第三十一章 『共に力を‥‥‥』
ギャスターの読み通り、ザルーラ国と敵対していたバゼルタ国とセシビア国が、ザルーラ国の支配下に落ちたという情報が早くも数日後ミーシアの耳に届いた。
「それじゃあ連合軍を結成する為に、まずはラドゥールに向かうのね」アリスが言った。
「ええ、そして次はミンティアのおじい様に会いに行くわ」
「それでミーシア、出航はいつにするのじゃ」赤鼻のじいさんが尋ねた。
「明日にでも」
「えらく早い出航じゃな。それじゃあ今日中に準備を整えなくてはいけないな」
「お願い。よろしく頼むわ!」
紅鯨団の男達は、直ちに準備に取り掛かった。
「ミーシア、私達も行くわよ」
「ええ、もう止めたりしないわ。でもこれからは更に危険が伴うから、命の保証は出来ないわよ」
「勿論わかっているわ」アリスが意志を見せ固く頷いた。
「ミーシア、オレ達はミーシアと共に行動すると決めた時から、一蓮托生さ!」
トニーも意思表明を見せた。他の子供達も真剣な眼差しでミーシアを見つめている。
「でも約束して欲しいの? どんな窮地に追い込まれても、決して諦めず、必ず生き残る道を選択して欲しいの……」
誰一人としてミーシアの仲間は、躊躇する事なく固く頷き手を握り合った。
明日の朝、陽が上る前からライフパルス号は、ラドゥール国に向けてクイーンローズ島から旅立った。
(炎王、お願い! 私の所に来て……)
ミーシアはラドゥール国に近付いた時、聖なる剣に向けて強く炎王に願いを送った。
大空の向こうに巨大な翼を羽ばたかせ、物凄い速度でライフパルス号に近付いて来るドラゴンの姿が目視されたのは、ミーシアが願いを込めてまもなくしての事だった。
「それじゃあ私はミンティアに向かうわ!」
一刻の時間も無駄には出来ないと、ミーシアは炎王の背に乗りミンティア連合王国へ。そしてカイルを筆頭にした紅鯨団のメンバーは、ラドゥール国との交渉へと二手に別れた。
謁見の間に通されたカイルは、王に事情を説明すると、王は快く承諾して下さった。そしてラドゥール国と古くからの交友関係にあるラセール国、パウザニア共和国、そしてシドール共和国連邦に使者を向かわせた。
「カイル殿、今日はミーシアの姿が見えませんが……」
ジョセフはやはりミーシアが気になっているようだった。
カイルはジョセフ王子に、ミーシアはドラゴンの背に乗り、ミンティアに向かったと率直に伝えた。ジョセフはドラゴンと聞き、息を大きく吸い込み驚いた表情を見せた。
「ミーシアは幼い頃から特殊な能力を持つ少女だったのです。今も彼女の親しい動物たちは、決戦の日に向けて仲間を集めてくれているようです」カイルが補足しておいた。
国王も王子も二人して息を飲んだ。
一方ミンティア城の中庭にドラゴンと共に降り立ったミーシアは、城の衛兵達に警戒されはしたが、ドラゴンの背に乗るミーシアを衛兵達が確認した時、「さすがミーシア・ベネット・ウォールデンの子孫だ!」と衛兵達は賛辞の声を上げた。
「おじい様、今こそ力を合わせて共に立ち向かう時、力を御貸し下さい!」
「相わかった! 直ちにミンティアの連合艦隊を結成しよう」
お父様は側近に、連合王国に加盟する国々への書状を作らせ、兵に届けるよう命じたが、それでは遅いとミーシアが届けるのを買って出た。ただし加盟する国々でも、ミーシアがいきなりドラゴンで城に降り立つと、敵とみなされ攻撃されるやも知れんと、ミーシアにミンティアの国旗を持たせた。
「舞い降りる時には必ず旗を振るのじゃぞ、よいな!」
「はい、おじい様!」
ミーシアが各国の城に降り立つ度、「この戦は勝ち戦だ! 我らにはミーシア・ベネット・ウォールデンの再来が付いている!」と称賛され、快く各国が同意してくれ連合軍が結成された。ミンティア連合王国が集った国は、アルドーラ、スウェーニー、ベルタの三カ国だ。
二日後、各国を指揮する者達がミンティアに集結し、円卓の間で作戦が練られた。円卓の上には大きな海図が広げられ、男達は顔を突き合わせて作戦を練っていた。その全指揮を総司令するのはカイルが任命された。ミーシア達紅鯨団は、やはり主力艦に抜擢された。
