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アラサー中年冒険者ランクEのオレに、自称ランクBの少女が突然に妻となり、困り申した  作者: えん@雑記
二章

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041 妻は謝る

微長めです

 サンフラは、内心怒りに燃えていた。

 この四日で調べたマルクのランクはE。それなのに、自身の攻撃が防御されるからだ。


 サンフラの目的は、ラーミが大事にするマルクを切り刻む事。

 それが中々出来ないからである。

 

 サンフラが、ラーミに固執するのはもちろん訳がある。

 決して、可愛い少女と結婚し、アレやコレをしたい少女趣味だからではない。

 今から二十年前、二人の天才騎士が中央部隊に居た。


 一人は名門貴族出身のサンフラ、もう一人は田舎からきた赤髪の青年タクである。

 二人とも両親は既に他界しており、よきライバルとして部隊では噂されていた。

 そのうち、どちらが強いか、仲間内で話題になった。


 練習試合では、ほぼ互角。

 勝った方が次期部隊長、そう噂された時、サンフラは月夜の晩にタクへと決闘を申し込んだ。


 朝日が登る頃には、決闘場所には十数人の人間が倒れていた。

 どれもこれも名門貴族出の兵士である。

 騒ぎを聞きつけた当時の隊長は、決闘と偽り闇討ちをした貴族を処罰する事になった、計画ねり実行に移したサンフラは通常は騎士剥奪であるが、名門貴族ゆえ左遷で止まった。

 一方、一人の死者も出さずに収めたタクには部隊長の推薦があったが、タクはそれをあっさりと辞退した。

 部隊長はそれではと、タクに自分の養子となり貴族タク・ランフ・ヴァミューに成る事を押し付けた。

 サンフラは、飛ばされた地方でその話を聞き怒りに狂った、あの月夜の戦いでわかった事、タクは昼間の練習では手を抜いて居たのだ。


 

 平民に貴族が手を抜かれたのだ。


  

 サンフラは我慢したのだ、我慢に我慢を重ねて数年、ある計画を実行した。

 タクの妻であるサラの殺害。

 

 オークの群れをけしかけタクの目の前で、妻を殺す。

 タクは未来永劫妻を守れなかった事を悔やみ生きていけばいい。

 いくら天才と言えど、ハイオークを含む群れに襲われればひとたまりもないだろう。

 そこで妻をさらい、あらゆる事をしてタクに見せ付ける気でいた。


 タクは妻を守って死に、妻は生き残る、失敗という事で終わったのだ。


 タクが死に、ぽっかりと空いた心。

 復讐する相手はもう居ない。

 いや、居るではないか。

 ラーミの存在を知ったのだ。

 母であるサラは、ラーミを守った、おかげでサンフラは手を出せなく困っていたが、サラも死んだ。

 後はラーミを手に入れ、永遠と服従させるのだ。

 

 一方、そんな思いは知らないマルクは冷静に戦っていた。

 相手のサンフラは、最初は胴をなぎ払おうと仕掛けてきた、それを鉄根を縦にして防ぐ。

 次にくる連続攻撃の下段から上に振り上がる攻撃を体をずらして避けた。


(オレは自分を、いやラーミを守るために戦っている、なのに、この男の眼は濁っている……)


 練習用の剣と鉄根で競り合いの形になった。

 お互いの顔が近く、喋れば相手の耳には声が届く距離だ。

 マルクは疑問の一つを問いかける。


「一つ聞きたい」

「…………」

「なぜラーミに固執する?」

「…………」


 二人はお互いの武器で間合いを取り、一度体を離す。

 次の瞬間再び武器を重なりあった。

 サンフラは憎憎しい声でマルクへと話す。


「私が受けた絶望を味あわせる」

「絶望とは?」

「俺に恥をかかせた、黙って死んでいればいい者を、平民が貴族に逆らうなど……」

「そ、それだけなのか?」

「俺の幸せは、タクの家族を苦しませて苦しませて最後に殺す事だ、タクやサラと同じくお前も死ね」


 サンフラが武器を持つ手に力が入る。

 重なり合う武器同士が金属音を鳴らし始めた。

 マルクも鉄根を握り締めそれを真正面から受けた。

 段々とマルクは腹が立ってきた。


(自分勝手すぎる。恥? 恥をかいたから殺すのか? サラとは、あの時の女性。いやラーミの母じゃないか。あの時にはラーミの父、それに一般人も何人も死んだ)

