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アラサー中年冒険者ランクEのオレに、自称ランクBの少女が突然に妻となり、困り申した  作者: えん@雑記
一章

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022 妻は緊張をする

 トットマ達の用件が思ったより早く終わったのと、トットマがラーミへと買ってくれたケーキが予想よりも多すぎる為に、結局はマルクの育った孤児院へと行く事に決まった。


 宿を出て歩き出すと、元気いっぱいだったラーミの口数が段々と減って行く。

 マルクは元々喋るほうではないので、ラーミが黙ると二人ともほぼ無言だった。


 孤児院の前へと着いたとたん、ラーミがマルクの服を引っ張る。


「マルクさん、私の服装、変じゃないですかね?」

「ああ、変ではない、緊張しているのか?」

「とってもです! シスターアンさんはマルクさんの母親みたいな人なんですよね。

 その人物に挨拶するとなると、緊張もしますっ!」


(そういうものだろうか……)


 マルクが一歩前に出ようとすると、後ろから元気な声がかかった。


「あれ? オジサン。玄関前でどうしたの? それにその子供、あっ、新しく一緒に暮らす子? そんな緊張しなくても大丈夫だよ」


 新しく一緒に暮らす子と表現するのは、一人じゃないよという、メルなりの優しい心使いだ。

 

「あの、私はですねっ」

「ウチはメル、この家で一番上のお姉さんって所」


 メルは腰を曲げると目線をラーミへと合わせて喋る。

 ガサツであるが、気の利く少女である。


「あの、えと、ありがとうございます。でもですねっ!」

「いいよ、いいよ。

 最初は皆不安だからね。

 ほら、オジサン。新しい子が緊張してるじゃん、ばあちゃんを呼んで……、って来たみたい」


 メルがラーミを建物の中へ連れて行こうとする前に、シスターアンが建物から出て来た。

 外の騒ぎで様子を見に来たらしい。


「あらあら。マルク、今日はどうしました?

 先日は沢山のお土産をありがとうございます、今は何処に住んでいるんです?

 お礼を言いに家へ向かいました所、その焼け落ちてまして、それに彼方のお嫁さんという方もあって見たいんですけどね」


 話の終わりそうにないシスターアンをみて、メルは割り込み入ってくる。


「ばあちゃん、話が長いよ。新しい子、オジサンが連れてきた新しい子。

 ねー、名前はなんていうの?」

「そうでしたね、気をつけましょう」


 メルに言われてラーミはますます緊張し始める。

 

「あの、その。

 入居者ではなくてマルクさんの妻でラーミといいます……」


 最後は消え去りそうな声だった。

 シスターアンとメルが顔を見合わせた。

 マルクに視線が集まるので、説明を始める。


「ああ、ラーミの言っている事は本当だ、その紹介が遅れた」

「マルク……。彼方はいつも……おめでたい日ですね、メルっ」

「何ばあちゃん?」


 シスターアンは、修道着のポケットをまさぐり、銀貨や銅貨を取り出すとメルに渡す。


「これで、お酒を買って来てください」

「えっ! ばあちゃん。酒って、ここじゃ禁止っ」

「ええ、ですけど。

 こんなおめでたい時は主も許してくれる事でしょう。残った分は適当に皆さんのオヤツでもどうぞ」


 メルが、ばあちゃんの考えが変る前に、じゃぁいってくると、言うと来た道を戻り走っていく。

 困惑するのはマルクであった。


「シスター、そんな無理に使うような事は……」

「大丈夫ですから、本日ぐらいは、さぁラーミさんどうぞどうぞ」


 シスターアンはラーミの手を握り建物へと入っていった。

(まるで、孫を連れて歩く人だな……)

 考えた事は心にしまい、マルクもその後を続いて入っていく。

 


 ◇◇◇


 

 メルが果実酒などを買い戻ってくると、調理がはじまる。

 孤児院はシスターメルのほかにも、通いの大人も数人いるが遅い時間なので既に帰宅していた。

 料理が出きるのは、シスターアンにメル、それに大きい子供達が色々と作っていった。

 

 夕食の時間になり、大きなテーブルには様々は料理が並んでいた。

 どれも材料費は安いがお腹にたまり、栄養があるものばかりである。

 マルク自身は、何度も来ているので周りも知っている。

 他の子供は、そのマルクの隣にいるラーミへと注目していた。


 ねーねー。マルクにいちゃん結婚って本当?

 隣のいるのがお嫁さん?

 私より小さい……。

 マルク兄、もう子作りした?

 およめさんの名前はー?


