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Restart  作者: 水鏡良芽
始まり&入学式編
6/7

鹿の魔族に(は)手加減無し

やっとバトルシーンが書けました!


…………疲れたーー。


校長先生の言葉と鹿の魔族にどよめいている新入生。

無理もない。あれが普通の鹿だったら別にさんざん見ているため、驚くことなどないがあれはただの鹿ではない。




毎年生え変わるはずなのに長く歪に曲がった角。

茶色の体毛を切り裂くような浮き出た血管。

大地を蹴るだけなら不用な禍々しい蹄。

どれをとっても普通ではない。



しかし、俺の班のやつは全くそうではなかった。


「やけに大きいな、あの鹿」


「でっかーい」


「すごいですね、なに食べたらあんなに大きくなるんでしょうか」


のんきなもんだ。地元のやつらがどよめいてるんだから合わせろよ。


「お前らなぁ、もうちょっとましな感想は無いのか?」


俺は無いが。


「だいたい、四~五mくらいかな?」


「なんかふいんきがどんよりしてるねー」


「すいません、鹿?ですか、初めて見たもので」


ガディアルとメル、話聞けよ!

聞くわけは無いと思うので言いはしないが。


「ナギシロ班、元ナギシロ班のやつ、集合!」


げっ、ナギシロ先輩が召集しやがった。


「わりぃ、ちょっと行ってくる」


のんきな三人を置いて、俺はナギシロ先輩の所へ行った。

そこには、元ナギシロ班の面々がいた。

ナギシロ先輩はもちろん、タマもいる。そして……


「おせーぞ、ブロウ!」


「…………遅い…………」


久しぶりの二人。

リックとティエラ。前の同じ班の二人だ。


「よし、全員集まったな」


ナギシロ先輩は全員集まったことを確認すると、再び皆に大きな声で伝えた。


「これより、元ナギシロ班があの鹿の魔族を狩る!他の班や新入生は手出しをしなくていい!」


そして、ナギシロ先輩がニヤリと笑い、


「腹でも空かしておきなっ」


そう言い、鹿の魔族の下へ向かったナギシロ先輩。

それについていく俺たち。

少し歩いた所で小さな円になる。

作戦会議だ。

あの鹿の魔族は足下の雑草を食べているものの、いつ移動するかも分からないから多少は急がないとならないが、逃げ出すつもりならば、もうとっくに走り去っているだろう。


「じゃ、ブロウは指揮はよろしく」


さっきまでさんざんカッコつけてたくせに人頼りかよ。


「……たまには、ナギシロ先輩が戦闘の指揮してくださいよ」


なんかムカついたので言ってみた。

戦闘の指揮は嫌いじゃあなく、むしろ好きなくらいだが、言われるままに従うのもな。


「お前がやってくれたほうが適切な状況判断ができるしな、俺は駄目だ。そういうのには向かない。全く、何回いったら分かるんだ」


「はぁ」


何回も言われたことを再び言われた。

まったく。やれやれだな。


「戦闘の指揮かー」


去年もよくしていたからもう慣れたが。

相手は獣。普通なら、ナギシロ先輩の『フレイムスラッシュ』で一撃だけど鹿の魔族だからな。

元が元だからそこまで戦闘面では強くはないが体力面ではそこそこ頑丈だろう。体格が大きいからナギシロ先輩の斬撃が当たったとしても耐えれるし、その後が恐い。だから今回は遠くから攻めよう。


「それなら今回はリック」


「なんだ」


「お前が主軸で頼むぞ」


「いいぜ。頼まれてやるよ」


リックは笑って快諾してくれた。

助かる。

こうやって指示というべきか方針に素直に従ってくれると指示を出す側は楽だ。

……最も何も考えていないという可能性は捨てきれないが。


「で、ティエラは『泡の幕壁(バブルウォール)』であいつが『雨の矢(レインアロー)』を使うのを援護しつつ目眩まし」


「……ん、分かった……」


「あと、二人は……」


どうすっかな。


「ティエラのほうにあの鹿がやってきた時のために待機しててください」


「それでいいぞ」

「にゃ」


あんまりする事もないので一応の対策してもらうことにしておこう。

魔族は全体的に頭がいいからどんな戦い方をするか分かりにくい。

個体によっては魔法を使うだけじゃなく集中攻撃などもするからな。


「俺は『あれ』を使って援護するのでその時に各々指示を出すんで、行きますか」


「待て」


ナギシロ先輩が向かおうとする俺を止めた。

不満でもあるのか?

別にそこまで変なことは言ってはいないが。


「ブロウ、お前は『あれ』は使うな。今回は使わないほうが安定するだろ」


まじか。『あれ』は個人的に大好き、は露骨か。俺に合っているので好きなんだがな。


「うーん…………いいですよ」


「そうか。それはよかった」


俺は渋々ながらも了承した。

確かに対人戦なら強いが相手が相手なので、分からんでもないし。


「改めて、行きますか」


「もう目の前にいるけどな」


リックが言った。は?

