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マリアージュの銃士隊  作者: ミナモ
第一章

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幕間「決闘の余韻」

 

 クリスはエディアールに向かって掌底を叩き込む。

 脳を揺らされたエディアールは膝から崩れ落ちて、どさりと倒れ込んだ。


 ハァ……ハァ……。


(白刃取り……)


(よく出来たな……)


 妙な笑いがこみ上げてくる。


「ハハハハ……」


(出来過ぎだぜ――)


 緊張の糸が切れたクリスは、急に疲れが溢れて出てきた。


 腰を下ろし、大きく深呼吸をする。


「決闘なんてするもんじゃないな……」と、本音を吐露していた。


『クリス!』


 マレーネが慌てた様子で駆け寄ってくると、首元に抱きついてきた。


 温もりも感触も伝わってこない……。

 けれども、耳元で啜り泣く声ははっきりと聞こえた。


「お、おい……なに泣いているんだよ?」

 クリスは戸惑ってしまう。


(ぬし)よ……。(ぬし)は死んではならぬ』

 そう言って、マレーネは離れようとしなかった。


 クリスは一つため息をつく。

「心配するな。そんな簡単に死んだりしないから……」


(ぬし)は……(ぬし)は――』

 マレーネはポロポロと涙を溢しながら、クリスを見つめきた。


(なんだよ……? どうして……そんなに泣いているんだ?)


 クリスは少し心苦しくなり、彼女から目を逸らす。


『危なっかしいのじゃ!』


「何だよ……その理由――」

 クリスはマレーネのその言葉に肩透かしを食らった気分になる。

「決闘をしているんだから、こんなもんだろ?」


 けれどもマレーネは、再びクリスの首元に抱きついてくる。

(ぬし)の闘い方は――』

 怒ったような泣き顔。

『死ぬことを何とも思っておらぬのじゃ!』


 涙であふれた目で睨み付けてくる。

『見ていて……心が痛くなる』


「おいおい……大袈裟だな――」


『死ぬなよ……クリス。(ぬし)(わらわ)は――』

 マレーネは一瞬、言葉を探すように目を泳がせる。

『結ばれる運命(さだめ)なのじゃぞ。わかっておるのか?』


「わかったって……」


『わかっておらぬ!』

 マレーネがまた泣き出す。

(ぬし)はわかっておらぬのじゃ!』


「じゃあ……どうしろって言うんだ?」

 クリスは辟易したように、嘆息を漏らす。

「まさか、これからは敵前逃亡でもしろと言うのか?」


(わらわ)も……。(わらわ)も一緒に闘う』

 マレーネは泣き腫らした瞳でクリスを見つめ、真顔でそう言った。


「闘うって……? ちょっと、それは卑怯じゃないか? 二対一になるわけだろ」


『卑怯ではない! 相手からは(わらわ)は見えぬのじゃからのぉ!』


「わ……わかったよ――」

 マレーネの真剣な眼差しと鬼気迫る物言いに、小さく頷くしかなかった。


「それよりここから早く立ち去ろうぜ」

 近くで倒れ込んでいるエディアールに視線を移す。

此奴(こいつ)もいつ目を覚ますかわからないし……」

 そう言うと、クリスは立ち上がる。


『それには(わらわ)も賛成じゃ』

 マレーネも涙を拭うと、立ち上がる。

(ぬし)が警報器を作動させたからのぉ。消防や警察が駆けつけてくるのも時間の問題じゃ』


 立ち去ろうと踵を返すと、足元に落ちている通信端末が、ヴヴゥゥと唸り始めた。

 エディアールが所持していた端末だった。


 画面には着信相手の名前が表示されている。


「マレーネ――インペリアル・グレースで相手の居場所を特定できるか?」


『通信が繋がっている状態であれば可能なはずじゃ』

 クリスは拾い上げると、画面をタップした。


 スピーカーから少女の心配そうな声が聞こえてくる。


『シャル! 無事なの?! メッセージでも良いから連絡して!』


 クリスとマレーネは顔を見合わせると、黙って頷いた。


 そして、北側に位置する非常扉から図書館を後にした。



 ***


 ——その一日前。


 テトレー伯爵邸前。


【第二章】


 第十五話「家猫マルセイユ」


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