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戦略的授業

「最初に前置きとして。体力の問題であれ、多くの問題を魔法的に解決しようというメルの発想自体は正しいと言えるでしょう」


「え? でも、リソースの無駄って……そっか、付与魔法!」


 相変わらずと言うべきか、こと魔法に関してメルは鬼才らしさを存分に発揮してくれる。


「落ち着いてくださいね? あくまでも前置きです。当然ながら付与魔法を始めとしたアシストを自身に行わずとも力を発揮できる状態にまで力をつけたほうが良いことに違いはありません」


「そ、そうだよね。ごめん」


「しかしながら。今回の目的は魔法剣士団を設立し、候補者や団員の訓練をメルが行えるようになることです。そこで考えましょう、魔法剣士の集団とは何に秀でているのか。想像できますか?」


「うん、アルルちゃんとも話していたんだけど。剣士や魔法使い以上の汎用性に優れ、多くの場面に対処できる。遊撃部隊として極めて都合がいい兵科だと思ってる」


 大筋のところで正解と言えるだろう。

 個人であろうが、集団であろうが、魔法剣士の基本的な戦い方は穴埋めだ。


「逆に。何を苦手としているのかは想像できますか?」


「えぇと、やっぱり魔力の問題だよね。体力に比べて回復に時間がかかるし、魔力を切らしてしまえば一日単位で動けなくなっちゃう。扱いどころを見極めて運用する必要性が、他の兵科に比べて高いと思う」


 うーんこれまた正解だろう。


 やっぱりメルは根本的に頭がいい。

 研究者気質でもあるから分析力にも長けているし、考える切り口さえ教えてしまえば自分でどんどん正解を導いていく。


「そう、流石メルですね。文句なしの分析です」


「うぇっ!? え、えへへ……ありがと、せんせ」


 なんというか頭を撫でてやりたくなるタイプだな。

 流石に不敬もいいところだからやらないけどさ。


「では、優れている点、劣っている点。この二つを加味して、メルやアルル様が魔法剣士団に対して求めている中で向いていないことがあります。それは何でしょうか?」


「向いていない? ん、んー……」


「答えは多くの場面に対処できるという点です」


「えっ!? で、でも――あ、そっか。リソース管理……」


 これだよ。

 理解力ほんとにすごいわ。


「そう。確かに多くの場面に対処はできる、しかしだからとぽんぽん対処させてしまってはすぐに動けなくなる。平たく言ってしまえば燃費が悪い」


「用途を絞って、切り札的な扱いをしなければならないってことだよね? そっかぁ……何でもできるからこそ、そのうちの何かに絞れば効力を高められるんだ」


 加えて言うのなら、やはり魔法剣士は数が少ない。

 兵団と言っても、どちらかと言えばメル直下の専属部隊と言った数程度でしか運用は難しいだろう。


 集まって小隊規模、10人から30人が現実的か。

 少なくともその人数で戦略的盤面をひっくり返すことを狙うのなら、使い方は相当に考えなければならない。


「負傷兵の治癒に戦場を駆け回り専念するでもいいでしょう、あるいは絶対に負けられない局地戦の支援といったものでも。ただ、間違いなく言えることは魔法使いや剣士と言った兵科に比べて、扱う人間の指揮力が問われる兵科であることは確かです」


「む、むむ……そうだね、うん。言われると改めて、あたしにできるのか不安になるくらいには、難しいと思いなおしてる」


 だからこそ、思いついても中々運用に踏み切れない発想でもあるんだろう。

 高機動魔法兵団と言った、騎乗魔法兵なんてのを聞いたことあるが、活躍が耳に届かないってことは運用に失敗してしまっているという証明。


 ましてや魔法だけではなく剣も扱うのだ。

 幅広さの選択を間違ってしまえば宝の持ち腐れ、欲張らずに剣か魔法に集中したほうが良いとなってしまう。


「故に、原点回帰です。あえてお聞きしませんが、魔法剣士兵団を設立しようと思った理由をまずは達成できるようになりましょう」


「原点回帰……」


 アルル様は膠着状態を望んでいる。

 カタリナは戦死者の発生を嫌っている。


 そういった部分から考えると、恐らく魔法衛生兵としての運用をメインにし、継戦能力を高めるためだろうと予想していたりはするが。


「その上で必要なものを考えましょう。もちろん、メルがそれを教えられるだけの技術を習得することは必要で、俺はその部分に協力します」


「うん。ありがと、せんせ」


「あとは単純に、切り札ですと言える部隊にするのであれば、付与魔法を施した武具を揃え与えるなども効果が高いでしょう。俺としてもそろそろリアに次のステップ、実践をしてもらいたいですしある意味都合がいい」


「あ、あはは……あたしも実はそう考えてた。悪いかなーって思ってたけど、せんせがそう言ってくれるなら甘えて話を進めちゃうね?」


 もちろん望むところである。

 いや、実際にやるのはリアだから俺が強く言えることではないが。


「はい。ですので改めて具体的な運用方法を検討してみてください。付与魔法は便利ですが万能ではありません。補える部分、補えない部分がありますから」


「うん、わかった。またアルルちゃんと相談してみるよ。話が纏まったらそうだ……ううん、依頼するね?」


「ええ、お待ちしています。そしてよく相談すると言いませんでしたね。花丸です」


「は、花丸って。もう、あんまり子ども扱いしちゃやだよ!」


 おっと、こりゃ失礼しましたっと。


 なんにしても動き始めたな。

 間に合わせるためにもリアにはそろそろ本格的に頑張ってもらうかね。

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