 など質問が飛び、その度にまだ少し緊張しているラーミが答える。

 子供というのは、興味があれば何でも聞いて見たい衝動があるのだろう。

 途中に性に関して質問した子は、シスターアンが背後に回り、後頭部を持っていたオタマで一撃でしとめた。

 この子が目が覚めるのは夕食会の後半になるだろう……。


「はいはい、質問ばっかりじゃ、ラーミさんも困りますよ、皆さんの事も教えてあげてください」


 シスターアンの言葉で、次々に自己紹介がはじまった。

 その後はまったりとした時間が進む。

 楽しい夕食会も終わり、子供組は既に寝室に入っていった。

 全員を寝かしつけたメルが戻ってくる。


「ばあちゃん、全部終わったよー」

「はい、ありがとうございます。

 メル、あなたもどうですか?」


 シスターアンは果実酒の入ったコップをメルへと差し出す。

 メルはテーブルを確認すると、マルクとラーミの場所にも果実酒が既に注がれていた。


「ばーちゃん、ありがと。あっ美味しい」

「いえいえ、あなたが隠れて飲んでいるのは知っていますし、ほどほどであればいいんですよ、それに……」


 シスターアンは少しラーミをみて、言いにくそうにしながらも続きを話す。


「メルが禁止で、メルよりも若いラーミさんが飲まれているんですし、ただ他の子にはお酒の味を覚えさせたらダメですよ」

「はーい」


 メルとの話が終わると、シスターアンはマルクへと話しかけた。


「では、家のほうはなんとかなりそうなんですね」

「ああ、知り合いが物件を用意してくれてな」

「失礼ですが、前の家みたいな家ではないでしょうね、夫婦といえど何もかも一部屋で済ますのは……」

「大丈夫だ、ラーミは別に一部屋でもいいらしいが、良い所を紹介してもらえてな」


 マルクは新しい家の間取りを簡単に説明した。


「明日にでもラーミと見に行こうと思ってる」

「ラーミさん」

「は、はいっ!?」


 シスターアンはそれまで、マルクの横でちびちびと果実酒を飲んでいるラーミへと話しかけた。

 ラーミは驚き、少しだけ果実酒をこぼす。


「マルクは口数が少ないですけど、決して冷たいわけじゃありません。これからもよろしくお願いしますね」

「だ、大丈夫です! もう、十分に堪能してます!」

「シスターアン、こう本人の前でそういう事は辞めてくれ」

「あらあら、普段はいう事をききませんのに、さて私達も寝る用意をしましょう。

 部屋を用意してきますので失礼しますね」


 シスターアンが部屋から出ていくと、マルクはメルが考え込んでいるのを目にした。


「メル、どうした」

「え、いや?」

「メルさんどうしたんです? 私のほうを見てますけど……」


 ラーミも不思議に思い訪ねてみる。


「ねー、オジサンが買う家って、橋の向こうにあって井戸が複数あり、浴室つきのよね」

「ああ、そうだとおもうが?」

「そっかー」

「何かあるのか? 紹介してくれた人間も歯切れが悪くてな」

「いや、入る前だから言うけど幽霊騒ぎがある家でさ、貴族がだれか管理してるはずなんだけど、誰も買い手がいないって話。取り壊す話もあったけど近所の人が反対していてね」


(なるほど、ミイナが話さなかった訳だ)


「幽霊か……」

「いませんよっ!」


 突然大声をあげるラーミに視線が集まる。

 大きな声を出した事に慌てて謝ると、静かに喋り始めた。


「幽霊なんて、幻覚の一種です。いると思うからそう見えるのです。

 メルさんも子供っぽい事を言わないで現実をですねっ!」

「あはは、ウチ。君より上なんだけどっー」


 メルはラーミを背中から抱きつくと話題を続ける。


「怖いのかなー? 怖いよねー?」

「ち、ちがいますっ!

 思っていたんですけどっ! マルクさんをオジサンというのも失礼と」

「じゃぁ、ウチが、マルクさんって言うとラーミちゃんは嫉妬するんじゃないかなー」

「え、いや、それは、まぁ……」

「じゃぁオジサンのままでいいじゃん」


 二人がじゃれあっていると、シスターアンが部屋の用意をし終わって戻ってきた。

 仲良さそうにしているのをみて微笑む。


「あらあら、仲がいいんですね。

 狭いですけど部屋が出来ましたよ、さ。メルももうお休みなさい」


 シスターアンは一言いうと廊下へ行く。

 メルもラーミから離れると、ラーミの頬へキスをして廊下へ消えた。

 廊下から、はーい、じゃっラーミちゃんおやすみーと、言い残す。


「まったくもう、霊なんてものは……。

 あ、マルクさん。

 寝るときに、手を握って寝ていいですか?」


(怖いのか……。そもそも霊が居ないというが、世界にはゴースト系という魔物もいるだろうに、見た事はないが、ゾンビだっているはずだ)

 突っ込む事はせず、ラーミの手を握り、用意された部屋へと向かうのであった。

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