理不尽なシシド様
次の日ママンと一緒に馬車に乗って登校しようとすると、何やら家の前に人だかりができていた。家を覗き込むようにしている人もいる。そしてママンを発見するやいなや黄色い歓声が飛んだ。
「あれが、フローラ様なのね!」
「フローラ様~~!キャア~こっち向いたわ!」
押し合いへし合いをしながら、少しでも目に焼き付けようと人々がうねっている。
近所迷惑もいいところだ。それにこのかんじ・・・なんだか俺だけのママンを取られたような・・・・いやまあ、そんなことより一体どこから情報が漏れたのだろうか?個人情報保護法とストーカー規制法を制定せよ!
そうかと思えば、人々の関心はママンの横に立っている俺にも向いてくるわけで、、、アレは一体誰なのだと囁き合っているのが聞こえてくる。
あまり注目されることになれていない俺は、そそくさと馬車に乗り込み避難する。これでは登校するだけでも一苦労だ。
ようやくママンに群がる人々を振り切り学校に着いたかと思うと、今度は、舎弟の1年生どもが挨拶にやってくる。
ああ、俺の平穏な生活はどこに?少しだけ森での生活が懐かしい。
しかも今日の俺の災難はこれだけにとどまらなかった。いろいろなことがあり過ぎてすっかり忘れていたけど・・・
ガラガラガラ
「あーいたいたレオナルドく~ん。よく考えてきてくれたかな~?」
昨日授業中に乗り込んできた2年の先輩5人組だ。
席に座ってため息をついていた俺にシシドとかいう奴が超至近距離で話しかけてくる。鼻と鼻がぶつかりそうだ。これは・・・女の子相手ならキスするしいかないシチュエーションだが・・・男相手だとどうすればいいんだ?今まで経験したことが無いからよく分からない。
あ、今、鼻と鼻がチョンってなったぞ。これは鼻キス!そういえば昔何かの雑誌に、鼻へのキスは、可愛さのあまり傍に置いて大切にしたいっていう感情の現れだと書いてあったような。てことはコイツ俺の事が好きなのか!?俺の恋愛対象はママ・・・いや間違えた、女の子だけどな。
むむむむ。どう解釈すればいいのだ・・
「お~い、聞いてますか~?それとも怖くて固まっちゃったのかな~???」
いや・・・やっぱりコイツが俺に対して抱いてる感情は恋愛感情ではないような・・・それならば・・・鼻と鼻、おでことおでこをグリグリするのにどんな意味があるというのだ?・・・・ああ、分かったぞ!昔映画か何かでこういうシーン観た気がする!男と男が額を突き合せたらやることは一つ!そう!頭突きしかないよね!それが男と男の友情!
ゴツン!
「ギャアアアアアア、あたま、頭が割れる~うああああああ~」
「え?」
なんでこの人流血してるの??やり方を間違えてしまったのだろうか。あ、ちょうどママンが教室に入ってきたぞ。もうそんな時間か!
「まあ!何があったの!?」
「あんた誰だ・・・いや教師なら誰でもいい。そ、それが・・・見てくれ・・・いきなりコイツに頭突きをされて流血しちまったんだ!」
「まあ!」
ドン、ボコ、バチン!
「「えええぇぇぇ!」」
その瞬間、ママンが先輩をボッコボコにぶちのめした。そして俺の傍まで駆け寄ってきた。
「レオちゃん大丈夫なの!?おでこはケガしてない?もしレオちゃんに何かあったらママはもう・・・どうしたらいいか。」
ザワザワザワ
(おいおいおい、何だか先輩が可哀そうになってきたぞ、レオは怪我どころか、かすり傷一つないよ!それよりも先輩の方が100倍重傷だよ!!)
「シ、シシド様~~!お気を確かに!おいお前ら急いでシシド様を保健室に連れて行くぞ!」
「は、はい~」
「どけどけ!見世物じゃね~んだぞ~」
♢
今日はこれから1年生の首席を仲間にしに行く。ああ、まあ仲間っていうか舎弟な。アイツの実力は実のところよく分からないが、入学式に見た動きからすればなかなかやるのではないかと思う。それに信頼できる筋からの情報によれば、すでに1年生全体を舎弟にしているらしい。ということはつまり、あいつを舎弟にすれば、おのずと俺の勢力がパワーアップするということだ。ふふふふ、楽しみだ!
ドウラン祭を控えたこの時期には猫の手でも借りたいぐらいなんだ。まったくもってナイスなタイミングだ!
「しかしシシド様。我々の勢力は今全部で5人しかおりませんが、あの首席を舎弟に出来るでしょうか?アイツの舎弟は100人以上だと聞いてますが。」
「ハハハ、なんだそんなことを心配していたのか?1年生なんて何人いても俺の前には無意味なんだよ。しかもだ、アイツが頑張って舎弟にした奴らを俺がごっそり頂けるんだぜ。こんなうまい話が他にあるかってんだ!こういうのなんて言うか知ってるか?カモがネギを背負ってきたって言うんだぞ。」
こいつらは良い奴らだが、少しばかり憶病なところがあるからな。俺様が導いてやらねばならない。
「おお!流石シシド様!一生ついていきます!」
「ハッハッハッハ俺がこの学校の覇権を取るのも時間の問題だ!そしたらお前たちにはちゃんとした役職をくれてやろう。」
「「あ、ありがとうございます!」」
ハッハッハッハよいよい。
ガラガラガラ
「あーいたいたレオナルドく~ん。よく考えてきてくれたかな~?」
最初はやっぱり恐怖を植え付けてやんないとな。先輩の偉大さってゆーの?まあ、こんだけ脅してやればコイツが落ちるのも時間の問題だけどな。ハハハ、ビビッてやがる。もうひと押しだな。おでこでも擦りつけて睨んどくか。
「お~い、聞いてますか~?それとも怖くて固まっちゃったのかな~???」
ゴツン!
え?なんだ?何が起こったんだ!?頭にものすごい衝撃が!!・・・あつい・・・痛い!
「ギャアアアアアア、あたま、頭が割れる~うああああああ~」
なんだコイツの頭の固さはぁぁぁぁ!死ぬ~死ぬ~うわあああああぁぁぁいきなり何するんだよ!今まで父上にだってぶたれたこと無いのに血が流れてるよ~!!ああ、血が流れ過ぎて頭がクラクラしてきた。
するとその時教室に金髪の美女が入ってきた。見たこと無い女だが恰好からしておそらく教師だろう。
「まあ!何があったの!?」
「あんた誰だ・・・いや教師なら誰でもいい。そ、それが・・・見てくれ・・・いきなりコイツに頭突きをされて流血しちまったんだ!」
こうなったら暴力事件としてアイツを退学に追い込んでやる!!絶対に許さないからな!
「まあ!」
ドン、ボコ、バチン!
「「えええぇぇぇ!」」
なぜ・・・俺が・・・この女から殴られたんだ・・・ダメだ・・・意識が・・朦朧としてきた・嘘だろ・・・なんだこの凶暴な女は・・・アイツのママだと・・理不尽、理不尽過ぎる。
「シ、シシド様~~!お気を確かに!おいお前ら急いでシシド様を保健室に連れて行くぞ!」
「は、はい~」
「どけどけ!見世物じゃね~んだぞ~」
・・・あの親子には・・関わっちゃいけない・・・う・・・無念・・・
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