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根源追求

(シールド)! (ウォール)! ……うーん。何か、違うなぁ」


 おめでとう! トリアとリアは魔力を感知できるようになった!


 その代償としてビンタ一発ずつには納得できないが、喜ばしいことだ。

 リアは早速魔力の文字化訓練に取り組み始めたし、トリアもそう。


「先も言ったが、魔法とはイメージの具現化だ。人それぞれ想起しやすい言葉がある。焦らずにな」


「はい、師匠。けど、その、大丈夫ですか? ボク、結構さっきからぽんぽん使っちゃってますけど」


「一句程度の短縮詠唱魔法なんて消耗にもならないから安心しろ。むしろ出力調整のほうが大変だ」


 魔法を使えるようになったはいいけど、トリアは残念ながら総魔力量に恵まれていなかった。

 一句の短縮詠唱魔法で五回、二句なら三回、三句であれば一度使ってしまえば魔力切れになってしまう。


 だが、一度に扱える魔力の量が多い。

 今はまだイメージが固着しておらず、しっくりくる魔法構文探しの段階だ。


「むぅ。ありがたいと思う反面、複雑です。やっぱり師匠は人間を辞めてますよね」


「失礼な。単純に構文の最適化なんかで誤魔化しているだけで、総魔力量だけで言えばメルの方が多いぞ」


「えっ!? ほんとですか!?」


 マジである。

 嫉妬すらしてしまうが、人間離れしているというならそれはメルだろう。

 ぶっちゃけた話、俺がメル式の瞬間詠唱をすればものの十分で魔力切れになってしまう。


 なんで知ってるかって? 試したからだよ。


「だ、だったらやっぱりこうして師匠の魔力をお借りするのは……」


「今の調子なら24時間使われたところでまったく無問題だよ。いいから練習しろ」


「……はぁい」


 総魔力に乏しいトリアだから、自分の魔力を使って練習なんてしたら一時間保たない。

 そこで、俺と魔力回路(パス)を繋いで俺の魔力を使って魔法の練習をさせている。


「っと、トリア」


「え? あ……」


 街を歩きながら、である。

 リアの付与魔法練習に使える材料探しがメインの目的ではあるが、雑踏ってのは意外と集中力を削ぐ。


「あ、ありがとう、ございます……」


「いいよ。けど、ちゃんと周りへの警戒も疎かにするなよ」


 周りを無視して魔法へと没頭する形で集中することはできるだろうが、それじゃあ永遠に実戦で魔法が使えない。


 今も集中しようとし始めたトリアが歩行者にぶつかりそうになったし……まぁ最初は仕方ない。

 代わりに注意してやるくらいはしてやらないとな。


 っていうか、トリアを引っ張った瞬間周りで黄色い声があがったけどなんだろうか。


「あ、あの、し、師匠、ち、近いです」


「ちゃんと周りも気にするか?」


「わ、わかりました、気をつけます! 気をつけますから! こ、この距離、だ、だめ……です、からぁ!」


「お、っと」


 うぅむ、軽く突き飛ばされてしまった。


 って、あー……近すぎる、か。


「すまん」


「……朴念仁」


 どうにも訓練って考えがあると忘れちゃうよね、本当に申し訳ない。




「うーん……」


 いい感じに使えそうな衣服を買い漁って店から出れば、難しい顔をしながらトリアが待っていて。


「ドツボにハマってるな」


「あ、おかえりなさい師匠。使えそうなものはありましたか?」


「そっちは大丈夫。だが、トリアのほうは大丈夫じゃ無さそうだな」


「う、は、はい。こう、しっくりこなくて」


 申し訳無さそうな顔をするトリアに苦笑い。


 たまにネガティブな方向へと思考が引っ張られるのはトリアの癖だ。

 良くも悪くも頑固だなと思ったりするが、納得できるまで突き詰めたいという気持ちは理解できる。


「なんだったら別の方向で考えるか? 防御に使えそうな魔法をと勧めたのは俺だけど、別に相手を拘束するだとか、そういった非殺傷的な魔法もあるんだぞ?」


「あぁ、いえ。守るという部分には強く惹かれているんです。だから、方向性自体は変えたくありません」


 こういう部分が頑固だ。

 実際、上手くいかないから別の魔法を練習しから改めてやったほうが上手くいく。

 なんてことはザラにあるものだが、とことんトリアは不器用なんだなと実感する。


「魔法とは根源を知る機会である」


「えぇと?」


「パラクスの訓示、その一節だ。魔法とは己のイメージを具現化するものであり、より鮮明なイメージは己の根源に宿っているものだって意味」


「根源、ですか」


 イメージっていうものはややこしい。

 そもそもが抽象的なものなのだ、誰かからこうだよと言われてできるほうが稀である。


「たとえばトリア、あの家を見てみろ」


「あ、はい」


「家屋ってのは人間を寒さや暑さ、あるいは視線だなんだから守ってくれるモノと言えるよな?」


「はい、わかります。家だって、守ってくれるモノの一つです」


 トリアは守るという行為に惹かれた。言い換えれば守るための魔法を使いたいと思っているということ。


 そして、守りの形とは様々にある。

 盾で身を守る、壁に隠れる、むしろ攻撃することで守る、沢山だ。


「守る形を追求してみろ。家で身を守られるっていうのは、壁に囲われているからなのか? それとも覆われているからなのか?」


「……おお、われているから、だと思います」


「よし。ならトリアは自分を、または誰かを守る時に覆われる、あるいは包まれると感じているということだろう。ならば、それに適したものはなんだ?」


「覆う、包むに適した、もの……」


 これが根源への追求。

 なぜなぜ分析、なんて言ったのは誰だったかは忘れたが、根源へと迫る方法の一つ。


「ボクが、ボクに、守る、守られる……」


「焦るな。ゆっくりと深淵を――」



「きゃあああああっ!?」



「っ!?」


「師匠! 今のはっ!?」


 ただ事じゃない。

 それだけはわかる。


「行くぞ」


「は、はいっ!」


 ……ったく、いいところで邪魔は入るもんだ。


 何処のどいつが何をやってくれたんだ、っと。


「お、おめぇりゃぁっ!? ちちち、ちきゃづくんじゃ、ねぇええぇっ!? えへっ!? ええええへへへ!」


「おかあさあああんっ!!」


「シュシュっ! シュシュを離してぇ!!」


 ……おいおい、天下の往来で、こりゃあまた。


「師匠! あれはっ!」


「あぁ、魔人化……いや、それより性質がわりぃな。イってやがる」


 廃魔の力剤、過剰摂取症状(オーバードーズ)、か。

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― 新着の感想 ―
美少女からのビンタはご褒美ですしおすし。
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