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アラサー中年冒険者ランクEのオレに、自称ランクBの少女が突然に妻となり、困り申した  作者: えん@雑記
二章

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040 妻は罠にひっかかる

 祭り、もとい試合当日である。

 マルクは宿屋の部屋内で軽く頭を振って周りを見た。

 トットマ率いる大人組みがあちこちで死んだように倒れていた。

 もちろん死んではいない。酒の飲みすぎでダウンしているだけである。

 倒れているのはラーミ、トットマ、ミイナ、アケミ。

 

 マルクは空きビンや、大量に詰まれた空の皿などを、かき分け歩く。

 ソファーの上でぶどう酒のビンを抱きかかえて寝ているラーミを起こした。

 頬をペチペチと叩くと、直ぐに目を開けるラーミ。


「ふぁあああ。

 お、おはようございます、マルクさん」

「ああ、おはよう。朝だ」

「早いですねー。さて、皆さんも起こさないとですね」


 ラーミは近くにあった銀の皿にスプーンを使い叩く。

 室内にカンカンカンと目覚まし代わりの音が鳴り響くと、トットマ達はゾンビのように起き上がる。


「や。やめて……。

 頭に響くっ」

「うう……、もう朝か」

「寝かせて欲しい」


 トットマ達が、頭を押さえて立ち上がった。

 何故このような状態かというと、誰かが言った前夜祭をしようという事だった。

 誰かとは、もちろんラーミである。

 

 反対は数人居たが、明日の緊張をほぐすのに飲むのもいいだろう。と、いうマルクの案で反対意見は却下された。

 ようは、マルクも飲みたいのである。


 後は察しの通り、ザルもとい、ザルより酷い二人のペースに飲まれたトットマ、ミイナ、アケミに他にも、ユリやマイコなど年齢が高い者は居たが、途中で帰った。

 最終的に、マルク、ラーミ、トットマ、ミイナ、アケミがつい先ほどまで飲んでいた。


 部屋がノックされ、ムツナイ冒険者ギルドのニイケルが部屋の中へ入ってくる。

 入った瞬間に鼻を摘んだ。


「うわ、くさっ。

 酒くさいですよ、この部屋……」

「あっ、ムツナイさんおはようございます」

「おはようございます。

 それよりも、なんですがこれは」

「ニイケルよ、そんな怒るこたあない」


 ニイケルの背後から老人の声が聞こえる。

 ニイケルよりも背は低く隠れるようにしていた老人が室内を見渡した。

 ムツナイ冒険者ギルドマスターのロウ爺である。


「あ、ロウ爺ちゃん」

「おう、面白そうな事やっとるのう」


 トットマやミイナ、アケミが小さく誰?と聞いてくるので、ラーミはムツナイのギルドマスターですよと、説明する。

 そのとたん、フラフラに成りながらも立ち上がり敬礼をする。

 ラーミが礼儀を知らないだけで、偉いのだ。

 

「ほっほっほ、ワシに礼儀は不要じゃ。

 ロウ爺と呼んでくれ」


 マルクはロウ爺にトットマ達を説明しようとする。


「こちらは……」

「大丈夫じゃ、ミイナとこちらの大きい女性はアケミじゃろ?。

 で、さらに小さいのから、痴女まで全部面倒を見ているのがトットマじゃったな。

 羨ましい限りじゃ、ワシが後五年わかければのう」


 恐縮ですと、トットマが何故か謝ると、ニイケルが咳払いをする。

 五年でどうにかなるとは、いえ、何でもありませんと、小さく喋った、聞こえているはずのロウ爺であるが、聞かなかった事にして話を続けた。


「ムツナイに寄ったさいは是非にギルドへ来てくれ」


 ギルドマスターに、顔と名前を覚えてもらい嬉しがる三人。

 ニイケルが代表して喋る。


「では、外に馬車を用意してますので行きましょうか」


 マルク、ラーミが一緒の馬車で、ニイケル、ロウ爺が別の馬車である。

 トットマ達は後から行くそうだ。

 三日間慣れ親しんだ練習場。イベントフロアまで着く。

 関係者入り口から入ると見知った顔が出迎えてくれた。

 我々は準備があるのでここでと、ニイケル達とわかれる。


 選手控え室に入るマルクとラーミ。

 マルクは直ぐに動き始めた。

 袋から幾つかの野草の粉末を取り出して持ってきた水へと溶かす。

 透明な水が半透明な青色へと変わっていく。


「マルクさん何作っているんです?」

「ああ。二日酔いに効く薬だ」

「へえー……。

 なんでしたっけ、ええっと……。

 そうだっ、以前みた痺れ薬の色に似てますね」


 マルクは慌ててビンを落とすかと思った。

 ラーミの顔は疑っているような顔ではなく純粋にそう思っただけの顔をしている。


(するどいな、オレが作っているのは強力は眠り薬だ)

「薬草はどれも似た色になるからな」

「にしても、そんな物を飲むとはマルクさんも歳なんですかねぇ」

「出来上がりは、酒のように旨いぞ」

「マジですかっ!」


 ラーミはテーブルにあるコップを掴むと、一気に飲んだ。

 

「た、たしかに。喉に来て美味しいんですけど、脱力感というか」

(かかったっ!)