「王様、文が届きましたッ!」衛兵が慌ただしく会議室のドアを開けた。
お父様は衛兵から文を受け取ると、素早く目を通した後カイルに文を手渡した。
「どうやらまたザルーラが一国を攻め落としたようだ」カイルが眉間に皺を寄せた。
「その国の名は?」シドール国の騎士団長が発言した。
「サモディ共和国、そしてそのサモディを鎮圧したザルーラ艦隊は、東に向かったらしい」
男達が素早く海図に目を走らせた。
「向かったのはオスタビアか!」
ミンティア連合王国の加盟国でもある、アルドーラ国の騎士団長が言った。
「では我らは南から北上して、カルバスタ海峡で奇襲を掛ければどうだ!」
ミンティア連合王国の加盟国ベルタの騎士団長が言った。
「決まりだな」総司令官カイルが言った。
ミンティア連合艦隊の国の数は、ミンティアを含めて八カ国だ。会議が終わると各国の指揮官達はすぐさま自国の船に向かった。
「ミーシア!」会議室から出る時、ジョセフがミーシアの肩に手を掛けた。
「ジョセフ……」ミーシアが振り向き言った。
「君に話が……」ジョセフが話し始めた時、
「ミーシア、すぐに来てくれ!」少し離れた所から、カイルが慌ただしくミーシアを呼び寄せた。
ミーシアは後ろ髪引かれる思いでその場を立ち去った。
カイルが呼び出した理由は、母が突然倒れたというものだった。母の寝室に通されたミーシアは、意識の朦朧とする母の横に膝を突き、ミーシアは祖母の手を強く握った。すでに父は寝室に来て母を見舞っていた。
「おばあさま……」
ミーシアが話し掛けると、薄っすらとした意識の中、母がミーシアに語り掛けた。
「ミーシア、エリーザを……、出来る事ならエリーザを……」
母が涙ながらに言った。母にとって、孫娘が実の伯母に当たるエリーザを討ちに行くのが相当ショックだったのだろう。
ミーシアの胸にはやり切れない思いが満ちていた。出来る事ならミーシアもエリーザを討ちたくはなかった。しかしそんな甘い考えでは逆に自分達がやられてしまう事も自覚していた。そして何より、ミーシアには守るべき大切な仲間がいるのだ。
ミーシアは返事をしなかった。出来なかった。ミーシアはそっと手を離し父に母の手を譲った。
「ミーシア、気にしなくてもよい。己の信念を貫きなさい!」
祖父である前に国王の威厳を持って、ミーシアに力を込めて父アーサー王が助言した。
祖父の言葉にミーシアは少し救われた気がしていた。
ライフパルス号に戻ったミーシアは、二日前から製作に取り掛からせていた炎王の戦闘用の鎧を、装備させてくれるよう炎王に頼んだ。
「ミーシア、わしにそんな物は要らぬッ!」
炎王は頑なに拒んだが、
「お願いだから炎王この鎧を付けてちょうだい! 今まであなたは、私が振り落とされないよう力を制御して飛行していたのは知っているわ」
ミーシアのこの一言で炎王の表情が変わった。
「これにはどんな空中飛行をしても、私が振り落とされない鞍が取り付けられてあるの。私の為だと思ってお願いを聞いて」
「本当に私がどんなアクロバティックな飛行をしても大丈夫なのだな」
「ええ、私を信じて」
炎王は男達に鎧を付けさせた。思ったより鎧の重さが軽かったのと、動き易かった為か、
「うむ、悪くないな」と炎王は照れ隠しに一言いった。
「良かったぁ~」
「ミーシア、試行飛行だ!」
「ええ、わかったわ!」
そう言うとミーシアは炎王の背に飛び乗り、飛び立つ瞬間を待った。炎王が甲板を蹴った途端、ミーシアはこれまでにない風圧を全身で感じた。
「これがあなたの真の力?」
「まだまだこんなもんじゃないぞ」
「じゃあ最大まで速度を上げて」
「よし、行くぞミーシア!」
「ええ!」
ミーシアは、鞍の前に付いている握りを力いっぱい掴み足を踏ん張った。炎王が螺旋を描いて上昇した後、宙返りして物凄いスピードで降下し始めた。
「大丈夫かミーシア!」
「まだ平気よ!」
