覚悟と転校生 4/後
「お、大磯君ッ」
細く震える声が聞こえて振り返る。
委員長だ、動けるのか?
怪我は? もし逃げられそうなら早く逃げてくれ!
「すまない」
「えっ」
「死んでくれぇ」
は?
思いがけず気を取られて、磐梯に肩の辺りをザックリやられる!
ぐぅッ、痛い、血がッ!
「本当にすまない、すまないと思うが、でもっ」
「い、委員長?」
なんで?
なんでだ?
「君一人と、僕らの命と、犠牲になる数を天秤に掛けたら、ぼ、僕はッ」
不意に辺りに高らかな笑い声が響き渡った。
磐梯だ。
―――あのッ、野郎ッ!!
「なんと愚劣で浅ましい! 貴様は真のクズだな! 目も当てられぬほどの醜悪さよ!」
「うっ、ううっ!」
「貴様らが枷となっているというのに、その自覚もなくあれに死ねと告げるか、何とも卑しく見下げた性根よ、畜生にすら劣るわ!」
「だってッ、だってぇッ! し、死にたくないんだッ、仕方ない、だろぉッ」
痛いんだよ、怖いんだよぉと、委員長は掠れた声で震えながら涙をポロポロとこぼす。
―――そうか、そうだよな。
何かが急に俺の中からストンと抜け落ちた。
確かにそうだ。
こんな訳の分からない状況に巻き込まれて、傷つけられ、失禁までして、もう限界だろう。
他の奴らだってそうだ、俺と磐梯のいざこざに巻き込まれてボロボロじゃないか。
うずくまっている奴らもずっと動かない。
動けないんだろう、怖くて震えることしか出来ないんだ。
皆、きっと死にたくない。
それは俺も同じだ、でも俺は―――死んでもまたループできるかもしれない。
これ以上お前達を無駄に苦しめる必要なんてなかったんだな。
その辺りの考えが抜け落ちていた、悪い。
さっき賭けるって腹を括った、だったら潔く今回の結末を受け入れよう。
もしかすると、これで最期かもしれないが―――理央、俺を叱ってくれるなよ?
お前を守れなくなるかもしれない、そうなったら本当にごめん。
でも俺は、悪足掻きを続けて今以上に傷つけられるこいつらを、もう見たくないんだ。
「分かった」
体のあちこちに絡みついてくる腕を振りほどく気力もなく、その辺にあった椅子に腰掛ける。
ふと、委員長と目が合った。
なんて顔してるんだよ、心配するなって、別に恨んだりしないからさ。
「いいぜ、今回も俺の負けだ、殺されてやるよ」
「何を言っている? 今際に気でもふれたか」
顔を顰めた磐梯に、今度は俺から軽く鼻を鳴らして笑ってみせる。
お前は覚えていないだろうからな。
―――だが、覚悟しろ。
もしまたループできたら、今度こそお前は終わりだ。
俺は一切容赦しない。
全力で潰しに行くから、首を洗って待っていろ。
ふう、と軽く息を吐いた。
―――よし。
「委員長!」
声を掛けると委員長はビクリと体を震わせる。
今回はここでゲームオーバーか。
あークソ、腹立つ!
痛いしムカつくしマジで暴力なんてクソだ、喧嘩なんか嫌いだ、磐梯め、次会ったらてめえをボコボコにぶん殴ってやるからな!
「恨みっこナシでいこうぜ!」
ハッとなった委員長が何か言おうとした。
だが直後に俺の胸から腹にかけてを、振り下ろされた刃が深く切り裂く。
ッツ痛てぇ、あー痛い、痛過ぎる。
やっぱり、死ぬのって慣れないなぁ、ははっ。
―――今回も頼むぜ、俺の魔女。
勝手ばかりですまないが、どうか助けてくれ、頼む。
段々、目の前が―――暗くなって、きた。
音もよく聞こえない。
ああ―――痛い。
「健太郎!」
え?
今の声、りお、か?
どうして。
理央、おれ、は―――




