新国王
「いいだろう。それならば今すぐ国民に真実を話せ!お前らがバカ王子の計画に乗っかろうとしたこともな。もちろん次期国王が誰であるかもハッキリ言えよ!」
そう告げてから国王をヒョイと掴む。そしてお城の屋根まで移動する。ここは街が一望できるベストポジションだ。国民からしたら、城の中心に黄金に輝くドラゴンと敬うべき国王が現れたのだから興味津々だろう。
「マリエスト王国の国民たちよ!俺は光の勇者フローラの息子のレオナルドだ!戒厳令は解除された!今から国王が大事な話をするからよく聞いて欲しい。」
拡声魔法によって、俺の声が国中に響く。窓をサッと開け、身を乗り出すように聞こうとする奴もいれば、家族で身を寄せ合いガタガタ震えている奴もいる。
「私はガルド・レイモンド、この国の国王である。しかしたった今、退位することをここに宣言する。」
国王が話しはじめると、チラホラと家の中から人々が出てきた。その数は時間が経つにつれ増えていき、街の真ん中にある広場を中心に人々が溢れ出した。
突然の戒厳令に、突然の退位。
国王がその理由を語るやいなや口々に怒号が飛ぶ。権力者たちの横暴が暴かれたことで、国民たちの不満が限界を超えたのだろう。
もちろん、今の話を信じない王族派とでも言えばいいのだろうか?そういった、王族に心酔している人々もいるようで、あちこちで国民同士の小突き合いも見られる。
だが大方は国王の退位に肯定的な意見が多いようだ。まあ、それだけ今の国王には吐出した才能も、人望も無いのだろう。自業自得だ。
「皆の者、まだ話は終わっていない。最後まで聞いてくれ。・・・・儂が退位した後、誰がこの国の王になるか、それは今、儂の横にいる竜人のレオナルドじゃ!!」
・・・
「え?」
ちょちょちょ、、、、、爺さん何言ってんだ!ルークにしろって言っただろうが!
・・・あれ?ルークにってこの爺さんに言ったっけ?
「この者はたった一人で我が国の騎士団長と魔法師団長をねじ伏せた実力者だ。これからマリエスト王国の武名を世界に知らしめてくれるだろう。」
「「うおおおおおおおおおおお!」」
国民からざわめきと歓声が上がる。
え、、、、、え、、、、え、どうすんだよ!すでに既成事実になっちまってんじゃねーか!!
慌てて拡声魔法をオフにして、爺さんに詰め寄る。
「おい!誰が俺を国王にしろっつったんだよ!次期国王はルークだろうが!どうすんだよ、バンザイしてる奴いんじゃねーか!」
「ほげっ?そなたが国王になりたいのではなかったのか!?」
「一言も言ってねーよそんなこと!」
「じゃが、どっちみち今回の事件はレイモンド家の不祥事じゃからな、、、、、舌の根の乾かぬうちにレイモンド家のルークにしたところで、国民の不満は溜まるだけじゃろう。」
ああ、もう!このジジイめ!割と正論言いやがって、余計腹立つわ!二度とその口が開かないように食っちまいたい。むしゃくしゃするわ~!
あ~あかん・・・我慢できない。
「お?」
そうか!国民に認められなければいいんだ!一般人にとってドラゴンっていうのは畏怖の対象だから、、、ビビらせちまえばいいんだ!そしたら、今バンザイしている奴も、やっぱりアイツは危険すぎて、国を任すのはダメだと考え直すハズだ!!
俺って天才かよ!!そうと分かれば即実行だ!!
肺いっぱいに空気を吸い込み、それを一気に噴き出す!
「GYAOOOOOOOOOOOOO!!ブホオオオオオオオオォォォォォォォォ!!」
一鳴きしてから、上空に向けて炎を吐き出す。けっこう本気でやったので、横にいた爺さんの髪の毛はチリチリになり鼓膜が破れた。いい気味だ。そのおかげもあってか不思議とムカムカした感情もスッと落ち着いた。
さっきまでガヤガヤしていた国民も、俺の声と魔法にビビッたようだし、これで国王を回避できただろう。
ゆっくりと市民を見回す。
しかしその時、俺の予想に反する現象が起こった。
「え?」
なぜか国民が俺の名前を連呼しながらウェーブを始めた・・・・・
「「うおおおおおおおお!竜の加護だ!この国はドラゴンに守られている!レオナルド様~~~!!」」
「「キャア~~~~!レオナルド様ステキ!!」」
いやいやいや違う違う!今のビビるところだから!!なんで逆に受け入れられちゃってるんだよ!!
あ~もう、、、、このジジイが余計なこと言うから
「お前絶対許さないからな!」
元国王の耳元で叫ぶ。
「え?」
「お前絶対許さないからな!」
「え?」
ダアアアアアアアア!ジジイの耳、鼓膜破れてた~~~!!
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消しゴムのカスがだいぶ大きくなりました。
・・・ふっふっふ。