025 妻はますます怒りに燃える
結婚したと思ったら、妻には婚約者がいた。
良くあって困るが、実はよくある話。
もっとも、当事者にとってはたまったものじゃない。
と、言う事でと、ギルドマスターのフィはラーミへと重い口を開く。
「個人の意見はともかく、ギルドとしてお前ら二人の結婚は認められない事となる」
「横暴です、横暴」
「そう怒るな……で道は二つある、黙って受け入れるか受け入れないか」
「受け入れるわけありませんっ!」
「のわりには、マルクとの結婚はすんなり受け入れたよな」
フィの疑問にラーミは慌てて弁解をしはじめる。
「あれは、サインもしましたし、悪くないなって思って居ましたし……それにあった事のない人間と結婚はしません!
マルクさんの場合だって最初は断ろうと思っていたんですし、あってから、あっいいかもって思いもして……」
「ふふ、そう照れるな」
ラーミはマルクをチラチラとみると助けを求め始めている。
(驚かされる事が多いが、悪くは無い)
「俺の場合も、そこまで嫌では無かったのかも知れない、いや悪くないと思ったから結婚した」
「知れないってのは、引っかかりますけど……その相手も受け入れられないって出きるんですよね!
そもそも後から出たほうが有効とかありえませんっ」
「そりゃなぁ……。ここをみろ」
フィは送られてきた紙を見せる。
裏側をみせると何もうつっていないが、懐から大きなレンズを出すと二人に見せ付ける。
日付と数字が書かれていた。
もう一枚、ラーミが持ってきた紙の裏側を見せた。
こちらも日付と数字が書かれているが、こっちのほうが新しい数字になっている。
「とまぁ、このように。
何故か、遺言状より古い紙に書かれている。意味はわかるな?」
誰の仕業かしらないけど、権力を使いラーミと結婚しようとしているのだ。
そのためには、汚い事も平気でやる人物なのがわかった。
「そうだとしても納得が……」
「まてまてまて、私に文句を言っても進まない。王都にいって、直接破棄をしてこい。
この相手だってどんな奴かしらんのだろ?」
サンフラ・マリュ・クロの名前をもう一度眺める。
首をかしげ本当に記憶にないと、ラーミは追加して喋る。
「聞いた事ありませんし、わかりましたっ!
マルクさん直ぐに行きましょう!」
話を振られたマルクは腕を組む。
(俺も行くのか……。いや、当然だろうな。
そういわれると、少し腹も立つ。
平凡なままで満足していたんだ。
突如できた妻も、妻というよりは子みたいな感じではあるが、楽しいと思い始めてる。
なおかつ、二人で飲む酒は旨い。
強いのかと思うと、寂しがりやで直ぐに寝るときは抱きつこうとする。
そういえば、気にした事はなかったが、ラーミ……妻は俺の事を理由も無く馬鹿にはしてこない。
元から結婚なんて興味はなかったが、二人で過ごす内に――)
「マルクさーん。おーい……」
マルクが考え事をしていると、ラーミの声で思考が戻される。
「すまない、考え事をしていた」
「珍しいですが、大丈夫です。
ではマルクさんと一緒に行きましょう、私の足なら四日もすれば――」
「却下だ。お前らだろう、街道を爆走で走る魔物と、空を飛ぶ荷車って……」
「なっ!」
以前サンガク山へ行く時に使用した二人羽織での事である。
それすらもギルドマスターにばれていた。
むしろ、アレだけ変な格好をして、噂にならないはずがない。
「サンガク山までなら、まだなんとか、もみ消せるが」
「わかりました……でも、サンガク山までならまだいいんですね」
「ほどほどなら許す」
「では、直ぐにでも行きます! 直訴です、直訴!」
◇◇◇
ギルドマスターとの話は終わり、宿へと帰る。
王都にいくとなるとそれなりの日数はかかるのだ。
帰りにギルドに預けていたお金を受け取り、それぞれ準備をする事となった。
夕方には、トットマとミイナが話を聞いたらしく訪ねてくる。
宿の一室へと招き、これまでの事を話し合った。
ミイナが口を開く。
「残念ね……。わかったわ、家はユリのほうへ一次戻しておくわ。
他に私達で何かできる事はないかしら?」
「マルクさんっ! あれですよあれ」
ラーミは手を叩いて大声をあげる。
長年の夫婦になれば、アレコレで会話は出来るが、アレといわれても、マルクにはまだ通じない。
「何の話だろうか?」
「アレです、マルクさんのご実家の話です」
「実家といっても孤児院だ」
「ええ、ですから。孤児院の子供に簡単な仕事が出来るように頼んでみてはどうでしょう」
「ラーミちゃんどういう事?」
ラーミはミイナに説明をする。
マルクが育ったのは孤児院で、今までは微々たるものであるが寄付を続けていた事。
マルク達がマグナを立つとそれも出来なくなるし、寄付し続けるのはいいが、寄付を当てになると孤児院がゆくゆくは大変になる事。
「そこでですね、以前マルクさんが行っていた薬草の採取を子供達にできるように手配をですね」
「ラーミ、それは迷惑だ。彼女達に何もメリットがない。
冒険者というのはメリットが無いと動かないのが鉄則だ」
マルクの反対する言葉に、トットマとミイナが噴出した。
「君達がそれを言うのかっ。
僕の傷を治してくれたのにメリットはあったのかな?。
ミイナ達を助けてくれたのもメリットはあったと思えない。
冒険者はメリット以外にも恩義には恩義で返すって言葉もあるんだよ」
トットマが言うとミイナもその意見に賛成した。
「そうよね、それぐらいであれば引き受けるわよ。
幸いわたし達のパーティーは人数も多いし。
謹慎あけるまで暇なのよね、監督という立場ならギルマスも許可ぐらいだすでしょうし。
大丈夫よあぶない事は絶対にさせない」
「そ、そうなのか。すまない、ただシスターアンの意見を聞いてからになるが大丈夫だろうか?」
「もちろんよ」
マルクはテーブルに手を付いて頭をさげるので、トットマとミイナが慌ててマルクの上半身を元に戻そうとした。




