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アラサー中年冒険者ランクEのオレに、自称ランクBの少女が突然に妻となり、困り申した  作者: えん@雑記
一章

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014 妻へ隠し事

 外にいた二人は直ぐにギルド内へと戻された。そのままレンタル会議室へと通される。

 粗末な椅子とテーブルが並んでおり、一般の冒険者にはなじみがない部屋だ。

 主に商談などに使われる部屋であるが、密室なのもあり利用者は少ない。


 案内してくれたギルド員から茶を渡され暫く待っていてくださいと扉を閉められた。


 暫く待っても誰も来ず、椅子に座ったラーミは足をパタパタとさせて愚痴をこぼし始めた。


「暇ですねー……」

「そのうち来るだろう。そうだ、所で分配なんだが……」

(金の分配を忘れていたな、ハッキリした方がいいだろう。俺はゼロでいい)


 その事を切り出そうとするとノックも無しに扉が開かれる。

 ギルドマスターのフィが上機嫌で入ってきた。


「待たせたな」


 マルクは立ち上がり礼をする。

 フィは、嫌そうな顔で手をパタパタと振った。


「私に堅苦しい礼はいらん。ぶんどってきたぞ」

「ぶんどって来たというのは?」

「もちろん、商人達からだ。

 いやー儲かった、ええっとだな。皮、目玉、爪合わせた金額が」


 ドンと皮袋をテーブルに載せた。

 小ぶりではあるが、ずっしりとした重みがあり、ガチャガチャと音を立てている。


「Bランクの依頼報酬に加えてサービスしてもらった端数は切り上げで金貨二百二十枚。

 さすがに多いだろうから、ここには五十枚ほど持ってきた」

「なっ……」


 マルクは思わず言葉を失う。

 一般Eランク冒険者が手に入れていいような金額ではない。


「なんだ、不服か?

 これでも結構頑張って色つけたんだぞ?」

「い、いや。

 多すぎて言葉が出なかった」


 マルクが採取してくる薬草は袋びっしりつめても金貨一枚いくかいかないかだ。

 単純計算で言えば二百五十回分の仕事である。


「案外小心者なんだな。で、全部はもっていけないだろし、ギルドで預かる手続きをしておいた。

 これがカードだ」


 預かりカードという、手のひらサイズの黒いカードが置いてある。

 説明を聞いたところ、冒険者カードと共に出せば他の街のギルドでも引き出せる仕組みらしい。


「じゃぁ、私はまだ商人の奴らと打ち合わせがあるから」


 フィは部屋から出て行く。

 マルクとラーミが顔を見合わせた時、もう一度フィが入ってきた。


「っと、言い忘れる所だった。

 今日は裏口から帰れ、じゃないと囲まれるぞ」


 一言添えると本当に出て行った。

 マルクは袋から金貨を一枚取り出すと、

「さて、ここから貸していた分を貰おう。

 銀貨三枚のおつりは明日まで待ってくれ」

 と、言ってから残りをラーミの前へ差し出した。


 ラーミはきょとんとする。


「あの、これはなんでしょう?」


 ラーミの声が少し不機嫌だ。


「いきなり返せというのも横暴だろうが、俺も無一文になると困る、すまない」

「そうじゃなくてですね!」


 ラーミの顔がもっと険しくなってきた。

(なんだ、怒っているよにみえるが……やはり明日返して貰った方がよかったのだろうか)


