から離れると、そのまま薫は、今度は講堂の客席へ向けて大きく手を振る。


「皆も応援ありがとう! ケンちゃんが紅薔薇王になれたのは、皆のおかげだよ!」


途端にあちこちから「薫ちゃん!」「薫ちゃーんッ!」と声が飛び交い始めた。

微笑み返す薫の姿は眩しい、まさに天使だ。

留学して更に可愛さに磨きがかかったんじゃないか? オーラと言うか存在感が半端ない、圧倒的だ。

問答無用で屈服せざるを得ない愛らしさ、最早可愛さの暴力! 幼馴染の俺ですら若干気後れしてしまう。


「今日は、そんな大好きな私のケンちゃんを、応援しに来ました!」


振り返った薫は俺にパチンとウィンクする。

そして小声で「君のお姫様として、ね?」と囁いて笑う。

途端にあちこちからブーイングが上がった。

ズルいぞ、浮気者って、それはどういう意味だ、俺は浮気なんかしない!

この胸に想うのはいつだってたった一人、俺の愛しの理央だけだ!


「みんなーっ! 改めて、久しぶりだね!」


また薫が客席へ呼びかけると、講堂が揺れるほどの大歓声が応える。

な、なんか、俺の時より盛り上がってないか?

と言うか今の主役は俺のはずなんだが。


「私に会いたかった?」


ウオオーッと返ってくる歓喜と興奮の入り混じった声!

あちこちで泣きだしている奴もいる、マジかよ。


「私もだよ! 皆に会いたかった!」


薫ちゃんッ! 薫ちゃーんッ! と、各所から上がる薫コールに、薫も大きく手を振り返す。

また素早く駆け寄ってきた運営委員の奴が薫にマイクを差し出した。


マイク?

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