紅鯨団のクルーは空を見上げ、炎王とミーシアの圧倒されるほど素晴らしい飛翔に興奮気味に歓声を上げている。
「ミーシア、空中からでも聖なる剣を使いこなせるようになれ!」
炎王が水平飛行に移った。
「わかった」
ミーシアは腰の剣を抜くと、指輪をクリスタルに当てて黄色に変えた。
「水平線に向かって放て!」
ミーシアは剣を振り下ろした。水平線に向けて稲妻が怒涛の勢いで放たれた。その唸りを上げた破壊力は船一隻をも破壊する程の威力だ。
「次は頭の中で弧を描くようにして放て」
「えっ、この剣はそんな事も出来るの……?」
「千年も生きていれば、その剣を使いこなす人物を見て来ているものだ!」
「わかった。やってみる」
ミーシアは、頭に稲妻が弧を描くイメージを描いて剣を振り下ろした。ミーシアがイメージした通りの弧を稲妻で描き、稲妻は水面の上を唸りを上げて曲がって行った。
「上手くいったわ!」
ミーシアは続け様に指輪でクリスタルの色を変え、螺旋をイメージして火炎を放った。イメージ通りの火炎がグルグルと渦を描いて放たれた。
「ミーシア、さすがにそれは見た事がなかったぞ! 筋がいいな」
停泊している各国の船の上では、ミーシアの放つ稲妻に歓声を上げている。男達の士気は明らかに高まっていた。
「ほぉ~ぅ、わしの思い付かなかった攻撃をいとも簡単にやってのけるとは、いやはや、ミーシアは魔法が使えない分、剣の攻撃はわしより勝るやも知れぬ!」
水面に映るミーシアを見て大御婆様も感心なさった。
「炎王、あなたの攻撃も見せて」
「相わかった!」
炎王は胸一杯に酸素を取り込むと、次の瞬間、口を大きく開いて迸る火炎の太い火柱を水平線に向けて解き放った。その凄まじい火炎は消える事なく彼方まで飛んで行った。
「凄ぉ~い。まるで火山の噴火ね!」
そしてミーシアを乗せた炎王がライフパルス号に降り立つと、子供達や紅鯨団のクルーが興奮した表情を引っ提げて炎王の周りに集まった。
「凄いなぁ~ミーシア! それに炎王の火炎も! これなら敵も泡を吹いて逃げ出すぞ!」
ジミーが誇らしげに言った。
「炎王、鎧の付け心地はいかがなもんじゃな?」
赤鼻のじいさんが尋ねた。
「うむ、悪くはない。ミーシアが振り落とされない分、確かにわしの力を存分に発揮出来る」
「それは良かった! ミーシアはどうじゃ?」
「ええ、最高の気分よ!」
赤鼻のじいさんは満面の笑みで微笑んだ。
ライフパルス号を先頭に、各国の船がミンティアの港から出航を始めた。その数は総勢百七十隻、目指すはカルバスタ海峡だ。
ビッグママはライフパルス号の横を船の速度に合わせ泳いでいる。
「うちの娘がお世話になるわね炎王」
ビッグママが甲板に立つドラゴンに向かって言った。
「うむ、其方の娘がわしの背に乗る時は、安心しておくがよい。決して死なせはせぬ!」
「そう言って頂けると母親代わりのあたしとしては、安心してあなたにミーシアを預けられるわ」
「うむ、心配はいらぬ。任せておけ!」
ビッグママは、炎王の年輪のような重みのある声と言葉に信頼をよせ、また炎王は、血の繋がりの超えた動物と人間の親子の絆に心を打たれていた。
「マーカス、どれくらいでカルバスタ海峡に着きそうだ?」
テーブルに海図を開きカイルが言った。
「今がこの地点ですから、あと二日は掛かるかと思います」
マーカスが指で地点を示した。
二日目の早朝ミンティア連合艦隊は、ようやくカルバスタ海峡の海域に差し掛かった。偵察部隊には、敵に姿を見られぬよう、高度二千メートル上空から炎王とミーシア。そして海中からは、ビッグママとキャシー&アリス部隊が、前もって一隻でも船の数を減らすべく、手開け式ドリルで、『知らぬ間に沈没大作戦』を決行するのだった。
ミーシアを乗せた炎王が飛び立つと、二人は高度二千メートルまで上昇した。そしてミーシアが遠眼鏡を覗き込み、海面に向けて辺りにくまなく目を走らせた。
「見えたわ。北北西の方向にターゲット発見!」
「よしミーシア、上空まで近付くぞ」
「了解!」
