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対決と転校生 2/後

「貴様ァッ!」


向かってくる刃の側面を殴る!

パキンッと音がして刃が砕けた! 同時に磐梯の野郎はチッと舌打ちをする。

更に腹へ一発!

捻った刃に脇腹を切り裂かれる!

ぐッ、くそッ! 今折っただろ! なんで元に戻ってるんだよ!

飛び退き間合いを取り、また踏み込んで一発!

薙ぎ払った刃を避けはしたが、曲刀の柄で頭をガツンとやられた!

ぐうッ!

ふらついた直後に追撃がッ、ギリギリ避けッ、くそ! 少し間に合わなかった!

二の腕の辺りを斬られた。

痛い、痛い、痛い。

もうどこが痛いのか、なんで痛いのか、いちいち構っていられないほどそこらじゅう傷だらけだ。

でもそれは奴も同じ。

かなりダメージが入っている、母さんの手甲が俺に力を貸してくれている。


態勢を整えて磐梯の間合いに飛び込み、隙をついて下から顎をひっかけ殴る!

仰け反った体に蹴りを入れ、飛び退く間際でまた足を斬られた!


「ッチ!」


距離を取り構え直す。

そろそろ決着をつけないとな。

お互い決闘に相応しい、いい姿になったじゃないか。

見ていてくれるか理央?

野蛮ですまないが、こうなってみて今は一番いい解決法だったんじゃないかって気がしているよ。

まあ、俺も野郎も所詮はバカって話だ。


「俺は、貴様を認めん」


磐梯は血の混じった唾を吐き捨て、ぎらつく目で俺を睨む。


「何故貴様なのだ、理央は何ゆえ貴様を選んだ」

「それは理央に訊けよ」

「俺の方がよほど相応しい、俺は貴様より断然優れている!」

「はっ! 事実を認めようとせず、理由を相手に押し付けて、挙句思い込みで突っ走るような奴はなあ、女の子だけじゃなく、男からも嫌われるんだよ!」

「俺は嫌われてなどいない! 俺は正しい!」

「じゃあその正しさは一体誰が証明してくれる?」

「俺自身だ! 俺は! 俺が正しく、有能であることを、誰よりも理解している!」

「お前みたいな勘違い野郎をなんて言うか教えてやるよ」


拳を構え「狂人、って呼ぶんだ!」と怒鳴る。

吠えて突っ込んでくる磐梯を迎え撃つ!


やり合ってみて分かったが、こいつの太刀筋は真っ直ぐで綺麗だ。

多分、素の磐梯もそんな奴なんだろう。

だが今それは関係ない。

俺が勝つか、お前が勝つか、この場を支配するのはただそれだけ。

―――引導を渡してやる!


「ばんだいいいいいいいッ!」


再び刃を拳で弾き、踏み込んで更に拳を繰り出す!

腹に一発!

返す刃を避けてもう一発! ぐっ、また斬られたがもう一発だ! 喰らいやがれ!

体勢を低くして足払いを繰り出し、今度は上手くバランスを崩した磐梯へ踵落としを見舞う!

血反吐を吐く磐梯へ更に追撃を食らわせようとして、死角から来た刃に対応が遅れて肩をザックリやられたッ、ぐうッ! 深い、くそッ!


「お、俺は、負けんッ」


ふらつき、かろうじて立っている磐梯と睨み合う。


「貴様にだけは、負けん!」

「いいぜ、気が済むまで相手してやるよ、かかってきやがれ!」


だが俺も大分足元がおぼつかなくなってきた。

いよいよ正念場か。


「大磯 健太郎ォッ!!」

「磐梯 阿男ンッ!!」


同時に駆け出し、磐梯の刃をいなして蹴りを繰り出す!

返す刃の一撃に脇腹あたりを斬られつつ、俺も拳を磐梯の顔面へめり込ませた!

吹っ飛ぶ磐梯に、口の中に滲む血の味を吐き捨て、構え直そうとしたところで思いがけず視界がぶれる。

お、おお?

磐梯も倒れたまま立ち上がらない。

唸ってもがき続けている。


「おい、磐梯ぃッ!」


ピクリと体を震わせた磐梯は、ズルズルと上半身だけ起こす。


「終わりかぁッ!」

「けんッ、たろおおおおおッッッ!」


這いつくばるようにして立ち上がる、その根性だけは認めてやる。

磐梯は曲刀を構えた。

俺もまだやれる。

理央のため、これまでの恨みを晴らすため―――いいや! ただ、勝つために!


「来いッ!」

「うおおおおおおおおおおおッッッ!!」


鬼気迫る勢いの磐梯が曲刀を大きく振りかぶる!

俺も構えて、流麗な軌跡を描きながら繰り出される一撃を躱しつつ、深く引き絞った一撃を放つ!

黄龍を模した手甲を嵌めた拳が磐梯の頬を捉え、景気よく吹っ飛んだ磐梯の手から曲刀が離れて飛んだ。

そのまま地面へ落ちた曲刀は、カランと高い音を立てながら一度跳ね、空中で溶けるように消えてなくなる。

はぁッ、はぁッ、はぁッ!

―――磐梯は立ち上がらない。

意識が無い様子の姿を暫く見降ろして、深く息を吐いた。


そして、傷だらけの腕を頭上高く掲げる。


「健太郎!」


ワッと上がる歓声の中で、その声だけは真っ直ぐ俺の耳に届く。

不意に足元がぐらついた。

お、おお? 倒れかけた体を誰かが受け止めてくれる。

理央、だ。

もう力が入らない、重くて申し訳ないと思いつつ、そのまま身を任せる。

痛い、疲れた。

これだから喧嘩は嫌いだ。


「しっかりしろ! 君、血を流し過ぎだ!」

「そうなのか?」

「自分のことだろう、まったく! うちの医療班を呼んである、このまま病院へ行くぞ!」

「磐梯は?」

「あいつも連れて行く、心配するな」

「そうか」


まあ、多分死んではいないだろう。

骨は何本か折った感触あったが、そこはすまん、痛み分けってことにしてくれ。

俺もあちこち斬られたし、確かに血塗れだ。

さっきから頭がぼんやりするのは貧血だったのか、ああ、制服もボロボロ、やっちまったなあ。


まだ何か言っている理央と、騒がしい周りの様子をぼんやり眺める。

よく聞こえないし、視界もぼやけてきた。

でも勝ったぞ。

不意に俺を見詰めて、理央が微笑みながら頷いた。

目が赤いけど、泣いたのかな?

ごめん。

手を伸ばすと、その手をギュッと握り返してくれる。

ああ、温かい。

やっぱり理央だ、俺は理央がいい。


それにしても、拳対剣って、対戦カード的におかしくないか?

まあ、銃じゃないだけマシだったか。

小手を借りてこの有様じゃ、母さんに叱られるかもしれない。師匠以上に厳しいからなあ。


なんだかクラクラして、意識が遠のいていく。

今、どういう状態だろう。

痛いことしか分からない、でも勝った、勝ったんだ、間違いなく。

これでループも終わる。

理央と離れずに済む、そもそも磐梯の言うことを聞く必要なかった、最初から分かっていたら無駄に死なずに済んだかもしれない。

所詮は結果論か。

なあ理央。

俺さ、勝ったよ、言ったとおり自力でどうにかしただろ? だから。

だから―――ほめて、くれ。


ううっ―――

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