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対決と転校生 2/前

俺の真正面に磐梯が立つ。

若干身長が負けているのが癪だ、見下しやがって、まさに牙を剥き威圧する獣のようだ。

だが俺も、研ぎ澄ましたこの爪をお前に見せつけてやる。


「校庭に行くぞ」

「よかろう」


すぐに踵を返し、まっすぐ校庭へ向かう。

振り向かなくても気配で分かる、磐梯も殆ど距離を置かずついてくる。

誰か、この異様な雰囲気に先生を呼びに行ったかもしれない。

大人の力で仲裁される前に始めなければ、これからやろうとしていることはガキの喧嘩だ。

お互いに欲しいものを、泣いてわめいて殴り合って取り合う。

俺達はまだ高校生だからそういうのでいい、穏便になんて済ませてやるものか。


昇降口辺りまで来たところで、不意に背後からフッと笑う声が聞こえた。


「しかし意外だな、貴様に斯様な漢気があったとは」

「あ?」

「理央を誑かすのみならず、他の婦女子にまで粉をかける軟派者かと思っていたが、存外腑抜けではなかったようだ」


それってもしや、最近は週末デート三昧だった俺を、磐梯はそんな風に見ていたってことか?

ループで知った奴の目論見を阻むためにやっていたことが、むしろ火に油を注ぐ結果を生んでいたのかもしれない。

だが今更それを知ったところで、これからやることに変わりはない。

俺は、俺の想いを証明するために、お前を叩きのめす。


校庭に出て、改めて磐梯と向かい合うと、周りをぞろぞろと付いてきた野次馬たちが囲んで輪を作る。

見世物みたいな状況だな。

校舎からもあちこちの窓に大勢の生徒が張り付いて様子を窺っている。

これは、いつ教員が止めに来てもおかしくない。

視界の端に理央の姿を見つけて、そっと目配せしておいた。

頷き返してくれた理央は、傍に寄ってきたファンクラブの子らしき女の子達へ何かを伝えている。


さて、始めようか。

うららかな正午の日差しが照らす俺達の間を、少し冷たい風が吹き抜けていく。

空は青く晴れ渡り、まさに絶好の決闘日和だ。


「磐梯 阿男!」

「―――大磯 健太郎」


俺が名前を呼ぶと、磐梯も唸る様に呼び返してくる。


「お前に売られた喧嘩、今、ここで決着をつけてやる!」

「はっ! とち狂ったか痴れ者め、どういうつもりだ」

「お前が文化祭で何をするつもりか、どんな奥の手を使う気でいるか、俺は全て知っている」


途端に磐梯がカッと目を剥いた。


「理央か、下郎め!」

「いいや違う、だが、お前は自分の妄執に取り付かれている」

「何を言う、貴様如き下賤の者が、高貴なる理央を誑かし思うままにするなど虫唾が走る! 身の程を知れ!」

「誑かしてないって言ってるだろ!」


いい加減にしやがれ!


「大体俺は庶民だが、下賤でも貴様より劣ってもいない!」

「はッ! その粗末な成りでよくも言うものよ! 血も実もない貴様如きが理央と釣り合うわけが無かろう!」

「だったらお前は理央に相応しいっていうのかッ」


グッと磐梯は言葉を詰まらせる。

やっぱりこいつも理央に惚れているんだな、万死!


「いいか、よく聞け」


磐梯に指先を突きつけ、怒鳴りつける。


「俺はッ! お前なんかに! 理央を絶対に譲らないッ!」


突然俺達を囲む野次馬の中から「ギャーッ!」と悲鳴が上がった。

な、なんだ?

誰か、何人か倒れたようだが、一体どうした、大丈夫か?

