第8話:突然の邂逅:サラ・ウィンドホーク
教師から学園についての説明を聞いているだけで、あっという間に放課後となった。
ゲームだとこの時間のリュウジは、ニーナとホノカと買い物行くはずなので鉢合わないようにする。
昼あまり食べられなかったので、購買でラスクを買い学園の裏庭へと向かった。
せっかくなのでもらった教科書を読んでみようと思う。魔法の勉強なんて前世じゃできないしな。
裏庭につきベンチに座る、この時間帯人はいないようだ。
ーーただ一人を除いて。
まさかゲームのヒロインの一人であるサラがベンチで寝ているとは…
さすがに無防備すぎやしないか?
放置するわけにもいかないので、俺はラスクを袋から取り出し教科書を開く。
ふむ…読めない…
『いつしぬ』のファンコミュティではこの世界の文字も一部解読されていたが、さっぱりだ。
ペーパーテストや魔法の授業はロイにまかせるしかないな。
諦めてラスクをかじる、おいしい。香ばしく甘い風味が口の中に広がる。
夢中になって食べていると視線を感じる。
サラが俺の方を見ていた。
「やぁ、俺はロイスロット。」
「知ってる…」
どうやらコミュニケーションをとってくれるらしい。
「サラ…」
自分を指さし、俺の方を見つめている。ん?視線がちょっと低い?
よく見たら俺ではなく、俺の持っているラスクの袋を物欲しそうに見つめていた。
「…食べるか?」
俺はラスクの袋をサラに差し出す。
「ありがとう。」
サラは受け取って食べ始める。
ゲーム同様サラは甘いものが好きなのは変わらないようだ。
「…馴れ合いはしないって言ってた。」
ぽつりとサラが呟く。
もしかしてクラスメイトのみんな、俺の自己紹介を根に持っているのだろうか…
「なにをしていたんだ?」
「…精霊と話してた。」
サラは風の精霊と契約しており、『いつしぬ』内で1番精霊の扱いがうまい。
この時点でもう、そこまで精霊と関わっていることは知らなかったが。
『まぁ俺の頭にも精霊さんがいるけどな。』
『誰が精霊だよ!?』
ロイに怒られた。
サラはラスクを食べながらぽつりぽつりと語ってくれた。
「学園に来たら友達出来ると思ったけど、できなかった…」
「それは残念だったな。」
「ロイも友達がいないの?」
「…俺は一人が好きなだけだ。」
自分で言ってて悲しくなってきた…
「一人はとても辛いよ。」
サラはまたつぶやく。
「ホノカはどうだ?昔から知り合いだろ。」
六大貴族の子供達はみんな顔なじみのはずだ。
「…ホノカは優しいし、私のことを友達だって言ってくれると思う。」
「だったら、それでいいじゃないか。」
「私にとっては大事な1番の友達だとしても、向こうからしたら友達の一人にすぎない場合はどうすればいいの?」
サラは俺に問いかける。
前世から数えて30年生きた俺でもその答えは出せていない。サラの気持ちも痛いほどわかる。
ただサラには前世の俺のようにはなってほしくない。
「すまないがそれは俺にもわからない。」
「そう…」
サラは残念そうな表情を浮かべる。
「だが、関わらないことには何も始まらない。」
相手が自分のことをどう思っているかわからない。
だからと言って自分から歩み寄ることをやめてしまったら、本当に何も残らない。
「諦めることはやめたほうがいい、今自分の気持ちを大事にしろ。」
「どうせ大人になったら関わらない人間の方が多いんだから。」
前世で長い学校生活を過ごした同級生も成人式以降はほとんどが今生の別れだ。
「それは悲しいね…」
「だが思い出があれば生きていけるし、一人くらいは友達でいてくれるさ。」
会えなかったとしても、近況を話すだけでもいてくれるというだけでありがたいと思う。
「できるかな?私にも。」
サラは不安げな表情で俺に問う。
「まぁできなかったとしても話くらいは聞くさ。」
これからリュウジ達と関わってお前も変わる。
「それよりサラ、明日昼休み空いてるか?」
そのための準備をしておこう。