上空からミーシアは敵の船を数えた。
「三十隻ほどね」
「という事は主力艦隊ではないな」
「そのようね」
「よし帰るぞ」
「了解!」
ミーシアと炎王の息はピッタリと合っている。
ライフパルス号の甲板に降り立ったミーシアは、炎王の背から飛び降りると、走り寄って来たキャシーとアリスに逸早く情報を伝えた。
「北北西の方角に三十隻ほど居たわ。進路はやはり東に向けて移動している」
「了解ミーシア」アリスが言った。
「二人とも気をつけて」
「任せておいてミーシア、私達は小さい頃からビッグママに潜水してもらっているのよ。今ではあなたよりビッグママと潜るのは上手いかもよ!」キャシーが元気よく笑顔で言った。
「それを聞いて安心したわ」
三人は親指を立てて互いに作戦の成功を祈願し合った。
ビッグママの背に乗った二人は、甲板から見送る仲間達に、こめかみにピンと伸ばした右手を当て、行って来ますとばかりに敬礼の仕草をとった。
「ビッグママ、二人の事お願いね」
「任せておきなミーシア!」
ビッグママが出発とばかりに噴水を上げると、尾ビレをしならせ推進し始めた。
「ビッグママ、北北西の方向に敵船発見!」
しばらく経って、遠眼鏡を覗くキャシーがビッグママの背で言った。
「了解! あなた達潜るわよ。しっかり掴まって」
「了解ビッグママ!」二人は元気に返事した。
浸水後、二人は左右の胸ヒレに別れてしっかりと掴まった。時折ビッグママは浮上しては二人に酸素を供給し、敵艦隊に近付いてからは、噴水孔からいつものように海中の中で酸素を分け与えた。手慣れた潜水技術は、幼き頃からビッグママと海に潜って遊んで来た、言わば共遊の賜物だ。
船を間近に捉えた時、二人は海中でハンドサインを送り、腰に縛り付けていた手開け式ドリルを手に取った。彼女達のミッションは、体力の続く限り一隻でも多く船底に穴を開けるというものだった。二人は掴んでいたビッグママの胸ヒレを離し、左右に別れそれぞれ一隻ずつ船底にへばり付き穴を開け始めた。息継ぎのタイミングを見計らって、ビッグママが噴水孔から酸素を分け与えに行った。穴は一隻につき各二カ所、前部と後部に開けられた。それは沈没時、船底の穴を補修させない溜めの工夫でもあった。
二人のこのミッションでの働きは、この戦いにおいて大いに検討した。大きい船の前部と後部を行き来するだけでも骨の折れる作業だが、頭の良いアリスの提案で、推進する前部に先に穴を開けてから手を離し、体力を温存すべく、後部が自らやって来た時にまた後部にしがみ付いた。これを繰り返すこと五隻、二人は計十隻の船に穴を開けた。
二人は手振りサインをビッグママに送ると、ビッグママは海中で二人を拾い、胸ヒレに掴まらせた。
しばらくして敵軍から離れた所でビッグママが浮上した。
「よくやったねあんた達!」
「ええ、初仕事だもの頑張らなくちゃ!」ビッグママの背に乗りキャシーが言った。
「アリスは何隻やったの?」
「私は五隻だけしか無理だったわ。キャシーは?」
「私も五隻よ!」
「じゃあ計十隻ね。初めてにしちゃあ良くやった方よ」
「ああ、二人とも大健闘さ!」
ビッグママの言葉に二人は誇らしく胸を張り微笑んだ。
「どうだった?」海面から縄梯子を登って来るアリスにミーシアが手を差し出し、引っ張り上げながら尋ねた。
「ええ、五隻ずつ頑張ったわ」
「すごいじゃない!」
「やるじゃねえかぁ~お前達っ!」
ジミーがキャシーとアリスにハイタッチをすると、それを機に、次々とクルー達がハイタッチを二人にして行った。
ミーシアは各船に、敵の戦力状況と現状報告を炎王の背に乗って伝えに行った。そんな中、ラドゥールの船に報告をし終え、炎王が飛び立つ間際、ジョセフが言葉を掛けた。
「ミーシア、気をつけて」
ミーシアを見つめるその瞳は、伝えたい事を伝えられずにいる、そんな憂いを帯びた眼差しをしていた。
「あなたも……」
言葉少なに、愛おしい人の無事を心から祈る言葉を返したミーシアだったが、その瞳はジョセフからそれ以上の言葉を待っているようだった。