だが構っている場合じゃない。

肩に下げているスポーツバッグの中から、拝借してきた母さんのアレを取り出し、空になったバッグを投げ捨てる。


「何だそれは」


磐梯の野郎が鼻で笑う。

これは―――母さんと数多の武勇伝を打ち立てた盟友『黄龍の手甲』

五行思想における中央の竜の名を冠する、師匠が母さんに免許皆伝の証として授けた秘蔵の武具だ。


「この手甲はな」


装着するのは初めてだが、意外なほどよく馴染む。

俺と母さんじゃ腕の太さが違うから多少の違和感は覚悟していたけれど、これなら問題なさそうだ。


「舐めた真似をしていた野郎をぶちのめし、根性を入れ替えさせた、由緒正しい怒りの鉄槌だよ」


その野郎ってのは俺の親父だけどな。

あの時は死にかけたとか言っていたが、母さんの怒りはもっともだ。

俺も、愛のためにこの拳を振るう。


「お前を相手するのに丁度いい」

「ほう? 貴様は体術の心得があるか、ならば」


またどこかからスラリと抜き放った曲刀を磐梯は構える。

急に周りがどよめいた。

それはそうだ、明らかな銃刀法違反、それ以前にあんな得物を持ち出す奴はまともじゃない。


「こちらも相応に迎え撃つが道理」

「いいぜ? お前はとんでもない勘違い野郎だが、俺は紳士だからな、まともに相手してやるよ」

「勘違いだと?」

「考えるまでもないだろ、理央が俺に誑かされるようなタマか、ふざけやがって」

「なにッ」

「あいつはな、自分の意志で俺の傍にいてくれるんだ、そもそも俺やお前がどうこうできる相手じゃない!」

「ぬかせ! 知ったような口を利くな!」

「だったらお前は理央の何を知っているって言うんだ! この妄想暴走特急野郎め!」


男なら勝負から逃げてくれるなよ。

お前は剣で、俺は拳で、存分にやり合おうじゃないか!


「貴様ァッ!」


磐梯は叫び、曲刀を振り上げる。


「痴れ者が! 今すぐそのふざけた口を利けなくしてやる!」

「じゃあ俺が勝ったら話を聞け! 素直に、大人しく!」

「よかろう、やれるものならばな!」


ほぼ同時に地面を蹴立てて、互いに真正面から突っ込んでいく!

勢いをつけて振り下ろされる刃を避けながら、繰り出した拳は磐梯の脇腹にヒットした!

だが返す刃に胸の辺りを斬られる!

悲鳴が聞こえ、距離を取り、構えたところへ磐梯が斬りかかってくる!


「うおおおおおおおッ!」


刃を躱し、足元を狙って蹴りを入れる。

けれど磐梯はすかさず避けて、逆に蹴り込んだ俺の足を狙い曲刀を繰り出してきた!

その刃が当たる寸前で足を引き、軸足に切り替え回し蹴りを入れる。

磐梯の側面にヒットした!

よろけた磐梯は足を踏み縛って体勢を保つが、その顎へ一発! 続けて腹へ一発! 飛び退いて構えると、磐梯もふらつき曲刀を構え直す。


「貴様、やるようだなッ」

「お前もなッ」


さっき斬られた胸の辺りが痛い。

制服が裂けて、覗く肌に赤い線が引かれている。

こっちは一発でもまともに喰らったらお終いだ、だが、小手を嵌めた俺の一撃も当たり所によっては致命傷になりかねない。


「はあああああああああああッッッ!!」

「うおおおおおおおおおおッッッ!!」


また曲刀を振りかぶり向かってくる磐梯に、俺も駆け出していく。

刃の一撃!

避けたと思ったが腿の辺りを斬られた! 痛いッ!

バランスを崩したところへもう一撃! 今度は肩の辺りだ、くそッ、距離を取る!


「逃すかあああああああッッ!!」


繰り出された一撃を寸で避けて背後へ飛び退く。

そのまま更に横へ飛んで踏み込みつつ、一気に距離を詰めて磐梯の脇腹辺りに渾身の一撃をお見舞いした!

吹っ飛んだ磐梯を追って更に一発! 二発!! おまけで三発!!!

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