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わるだくみとーく

 東部前線、その手前に敷かれた司令部であり絶対防衛線にたどり着いた。


「先生、改めてありがとう。私はこれからお姉様のところに行って製造所についての報告をしてくるわ。トリアもいるだろうし、少し休んでて」


「わかった。お言葉に甘えるよ」


「うん。あ、でもできるだけ遠くには行かないでね? お願いよ」


「わかってるさ。本番はこれからなんだから」


 そういうとカタリナは安心したようににっこり笑ってから背を向けた。


「ベルガ殿、我らからも感謝を申し上げる。あれほど……いや、うまく言えないのだが、美しいカタリナ様は見たことがない」


「そしてそれがベルガ殿のおかげであることは理解しているつもりだ。これからも、よろしくお願いし申しあげる」


「よしてください。皆さんの力や存在があってこそでもあります。お互い様ですよ」


 口々にそう言いながら頭を下げてくる近衛兵の皆さんだが、本当に大したことをしたつもりはないんだ。


 元々カタリナはあぁなる器があっただけの話でもある。


「剣聖様は謙遜もお上手だ」


「事実ですよ。さ、カタリナを一人にしてしまっては本末転倒。俺は少し休みますので、あとはよろしくお願いします」


 苦笑いと共に早く行ってくれと言外に告げれば、同じような顔をされた後にカタリナの後へと続いていった。


「ふぅ」


 それなりに疲れたのは間違いない。近くの壁へと寄りかかってみれば中々に身体は重かった。

 負担にならないようにと、なんでもない顔をするようにしていたけど、ポイズンブロックを自分含めて四人分を維持するのに結構な魔力を消費した。


 ――ご主人様、大丈夫ですか? ですか?


 頭に響くテレシアの心配げな声に大丈夫だと返事をして。


「ひと眠りする時間はないだろうし……少し様子を見て回るか」


 入る前から思ったけど、かなり立派な砦だ。

 流石に長く続いている戦争で使われている拠点だとも言えるだろう、物理的、魔法的なものに対しての対策はしっかり行われている。


「これもやっぱり、戦いで生み出され磨かれたもの、か」


 カタリナへと偉そうに講釈を垂れたが、俺自身こうしてそうだと感じる機会は多くなかった。


 世間、特に一般人にとってはまだまだ木造建築が主流だ。

 建築物の一部に石材や鉄が使われることはあっても、城やこの砦のようにほぼすべてがそうというわけじゃない。


「うん、防衛力向上のためか。疲労軽減、治癒力向上に……んー? あぁなるほど、任意のタイミングで集中力向上の効果も発動できるのか、中々」


 ましてや細かく魔法陣が刻まれていたりもする。

 これからどんどん戦いの場で技術が磨かれて、世間に活かされていくことを考えればわくわくするね。


「ただ……兵の様子は、何とも言えないな」


 簡易的ではあるが訓練所には誰もいない。

 詰め所を見ればやや弛緩した雰囲気の下、談笑が交わされているし率直に言えばこんなので大丈夫かって一言だ。


 国の王や姫が来ているというのにね、率直に言ってだいぶヌけている。


 後は、うん。

 一部に様子のおかしい兵もいる。

 ダストコープス中毒の初期症状と思わしき状態だ。


「……さて、アルル様はどうするのかね」


 気づかないわけがないだろう。

 万が一アルル様が気づかなくとも、アーノイドさんなら気づく。

 持ち直したとアーノイドさんが言った以上どこかしらは改善されているはずだが、前線のほうだろうか。


 まぁいい。

 とりあえず俺はお呼びがかかるまで休むことにしよう、少しでも魔力を回復しないと。




「なるほど、現状はわかりました。アーノイド、苦労をかけましたね」


「勿体なきお言葉です。しかし、この程度しかできなかったこと申し訳ありません」


 アルル様、トリア、カタリナ、アーノイドさんに俺。


 四人で集まってそれぞれの報告会が始まった。

 報告会とは言っても俺から報告することはないし、聞くだけで基本的には口出しをしないようにと言われている。


「カタリナもありがとう、これがあればわたくしたちが行うことに正当性が生まれる。本当ならすぐに暴いてしまいたいところだけど、もう少しだけ我慢ですよ」


「女王陛下の御心のままに」


 纏う空気を一つ深めたカタリナに対してアルル様は頷きを一つ。


 この場にガイやノルドラが呼ばれなかったことである種の決定的な決裂は生まれただろう。

 本来この報告が終わればこれからどうするかといった部分を詰める会議へと移行するものだ。


 だというのに呼ばれていない。


 ガイやノルドラにしてみればもはや遠慮は要らないと判断するに十分だ。

 実際、この部屋へと魔法的な仕掛け――盗聴といった類のものも仕込まれているようだし。


「では、各位の報告も伺ったことですしこれからについての話をします」


 っと、本当にするの?

 気づいてるよね? 最低でも近衛を部屋周りに配備するべきだと思うんだけど。


「アル――」


「――」


「失礼しました」


 思わず声を出してしまえば鋭いアルル様の目で制された。


 ……何を考えているのか。


 そんな俺の疑問を。


「話すと言っても当初の予定通りに進めます。明日より戦場各所に敷かれた拠点を周り慰安を行うことに変わりはありません」


「……へぇ」


 誰の入れ知恵か。

 手元の紙へと魔力文字を浮かび上がらせて、口にしている内容への注釈をつけ、悪巧みを打ち明けるかのような笑みを見せて解決してくれた。

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