表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/74

紅薔薇と転校生 3

「よし、そうと決まれば!」


委員長がパァンと景気よく手を打つ!


「本日、怪我のため戦力にならないだろう大磯君には、客寄せとしてクラスの売り上げに貢献してもらおうじゃないか!」

「―――へ?」

「おお、いいなそれ!」


ま、待て、なんだその流れは。


「あっ、天ヶ瀬君もすぐ執事の衣装に着替えてね? 大磯君と二人で客寄せ、じゃなかった、店内にいるだけでいいから」

「健太郎もメイド服着るくらいはできるだろ、立って歩けるんだし」

「そうだな」

「そのまま受賞もアリかもな、逆転メイド喫茶のいい宣伝になりそうだ」

「おっ、確かに! おい健太郎、俺達に心配かけたって反省しているなら、まさか嫌とは言わないよな?」

「目標額達成できたらぁ、担任ちゃんが焼き肉食べ放題に連れて行ってくれるんだって! だから協力よろしくぅ!」

「よーし、俺達のキングの力で、ガッツリ稼ぐぞ!」


おーッ! って全員揃ってマジか、ここは修羅のクラスだったのか。

うわっ、やめろ放せ! 屈強な男どもが寄ってたかって、俺をどこへ連れて行くつもりだ!

ああ、理央! 理央もクラスの女子たちにさらわれていく! 理央ッ、理央ーッ!


まだろくに傷の癒えていない、包帯まみれの俺を連れ去った男たちは、運動部の部室で無理やり着衣を剥ぎ取り、そして―――アッー!!


「大磯、やっぱり似合わねえな」

「包帯だらけだし、病みメイドってことで一定の需要が見込めるんじゃないか?」

「むしろ痛ましいな、俺、ちょっと弱い者いじめしている気分になってきた」

「俺も、多少の罪悪感を感じている」


ううっ、酷い、あんまりだ。

フリフリのメイド服を着せられ、床に座り込んだままクスンと鼻を啜る。

乱暴された、お嫁に行けない。

せめて褒めろよ、怪我人相手に無茶しやがって、この外道どもめ。


「ほら立て大磯、教室戻るぞ」

「いやっ! 触らないで鬼畜! 変態!」

「うるせえなあ、仕方ない、担いで運ぶぞ」

「大磯、怪我してるから一応丁重にな」

「アイアイサー!」

「やめてぇッ!」


男たちはまた俺をエッホ、エッホと教室まで運ぶ。

そして―――チェキ用に飾りつけられた椅子に座らせた。

ううっ! 周りからの色モノを見る視線がキツい!

虹川がそっと傍に寄ってきて「大丈夫?」と気遣ってくれる。

ああ、優しい、このクラスに残された最後の良心。


「アッハハ! 健太郎、マジでメイド服似合わないね! ちょっとは私を見習ったら?」


おのれ清野!

でも、泣き止んでくれてよかった。

やっぱり清野は笑顔がいい、たとえそれが俺を嘲る笑みであっても可愛いよ。


「怪我、痛そう」


愛原も心配してくれる、優しい。

虹川と二人で「無理しなくていいからね」とか「辛くなったら言ってね?」なんて労わってくれて、ううっ!


「男なんだから辛抱しろ、客寄せしっかり頑張れよ!」


清野めぇ、お前こそ虹川と愛原を見習え。

他の皆も女子は総じて俺に優しいが、野郎どもは軒並み笑ったりバカにしたりしてくれる。

やっぱり男はダメだな、どいつもクソだ。

全員まとめて地獄に堕ちろ。


「やあ」


不意に辺りがざわめき、俺も振り返って―――言葉を失う。

理央!

し、し、執事服ぅッ! なんて格好いいんだ、眩しいッ!

ぐうッ、心臓に悪いッ!

女の子のみならず野郎どもまで釘付けになって、うわあぁッ! マジでッ、マジで似合ってるぅッ!


「ハハッ、なんだい健太郎、その恰好」


きゃっ! そうだった、恥ずかしい!


「み、見ないでぇッ!」

「おや、随分と可愛らしいじゃないか、どれ―――その赤く染まった顔を僕に見せておくれ?」

「やめてッ、恥ずかしいッ」

「大丈夫だよ、今の君も、いつもの君と変わらず素敵さ」


傍に来た理央が、涙目でスカートの端を握り締めながら俯く俺の顎にそっと指を添える。

そのままくいっと上を向かされ、色素の薄い目と目が合った。

はわぁ、理央、今日も綺麗だ。

ドキドキする俺の周りでシャッターを切る音がいくつも鳴り響く。


「お客様ご来店でーす!」

「チェキは一枚五百円! お一人様五枚までとさせていただいております!」

「店内飲食必須です、まずはお席にご案内させていただきまーす!」


なんか急に教室内が賑やかになり始めたな。

理央はやけにノリノリで、周りの注文に応えて俺を弄り回す。

あっやめて! そんなことまで、らめぇッ!

俺にウサギやネコの耳をつけたり、可愛いポーズをとらせたり、指でハートを作らせたりさせないでくれぇ!


「ほら健太郎、笑って、もっと愛らしく」

「う、えへ♡」

「いい子だね、では次は首を傾げて、軽く肩を竦めてみようか」

「こ、こう?」

「お利口だ、とてもいいよ健太郎、君は本当に可愛い」


―――何をやらされているんだろう。

これは、どういう状況だ?

お触り禁止のはずなのに、俺にはいつのまにか子供たちが群がり、年配の方は頭を撫でてアメやまんじゅうをくれる。

理央の方は女性客が集まって、その向こうには男の客までッ、んぎぃッ! 散れッ! 散れッ! 男はチェキ一枚五百万円だ! 金だけ払ってサッサと失せろ!


大盛況の店内に、不意にアナウンスが響く。

今年の紅薔薇王が遂に決定したそうだ!

クラスの皆が待ってましたとばかりに俺の元へ集まってくる。


「ほらケン! 行ってこいよ、お前がキングだ!」

「おめでとう、大磯君!」

「大磯君、戴冠式が終わったらすぐ戻るように、まだまだ客寄せ頑張ってもらうよ!」

「箔がついて更に売り上げアップ間違いなしだな!」

「いってらっしゃい、健太郎君!」


虹川と清野、愛原の姿が見当たらない。

特別審査員として先に講堂へ行ったのか。

でも、本当に俺は―――選ばれたのか?

今度こそ本当に?

いざ足を運んでみたら、実は他の人でした、なんてことになったりしないか?


「健太郎」


不意に理央が俺の手を取り、椅子から立つよう促す。


「行こう」

「でも」

「大丈夫、僕も君の雄姿を見届けよう、さあ、今度こそ―――栄冠はその頭上に」


鼓動が高鳴る。

本当にこの俺が、今年の紅薔薇王なのか?

三度も殺され、足掻き続けたあの日々が報われる?


理央に手を引かれるまま教室を出ると、講堂を目指して歩く。

なんだか足元がフワフワして、こんな気分は初めてだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