見ると、鹿がこちらに向かって来た。

ゆっくりとだが着実に。

まじですか。

移動の手間が省けたのはいいけど。


「手筈通りによろしく!」


そう言い、散開した。

リックは中距離で様子見。

ティエラは遠距離で構える。

ナギシロ先輩とタマ、俺はティエラの付近で待機。

陣形は1・4(人の数が)で上からみたらリックが孤立しているように見えるだろう。

しばしの静寂が場の空気を包む。


「………………………………」


「………………………………」


うーん、鹿がリックに突進するかと思ったんだが、(体のいい人身御供)相手も動かない。いや、動いてはいるのだがうろちょろしてるだけであまり変化がない。

しょうがない。

そう思い、俺は手をあげた。

もちろん意味はある。


「……弱き幕だが無数の壁、一と零は違うと知れ、 

『泡の幕壁(バブルウォール)』……」


「はっ、いくぜっ」


俺の合図に合わせてティエラが泡の幕壁(バブルウォール)を放ち、リックは前に突っ込んだ。

ティエラの杖の先から大小様々の水の泡が大量に出てきて、鹿のほうに向かっていく。


「お先にゃ~」


水の泡に紛れて鹿のほうに走るタマ。

ナギシロ先輩は動かない。そうしてもらわないと困る。タマは足が速いので鹿がこっちに突撃してきても対応出来るがナギシロ先輩は魔法での緊急回避は出来るものの対応までは出来ないからな。

……俺とティエラは多分避けれないからカバーしてもらわないと困る。

おっと、水の泡が鹿のほうに届いた。


「……………………」


鹿は嫌がるように角を振り回し泡を割る。

リックのほうは見ておらず泡に集中している。


「はっ!」


そんな鹿に対してリックはボウガンの矢を発射する。

そのボウガンの矢は鹿の脇腹に突き刺さるかのように直進する。

そして直撃。ボウガンの矢は鹿の脇腹に当たった。

しかし、突き刺さりはせずに矢は下に落下する。

ま、そんなもんだろう。出血はしているから十分だ。


「……………………」


鹿が全ての泡を割り終えたようで、リックのほうを見る。


「にゃ!」


タマが鹿を蹴り、そして軽く退く。

ヒット&アウェイだ。


「……………………」


鹿はタマを無視して、リックのほうへと突進していった。

流石は鹿。身は軽く、跳んでみるみるうちにただでさえ近い距離を詰める。

そして、リックの真上まで行き、踏みつける。


「ちょ、待てよ!」


リックは無様にも体勢を崩して飛び込み前転のように転がり回避する。


「……弱き幕だが無数の壁、一と零は違うと知れ、

『泡の幕壁(バブルウォール)』」


再び魔法。鹿のほうに対して。

今回はリックやタマにも当たるがしょうがない。

避けはしないだろう。威力はほとんどなく、どちらかと言えば質より量の魔法だからな。


「ふぎゃ!」


あっ、タマが全力で逃げた。

水だからしょうがないか。


「…………………」


鹿はさっきのように角で割らずに再びリックに突進する。さっきと同じように行くと思うな。


「へっ、食らいやがれ、五月雨よ、巡り巡って牙となれ、『雨の矢(レインアロー)!』」


ボウガンの矢を装填をしないままに構えるリック。

本来なら撃てるわけはない。

あいつも承知の上だろう。承知の上でもできることはある。

それが魔法。

リックの周囲に数多くの水の矢が魔法詠唱、略して魔唱とともに浮かび、そして飛んでいく!


「……………………」


先ほどの何倍もの矢にひるむ鹿。

普通の『雨の矢(レインアロー)』なら二、三本だけどもあれは空気中の水分量が多ければ本数が増加する。そして、水分量を増加させるための『泡の幕壁(バブルウォール)』。

もちろん他にも連携はある。

俺は上げた手をぐっと握った。

あの二人への合図だ。


「にゃぎ!」


先ほどまで回避していたタマがひるんでいる鹿の上に飛び乗る。


「……………………」


嫌がるように暴れる鹿。振りほどけない。当然と言えば当然だ。

タマの足は猫の足、鉤爪がある。鉤爪がめりこんでいるから簡単には背中から剥がれない。


「ほらよ、タマ!」


ナギシロ先輩がタマに向かって思いきり、だがとれる程度の速さで自分の剣を放り投げる。

俺は一方で少し距離をとっている。

巻き込まれたらたまらない。

『あれ』が使えないんじゃこのサイズだとなぁ。

素手で殴る蹴るとか自殺行為だ。

ナギシロ先輩が投げた鉄の剣をタマが受け取り、思いきり鹿の背中に突き刺す


「ドゥアアアアアァァァ!」


標準サイズの鹿とは大きく異なる鳴き声を上げる鹿の魔族。普通の鹿よりもずっと低い声だ。

多分悲鳴だろう。そう思った。


「下がれっ!」


何だ?

俺は思わず後ろを振り向く。

かなり離れた所で誰かが叫んだのだろう。

誰かが他の人よりも前に出て、立ち上がっていた。

あれは……ガディアルか?

口調がかなり危機迫った感じがでてたな。

あの鹿の鳴き声を何かと勘違いしたのか?

