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野道と転校生 4

―――翌日。


放課後、今日も今日とて文化祭の準備に追われている最中。

廊下に出ると同時に(ガシャーン!)とデカい音が鳴り響く!


え、なんだ?

って、隣の教室から飛び出してきたのは常盤兄弟の弟、龍一!


「おい、リュウ!」


続いて兄貴の虎太郎も現れて、去っていく龍一の後を追う。

兄弟喧嘩か?

うわー関わり合いたくねえ~ッ!

だが俺の脳内でイマジナリー理央が(健太郎)と囁く。

―――リアルの理央は家の人が迎えに来て既に下校した後だ。

仕方ない、俺も奴らを追うとしよう!


ついて行って辿り着いた先は校舎裏。

ようやく立ち止まった龍一が、振り向きざまに虎太郎を睨みつける。

おお、迫力。

虎太郎も一度足を止め、改めて「おい」と呼び掛けながら龍一に近付こうとするが、龍一は半歩下がりつつ「いい加減うぜえんだよ」と吐き捨てる。


「毎度兄貴面して傍観者気取りか? いつまで俺の保護者やってるつもりだよ、オニーチャン」

「あ?」

「お前のそういう態度見てると、反吐が出る」

「ンだと?」

「言いたいことがあるならはっきり言え、コタ」

「リュウ」

「てめえにお守りされなきゃなんねー弱っちいリュウ君はもういねえんだよ! なのにまだ兄貴のつもりでいやがって、いい加減ウンザリだ!」

「てめぇッ!」


うおッ、虎太郎が龍一の胸ぐらを掴んだ!

す、ステイステイ! 落ち着け!

校内で暴力沙汰なんて下手したら停学モノだぞ、内申にだって響く!


「おいやめろ! 喧嘩はマズい!」

「健太郎」

「てめえか」


兄弟揃って止めに入ろうとした俺をギロリと睨む。

うわ~おっかねえ、面倒臭ぇ~ッ!

これ俺が仲裁するの? 嫌だなあ、骨が折れそうだ。


「関係ないヤツは引っ込んでろ、これは俺とコタの問題だ」

「アホか、だったら俺はお前らの友達だ、止めるに決まってんだろ」

「身内の話に首突っ込んでくんなよ、ウゼぇ」

「校内で殴り合おうとする方が無茶苦茶だろうが、やめとけ」

「ッは! 俺らが無茶苦茶なのは今に始まったことじゃねえだろ!」


龍一が笑う。

まあそうだな。

虎太郎は苦い表情だ。


うーん、俺もできれば関わりたくないんだが。

確か虎太郎の悩みは(龍一にもっと自分を大切にして欲しい)そして龍一の悩みは(これ以上虎太郎の負担になりたくない)だったよな。

仲良し兄弟め、お前らお互いが好き過ぎて喧嘩するなんて、やっぱりアホだろ。


だが、俺は知っている。

頭に血が昇っているバカは人語を介さない。

故にこの場を収める手段はただ一つ! 見逃してくれ理央! 俺もバカの仲間入りだ!


「よし」


二人に近付いて、まず龍一の胸ぐらを掴む虎太郎の手を問答無用の力づくで外させる。

そしてそのまま虎太郎をぶん殴る!

吹っ飛んだ虎太郎は、それでもふらつきながら踏み縛り、龍一は俺にギョッとした目を向ける。


「な、何?」

「ンだコラ健太郎ォッ!」

「だったら俺も混ぜてもらおう、兄弟喧嘩上等! まとめてかかってきやがれ!」

「はあ?」

「ほら磐梯弟、兄貴がやられたぞ、仕返ししなくていいのかよ」


龍一はまだポカンとしている。

一方、虎太郎は血の混じった唾をペッと吐き捨てて俺を睨みつける。


「急に殴るなんざ、いい度胸してんじゃねえか」

「以前の仕返しだな」


こいつらと仲良く、というか、絡まれるようになった経緯。

なんかよく分からんが、ある日唐突に勝負を挑まれ、その時も河原で大乱闘を繰り広げたんだよな。

警察呼ばれて三人それぞれに逃げ出したんだが、以来なんやかんやとちょっかいを掛けられるようになった。

俺は喧嘩は嫌いだ。

こいつらも荒事を好むタイプじゃなさそうなのに、何でいつもここぞという時の解決法に暴力を選ぶんだか。


「仕返しねえ、だったら!」


虎太郎が殴りかかってくる!

だが敢えて避けずに一発喰らい、今度は俺が吹っ飛ばされる。

いいパンチだ。

確か空手を習っていたとか聞いたな、まあ俺も武術はそれなりに齧っているが。


「こっちも改めて仕返しさせてもらっても、文句は言わねえよなぁ?」

「おう、意味分かんねえ兄弟喧嘩よりよっぽど道理が通ってる」

「あ?」

「殴るしか能のないお前らの流儀に合わせてやるよ、俺は喧嘩なんか大っ嫌いだがな!」


龍一が「意味分かんねえ」と呟きつつ、髪を掻き上げる。

その仕草すら様になるイケメンぶりだ。

虎太郎もいかつい系のイケメンだから、俺に殴られた痕がむしろ様になって見える。

おのれ、顔のいい兄弟め。


「けどいいぜ、丁度ムシャクシャしてたところだ、コタもケンもまとめてぶん殴ってやるよ!」

「来い!」

「クソがぁッ!」


常盤兄弟が同時に俺に向かってくる!

―――と、言うより、龍一は俺と虎太郎を、虎太郎は俺と龍一と、そして俺は虎太郎と龍一を、それぞれ相手に大乱闘が始まった!

図体のデカいのが三人、傍目にはさながら怪獣戦争勃発! てな具合の様相だろう。

あークソ、今更ながら貧乏クジだ。

喧嘩なんて痛いし疲れるし怪我するし、いいことなんて一つもない。

だから嫌いなんだよ、くそったれ!


「毎度しょうもないことで揉めやがって、このアホ兄弟が!」

「うるせえッ、てめえに何が分かる!」

「部外者の俺にも分かんねーような面倒臭い付き合い方してるから、お前ら自身も拗れてんじゃねえか!」

「こっちの事情も知らずに、好き勝手言いやがって!」

「知らねーが? それでもお前らの相手してやってる俺の厚意を恩に着ろ! 感謝しやがれ!」

「うぜぇッ、勝手に首突っ込んできやがって、何言ってんだこのボケが!」


虎太郎と龍一は、中学時代はそれぞれ狂虎、暴龍なんて呼ばれて恐れられた不りょ、もとい、ヤンチャな奴らだった。

けど単に素行不良で荒れていたわけじゃなく、絡んできた奴らを返り討ちにし続けた結果、周りから恐れられるようになった、らしい。

五月女から聞いた話だ、俺は中学時代のこいつらを知らない。

それでも、こうして拳を交えて分かることもある。

根は素直で真っ直ぐなんだよな、そして優し過ぎる。

だから、お互いを思いやり過ぎて拗れているんだろう、お互いに幸せになって欲しいって心から想い合っているんだ。


麗し兄弟愛ってか?

まあ、俺から言わせてもらえば、ただのアホだけどな。

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