「ラ、ラーミっ、それはまだ完成じゃなくて……」

「なんれすと……、あの、急にねむけがですね、その」

「ああ。これから入れる薬で眠気を飛ばさないとダメで、残りの材料はトットマに買いに行って貰って……」


 もちろん、買いに行ってもらっているのは嘘である。

 崩れ落ちるラーミを両手で押さえると、小さく呟く。

 

「既に聞いてないな……。

 なに、この量なら直ぐに目が覚めるはずだ、それにしても」

(軽い……。まだこんなに小さいじゃないか)


 近くにある長椅子へと寝かせるとマルクは気合をいれた。


「ラーミさん、出番ですっー」


 ニイケルが様子を見に来た。

 ラーミを連れて行く時間なのだろう、寝ているラーミとマルクを見て不思議な顔になる。


「すまない、ラーミは間違えて睡眠液の原液を飲んでこの通りだ」

「な……。

 相手は既にやる気十分です、ここでラーミさんが出て行って相手の鼻を折る作戦がですねっ」

「いや、なに。

 オレが行こう、元から向こうはオレが出ると思っているし時間稼ぎぐらいは出来る」

「で、でもですね……。相手はランクでいうとAからBの強さと、それに失礼ですがマルクさんばEランクと聞いています」


 ニイケルが反論するのにはちゃんと理由がある。

 トットマ達はともかく、ニイケルはマルクの強さを知らない。

 ラーミは書類で確認し、実績も聞いている、賊のアジト壊滅の時も人質だった女性達と、犯人から聞いたのはラーミの強さだけだった。

 マルクの活躍は聞いていない。


「暫くすれば起きるだろうし、試合を待たせるわけにはいくまい」

「それはそうですけど……、少しお待ちを。

 ロウギルドマスターに確認してきます」

 

(確認もなにも、そうするしかないだろうに)

 マルクは、ニイケルの背中をみてため息を吐く。

 

 結局そのまま行く事に決定したらしく、ニイケルが再度呼びに来た。


 リングにあがると歓声があがる。

 数万人は入るとは言われている観客席の半分は埋まっているのだ。

 よく見ると、一際豪華な場所にギルドマスターのロウ爺やフィ、それとマルクを捕らえようとしたスライクや他の男女も見えた。

 

(皆暇なんだな……)

 

 他人事のように感じ前を向く。

 憎悪の眼を向けるサンフラ・マリュ・クロと視線が合った。

 軽装鎧を着こなし、手足には金属製の防具。

 練習用の長剣を腰に差し、マルクをみてあざ笑う。

 その視線のぶつかり合いを知ってか知らないか、ニイケルが大声で演説を始めた。


「今回は司会を勤めさせていただきます、普通の冒険者です。

 声のほうは他の魔法使いの方と協力しボクの声だけが風に乗って聞こえていると思います」


 マルクは周りをみると、リングの外に若い人間が何人も見えた。

 それぞれに杖をもち杖が光っている。


「今回はお互いの持つ遺言状に従い出来た争いです。

 相手である花嫁は、強い者が一番と」


 保険をかけた言い方であった。

 強い者が一番、裏を返せばラーミが一番強いのだ、少なくともハイオークを一撃で倒す人間はそうそう居ない。

 …………はずである。

 

 演説は今だ続いている。

 サンフラが小さく、くだらんなと、呟いた。

 聞こえるはずの無い声であるが、マルクは何故か聞こえた。


「おい、司会。

 何か時間稼ぎをしているようだが、さっさと始めたらどうだ?

 俺を見世物にしているんだ、何か策があるんだろうが、その前にお前の首と胴を二つにしてもいいんだぞ」


 図星を突かれて、青い顔になるニイケル。

 小さい声で、マルクさんすみませんと、言い残し、大声をだす。


「長々と申し訳ありせん、相手が参ったと、言うまでのルール無用の試合開始です」


 リング外にいる魔法使い達がそれぞれ一斉に鐘を鳴らした。

 

次回更新予定日は5月17日AM7時です

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