などと馬鹿な考えをしてしまった。

鹿の方を再び見たときに、変化があった。

一目瞭然な変化だった。

鹿の魔族を中心に黒い円が出来上がっていた。

明らかに魔法の発動体勢だ。

ちっ、さっきの鳴き声は魔唱だったのかよ。

そんなん聞いてねえぞ!

まずいぞ。


「お前ら、下がれっ!」


一応指示を出したものの、もう既にリックとナギシロ先輩は後ろに退いていた。

だが、タマがまだだ。


「タマ!逃げろっ」


「分かってるけど、抜けにゃいんだよ!」


そうだ、まだ剣を突き刺したままだ。


「いーから早く!」


「ブァ!」


鹿の魔族が前足を軽く上げ、強く踏み込んだ。

来る!

鹿の足下の黒い円がまず、上に上がり、まるで壁のようになり、そして広がり強く押し退ける!


「痛っ!」


「くっ」


二人が吹き飛んだ。ナギシロ先輩はこちら側に、リックは向こう側へと。

こっちに飛んでこいよ二人とも!


「オーライ、オーライ……よし」


ナギシロ先輩をキャッチすることに成功した。

お姫さまだっこで。

……バトルシーンなのでつっこみは無し。


「はは、ブロウにお姫さまだっこをされる日がくるとはな」


「黙ってて下さい!」


「……此方(こっち)に来た」


おいおい!こっちに鹿が向かって来やがった!

まず俺はナギシロ先輩を下ろして、構えた。

『あれ』を使うか?

ティエラの魔法もあれを防げるほどの威力は無いし、ナギシロ先輩の武器は今、


「止ーまーれ!」


タマが持っている。未だに鹿の背中に剣を突き刺したままだ。


「来るぞっ!」


「ちっ」


鹿がすぐ近くに来た所で、

凄まじい風を切る音が聞こえた。

そして、鹿の瞳に矢が突き刺さった。


「グルガァァァァァァァ!」


鹿の鳴き声。今度は痛みによるものだろう。

激しく体を揺さぶる。

だが、なぜ、どこから?


「えっ」


「……何処から?」


二人の疑問の声が浮かぶ。


「ふにぁあぁぁぁぁ!」


タマは振り落とされまいと必死だ。

俺は後ろを振り向いた。そこには、

悠然と残心をとっているガディアルの姿があった。

手にはおそらく組み立てたであろう弓。

だが矢は?

鹿の目に刺さっている矢はガディアルが持っているものではないだろう。それとも弓のように携帯していたのか?


「……………………」


ガディアルはこれで自分の仕事は済んだかのように

その場に座り込んでいた。

実際その通りだ。

ガディアルの放った矢は鹿の魔族の目を片方奪った。

特別嗅覚が優れているわけでは無いやつにとってはそれは致命的だ。後は……

「ブロウ!決める、踏み台になれっ!」


まじか。服が汚れる!

……ああもう、倒すのが先だ!


「いいですよ!」


俺は鹿の脇腹の近くまでいき、手を膝に置いた。

馬跳びの姿勢だ。

鹿がまだ傷みで体を揺すっているからこの距離がベストだ。


「行くぞっ!」


ナギシロ先輩は俺を文字通りに踏み台にして高く跳んだ。

強く踏み込まれたから痛い!

そして、ナギシロ先輩は鹿の背中に着地。


「タマ、どいてろ」


「あいさっ」


タマを退かして、剣に手を掛ける。


「ナギシロ先輩、連撃ですよっ」


どうせ単発じゃあ倒せないから、

そう思い言ったがナギシロ先輩はにやりと笑い


「俺を舐めんなっ、ブロウ!」


と言ってきた。何をする気だ?


「俺の思いよ貴方に届け、冷たかろうが俺の想い、『氷殺剣(ヒョウサツケン)!』」


新しい魔法か。多分あの魔唱の言葉なら、

ナギシロ先輩の創作の魔法か。

あの魔唱の言葉と魔法名なら多分……

「ガァァァァァ!」


再び鹿が痛みによって鳴く。

原因はナギシロ先輩の魔法だろう。

ナギシロ先輩の持っている剣が白く染まっている。

おそらく氷系の魔法。

なら、鹿を凍らせたか……それとも……。


答えはすぐに出た。視覚的な意味でだ。

鹿の腹、今回は脇腹ではなく人間なら胸の辺りから氷の剣が飛び出ていた。


ナギシロ先輩の魔法だ。

なら、魔法は多分だが氷の剣。そして鉄の剣を氷が覆っていたから武器強化系の魔法だな。

武器の射程距離を物理的に氷で伸ばす……的な。


「……………………」


鹿はもう鳴かなかった。

そして、崩れるように倒れた。

もう鹿が動くことは無いだろう。

ナギシロ先輩の魔法が致命傷になったとしか思えない。


「ふぅぅ」


ナギシロ先輩は終わったことに安堵したのか息を軽く吐き、


「勝ったぞ!」


と言った。

これで終わりなのだろう。




校長先生が仕掛けたレクリエーションが。










ちょっと間が空いてしまいした。

これからは投稿できる時に投稿したいので、

更新遅れるかもしれませんが、

ご了承下さい。

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