「マルクさんっ!」

「な、なんだ突然」


 いきなり怒鳴るので、マルクは驚く。


「あのですねー……私達は夫婦です! いえ夫婦になったんですよ?」

「そうだな」

「これは共同依頼なんですっ! そりゃ、夫婦の間でも貸し借りはしないほうがいいと教わりました。でもこれは共同依頼です。きっちり半分にしましょう」

「しかしだな、俺は今回何もしてない」


 マルクは旅を振り返り考える。

 担がれて酒飲んで山登って審判をして転がされてである。

 その事をラーミへと伝えた。


「確かにそうですけど、結婚しなければ依頼も受けませんし、いい男なんですから自信を持ってください!」

「俺が?」

「はいっ! その小さな声でいいますけど、本気で嫌だったりマルクさんが私の強さに引いたり納得しないのなら、サンガク山に置いてきてます……」


 ラーミの告白を聞いて思わず口が開いた。

 少女少女と思っていたが、ラーミも一人前の女性としてマルクを見ていたのだ。


 その事に嬉しく思うとマルクは素直に頭を下げる。


「すまない、俺が変に考えすぎていたようだ」

「マルクさんっ!」

「ラーミ……」


 二人が見詰め合っていると、会議室の扉が開く。

 長い耳をピコピコさせるとギルドマスターが面倒そうに顔を向けた。

 ここはそういう場所じゃないんで、帰ってからやってくれと……。



 ◇◇◇


 赤面しつつ二人はギルドを後にする。

 金はとりあえず生活費で金貨十枚、残りは四十枚は半分に別けた。

 なじみの酒店で景気良く金貨を使い酒を買う。


 店主に新しく出来た妻だと紹介すると店主の口が開いていたがマルクはもう気にしなかった。

 二人で持ちきれるギリギリまで酒とツマミを買うとマルクの自宅で飲んだ。


 それはもう飲みまくった。


 マルクは眼が覚め辺りを見回す、日差しは高く部屋の中は既に明るい。

 振り返ると同じベッドでラーミが小さく寝ている。


「夢ではないな」


 確認するように呟くと、ラーミの体へと毛布をかける。

 その動作に起きたラーミが、おはようございますとマルクへ声をかけた。


「すまない、起こしたか?」

「いえ、大丈夫です。どこか行くんですか? 直ぐ起きますね」

「いや。今日は一人で行動したいんだ」


 マルクの言葉に、驚きを隠せないラーミ。


「そ、そんな……新婚なのに妻に黙って……噂の浮気という奴ですかっ!」

「いや、その」


 マルクがうろたえると、ラーミは直ぐに何時ものトーンに戻した。


「冗談ですよ、では、私は掃除でもしていますので」


 その変わりようにマルクは驚くと直ぐに表情を戻した。

 では、出かけてくると小さな家へを出た。


 町の中心部から離れた場所にある孤児院、何時もマルクが寄付を持って行っている場所である。


 老シスターのアンが庭で仕事をしていた。

 菜園から野菜を取っているんだろう。

 塀を挟んで挨拶をすると、一瞬けげんな顔をするがいつも通り挨拶をしてきた。


「マルク、今日はどうしましたか?」

「シスターアン。その、なんていうか……」

「あらあら、普段は直ぐに言うのに今日はどうしたんでしょうね、表に回りますね」


 マルクが小さい頃から孤児院で働く人物で、現在は教会で通いのシスターをしながら孤児院の運営を営んでいる。


 玄関前で、シスターアンは優しい笑みを浮かべる。

 意を決してマルクは喋る事にした。


「わかった。言おう、報告が遅れたが結婚してしまった」

「はい? 誰がです?」

「いや、だから、オレが……。

 本当は連れてこようかとおもったが、まず先に報告をとおもって」


 少しの時間あと、シスターアンが大きく喜ぶ。


「まぁまぁまぁまぁ。

 なんという事でしょう、お祝いをしなければなりませんねっ。

 先日までそぶりも見せなかったのに、突然結婚とは……この十数年、本当にこの孤児院へと寄付をよくしてくれました。これからは自分のために使うんですよ」


 目元を押さえ泣き出しはじめる。


「そ、それで、シスターに相談があるんだ」

「なんでしょう。

 このヨボヨボのシスターに相談とは」

「女性が喜ぶ物を贈りたいと思うんだが。

 その、何がいいか、わからなくて」

「なるほど、わたしも歳ですので……わかりました。

 メルを呼んで来ます」


 一度孤児院の中へ戻ると直ぐに少女を連れてきた。

 髪は短く健康的な肌、服のサイズが少し小さいのか胸が強調されている。


「あ、肉のおっさんじゃん」

「これメルっ!」

「いや、構わない」

「今日も寄付? だったら今日のご飯は肉が食べれるわねっ!」

「メルっ!」

「シスター、そう怒らないで欲しい。

 少ないが、ちゃんと持ってきた」


 マルクは自分が持ってきた金貨四枚が入った袋をメルに手渡した。


「マルクっ! マルクも先ほどの言葉を聞いていましたか? ご自分のために使えと」

「聞いていたからこそ渡す。

 シスターアンはオレにとっては母親、いや、ここの出身者なら全員の親だからな」

「マルク……」


 シスターアンは目元を隠しハンカチで押さえる。

 メルが先を急がせるように間に入った。


「で、ばあちゃん。ウチに用事ってなに?」

「そ、そうでしたね。

 メルいくつになりました?」

「ええっと、先月で十七だけど……まさか追い出すとか?」

「追い出しませんよ。

 マルクが女性に、いえ奥さんに贈り物をしたいというので、ご協力をお願いできませんか?」

「なんだ、別にいいけど、おっさん、奥さんって歳いくつ?」

「そのなんだ……」


 言うと誤解をされそうだと解っていても、言わないと先へは進まない。

 もう一度息を吸い込むと二人に告げた。


「十四だ」


 場が凍る。

 空気が止まるとでもいうのだろうか。

 先ほど目元を押さえていたシスターアンはメルの手を握っていた。


「メル戻りましょう」

「そ、そうするよ」

「マルク、今までありがとうございました。金輪際来なくていいですからね」


 先ほどの暖かい声とは違い、凄く冷たい声だ。


「まってくれ、違う、違うんだ」


 孤児院に戻る二人をマルクは必死に呼び止めた。


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