「このまま行けば数十分後には敵艦隊と出くわす筈です」
マーカスは海図の上に指を当てた。その地点が決戦の場所だ。
しばらくして、マストの上で遠眼鏡を覗き込んでいたトニーが、
「見えたぞ~ッ! 敵の船は約二十隻、前方およそ三マイルッ!」
と敵艦隊の規模と距離を大声で仲間達に伝えた。
「よぉ~しトニー、各船に信号を送れ!」
ジミーの指示で、トニーは点灯機で各船に信号を送った。その信号を受け各船戦闘態勢に入った。
「いよいよねミーシア」カトレーナが言った。
「ええ、みんな気を付けてね」
「勿論よ」スーザンが答えた。
皆の手が一つに重なった。
「行くぞミーシア!」炎王がミーシアを呼び寄せた。
「ええ!」
ミーシアは駆け出し炎王の背中に飛び乗った。それを機に炎王が大空に羽ばたいた。
敵船の上空まで到達したミーシアと炎王は、眼下に見える二十隻の船に向けて降下し、上空から先陣を切った。
空中に武装されたドラゴンを見付けたザルーラの兵士達は、何がやって来たのかと目を細めて見ていたが、ドラゴンの背に乗る娘から自分達に向けて稲妻が放たれた時、「敵襲だぁ~ッ!」と騒ぎ始めた。戦いの火蓋は切って落とされた。
ミーシアらは敵の砲弾を掻い潜り、見事な先制攻撃を仕掛けた。炎王の空中での素晴らしい動きは、まるで水中を泳ぐ魚のようだ。
続いてミンティア連合艦隊が敵軍に距離を詰めると、おびただしい数の砲弾を連続で浴びせた。その砲弾の飛び交う中、ミーシアは眼下に見える敵船の中に、デッキに縛られている人達を見つけ、旋回して仲間の船に伝えに行った。
「捕虜が乗っている船が何隻かあるわ!」
ホバリングしながら総司令官に伝え、
「それなら移乗攻撃に持ち込もう!」
カイルがミーシアに返答した。
ミーシアは迅速に作戦の変更を各船に回すと、また最前線に戻った。
ミンティア軍は大砲を撃つのを止め、接舷して移乗攻撃に持ち込むよう事を図った。
敵の砲弾が飛び交う中、接舷に成功した船から兵士達がザルーラ軍の船に乗り込んだ。
兵士達の勇ましい雄叫びが、剣戟音と交じり合い、ザルーラ船の上では凄まじい戦闘になっている。
まだ移乗攻撃になっていないザルーラ船の海面下では、ビッグママが肌を赤く染めて鋼鉄化し、ザルーラ船に体当たりしていた。
紅鯨団の船も接舷して移乗攻撃に成功し、勇猛果敢な戦闘を繰り広げた。
「キャシーッ、大丈夫かッ!」トニーが言った。
「ええッ、なんとかねッ!」
二人は背中合わせになって、向かって来る敵に応戦している。
「うぉぉぉォォォォ~~~ッ!」
ゴッズは持ち前の怪力で、向かって来る敵の剣を弾き飛ばし、バッタバッタと敵を倒した。その後ろをスーザンが、肩を縮こませながら付き添った。ハッキリ言ってスーザンは戦いに向いていなかった。
「スーザン、俺の後ろから離れるなよ!」ゴッズはスーザンを気に掛けながら敵を倒している。
「ええ、今日のあなたはこれまでで一番カッコいいわよ!」
スーザンの言葉に、ゴッズは俄然ヤル気を見せた。
アリスとカトレーナは二人一組で見事な戦いを繰り広げていた。
「カトレーナ、ここは私がしのぐから、捕虜を解放して!」
「ええわかったわ!」
カトレーナは、デッキの上で一塊になって縛られている捕虜の縄を次々に切っていった。解放された捕虜達は、転がっている武器を手に取りザルーラ兵に立ち向かった。この捕虜が加勢に加わった事により、紅鯨団はこの船での見事な勝利を収めた。しかしまだ激戦は続いていた。紅鯨団は残るザルーラ艦隊の鎮圧にすぐさま向かった。
空中ではミーシアが炎王と共に、捕虜の乗っていない船を攻撃していた。炎王の吐く火炎は一撃で船を焼き払い、またミーシアの稲妻が放たれた時には、ザルーラ船のデッキから次々に兵士達が海に飛び込んで行った。
ミーシアと炎王の働きは船二十隻相当に匹敵するだろう。このザルーラ軍の小艦隊鎮圧は、さほど長期戦にもつれ込む事なく、ミンティア連合艦隊は見事大勝利を収めた。