「……てるの……か」

「Eの癖にしぶといな」

「馬鹿にしてるのかと聞いているんだっ!」


 マルクは吼える。

 リング外では、ニイケルが試合を実況しているが二人の耳には入っていないし、二人の声はニイケルには届いていない。


 会場全体は微妙な静けさを包んでいた。

 なんだかんだで、勝つのはサンフラと予想であったが、リングの上ではお互いに鬼気迫る顔で互角以上の打ち合いをしている。


 サンフラの持つ練習用の長剣や、マルクの持つ鉄根も折れ曲がる。

 それでもお互いに武器交換をする訳でもなく戦うのだ。

 

 サンフラの連撃が始まる。

 一歩後ろに下がり上段から振りおろす、さらに、Vをえがくように振り上げる。

 次に横から胴をなぎ払うかのように見せてからの突き。

 

 マルクが後ろへ下がると、サンフラは立ち止まる。

 少し折れ曲がった剣を真っ直ぐに頭の上へと持っていく。

 一刀両断の構えである。


 胴は隙だらけ、一手にかけた勝負だ。

 マルクは折れ曲がった鉄根を無理やりに伸ばした。

 横に構える、胴をなぎ払う構え。

 

 素直に勝負に応じたのはマルクはサンフラの眼を見たからだ。

 先ほどのように濁った目ではなく、全てをかけた眼をしていたからだ。

(ならば応えよう)


 マルクは吼え、走る。

 二人の体が接近する、サンフラの一刀の構えがマルクの体を襲った。

 肩から腹にかけ練習用の小さく折れ曲がった剣であるのに、めり込み切れていく。

 マルクは鉄根を手放し、全身の力を全部だしてサンフラの顔を殴った。


 横腹に来ると思っていた攻撃が顔に来た。

 死角からの突然の事でサンフラは、仰向けに倒れ飛び意識を失った。

 左肩から血を流したマルクが、折れた鉄根を再び持つと倒れたサンフラ顔まで歩く。

 気絶したサンフラの顔へ鉄根を叩き落せば死は確実である。


 誰かどう見ても、マルクの勝ちである。


 マルクの膝がガクッと落ちる。

 強力な力で後ろへと倒されたのだ。


「何やっているんですかっ!」

「ラ、ラーミ?」

「はいはい、いつも可愛いラーミちゃんですよー。

 直ぐに回復をかけます、うげ、傷口が大きすぎます。

 他人の傷は治しにくいんですよね……」


 わけもわからんず、リング上で寝かされるマルク。

 首だけを動かすと、様々な人間がマルクとサンフラの周りに集まっている。

 マルクの耳に一気に音が入ってきた。

 ニイケルが大きな声で演説をしていた。


「――ルク選手の勝ちです。

 大番狂わせでしたー。現在双方の選手には傷を治してもらっています、なおオッズのほうは――」


 再びラーミを見るとラーミは必死に両手をマルクへと当てている。

「終わったんですよ。

 マルクさんの勝ちです、それにごめんなさい。私が出るはずだったのに……」


(そこを謝られるとオレも困る)

「いや、きにしないでくれ。未完成品を飲むとは思わなくて……」

 

 キャ。

 サンフラさん。

 寝ていてくださいっ。


 様々な声がマルクの耳に入った。

 声のするほうへ向くと、サンフラがよろよろと立ち上がっていた。


「試合は終わったのか……?」


 誰に聞いているのか謎の呟きである。

 ラーミがマルクの治療をしながらそれに答えた。


「はい、おわりました。

 マルクさんの勝ちです、今後変な事はしてこないように。って聞いてますかー」


 サンフラの眼は二人を既に見ていない。

 何処にも見ていないような感じであった。


「そうか……負けたか……」


 サンフラは自らの胸に手を埋めた。

 周りの医療スタッフが小さい悲鳴をあげ後ろに下がった。

 体全体が変色しはじめ、筋肉が膨張しはじめる。

 元の体の四倍はありそうな巨漢になり、ひたいから、第三の眼が現れた。

 そして最後に角が生えた。


 誰かか叫ぶ。

 魔物だっ! と。

 獣のような雄たけびをあげると、サンフラは近くに居た医療スタッフを殴ろうとしていた。

 近くに居たニイケルが、そのスタッフを助けた。

 先ほどスタッフが居た場所には大きな穴が開いている。

 マルクとラーミはこれと同じのを見たことがある。

 

 ムツナイで起きた賊退治、そこで普通の人間が魔物へと変わっていったのを。

 

「マルクさんっ! ラーミさんっ!」


 ニイケルが胸を押さえながら叫ぶ。

 その胸からは青白い光がもれだしている。


「ここは危険ですっ! にげてくださいっ」


 ニイケルの口が小さく動く、霧の魔法詠唱。

 ニイケルを中心に濃霧が広がる。


「ラーミ、オレを置いて逃げるんだっ……」

「感動的な場面ですね」

「何を馬鹿な事を」

「で、ですね。

 自身の力を過信するわけじゃありませんが、アレを退治してきます」

「……出来るのか?」

「さぁ……。

 でも、一人で逃げるほど絶望はしてませんし、逃げたくもありません」

「そうか、いや、ラーミならそうだろう」

「キャっ」


 マルクは怪我をしたままの右腕を使いラーミを抱き寄せた。

 体から血が再び出るのを気にする事は無くラーミの口へ自身の口を重ねる。


「何故か、こうしたほうが良いと思ってな、お互いに何があった時に後悔はしたくない。

 …………。

 ラーミ?」

「は、はいっ! ななななんでしょう!」

「いや、サンフラをだな」

「え、ああ。任せてくださいっ!」


 霧がはれて来る。

 血だらけになったニイケルが、サンフラだった者と戦いを繰り広げていた。

 他のスタッフは既に逃げたらしく、リング上には四人だけが残っている。


「ちぃっ。ボクはこれ以上お二人の心配まで出来ません、巻き添えを食らわないようにお願いします」


 青い剣を胸元で構えると、その左右に現れる大量の氷の矢。

 それが一斉にサンフラだった者へとふりそそぐ。

 その全てを弾くと、サンフラは腕を振るう、ゴムのように伸びニイケルの腕を掴むと、ニイケルの体を空中に上げ、リングへ叩きつけた。


「あ、じゃぁっ。気合、熱血、必中、幸運。行って来ますっ!」

(よくわからないが、大丈夫そうか?)

「わかった」


 ニイケルへトドメを刺そうとしたサンフラの手。

 その手をラーミは掴んだ。

 サンフラだった者はその腕を引っ張る、ラーミは離さない。

 両者の間で力比べがおき、サンフラだった者の腕が根元からちぎれた。


「と、とれちゃった……」

「ラーミっ。前だっ!」

「へ?」


 ラーミが取れた腕を捨て前を向くと、サンフラだった者の周りに火球が大量に浮かんでいる。

 ぶつけるつもりなのだろう。

 ラーミの背後にはニイケルが苦しんでいる。避けたらニイケルが終わるのだ。

 ラーミは精一杯手を広げニイケルを守るように立った。


 マルクは傷口が開くのを気にしなく走った。

 二人の前へ背中を向け立ち上がる。

 マルクは膝を付き苦しむ、絶命ではなかったのは実はニイケルがありったけの魔力で水のシールドを張ったわけだが、二人は気付いていない。


「馬鹿ですかっ!」

「ああ、どうやら馬鹿なようだ。後は頼んだっ」


 ラーミは、膝を付き倒れるマルクの横からジャンプする、サンフラだった者の胸へと左手を添えた、その場所は薄く光っている所だ。


「私はあなたを知りませんし。

 ごめんなさい、でも、ゆるしません」


 左手を標準にし右手でえぐり込ませた。

 右腕は体を貫き幾つかの内蔵を破壊する、小さな足を使って腕を引きぬくと後ろへジャンプした。


 サンフラだった者は胸をえぐられ体がしぼんでいった。

 最後にサンフラの形へと戻って仰向けで倒れた。

 

次回更新日はちょっと空いて20~21日頃になりそうです

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