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【第一章完結】人はいつか死ぬ。だから主人公たち、頼むからハーレムエンドになってくれ! ~悪役貴族に転生した俺の全員生存計画~  作者: 水無口 晶紀人
魔法実技大会:5月編

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第12話:新たなる日常と知らない設定

「行くよ!ロイ君!」

「お願いします!」


 ホノカと朝から剣の練習をするようになり、2週間近く経つ。

 練習時間は平日は1時間、休日は2時間といったところだ。


 目的意識をもって集中して練習するのが、ホノカ先生の方針らしい。

 練習内容も準備運動に素振りがメインだ。

 当たり前だが基礎が大事らしい。ほとんどの時間が素振りで終わる。

 そして、残りの数分で立ち合いを行う。

 立ち合いに関しても勝負というより、攻めと返しの型の確認が主である。

 単純な剣の打ち合いだったら、ホノカと勝負にすらならない。

 地味ではあるが、充実した時間になっている。

 特に俺の場合は剣の振り方すら知らないのだから、こういう機会を得られてよかったと思う。


「今日もお疲れさまでした、はいタオル。」

「…ありがとう。」

 自前でタオルは用意しているのだが、自分で取り出すより先にホノカが渡してくる。

 断るのも申し訳ないので、毎回受け取ってしまう。


「何度も言うが、やっぱり洗って返したいんだが?ダメか?」

 自分の汗を拭いたものをそのまま返すのは、気が引ける。

「ううん、気にしなくていいよ。洗う手間も変わらないし!」

「…わかった。いつもありがとう。」


 そう言って毎回断られる。自分がおかしいのだろうか。

 でもなんでこのタオル、毎回ふわふわでいい匂いがするのだろうか。

 前世の柔軟剤のCMを思い出す。どうやっているんだろう。

 聞いたらセクハラに当たりそうなので、聞けないが。


「だいぶ暑くなってきたねー」

 ホノカも汗を拭きながら、水分補給をしていた。

 普段もかわいいと思うが、汗をかいてて艶っぽいし妙に扇情的に見えてしまう。

 ホノカ自身はあまり男子の目を気にしてなさそうだ。


「あぁっ…そうだな。」

 俺は慌てて目を逸らす。

 リュウジはこんな美人が幼なじみにいて大変だな…


 空を見上げる。今日は快晴だ。

『朝運動してからこういうのなんかいいね。』

『このまま一日ボーっとしていたいな。』

『この後授業あるでしょ…』

 もう慣れてはきたが、始めたころはこの後の授業が重かったな。

 もうしばらくはこうして空を見上げていよう。


「ロイ君、何を見ているの?」

 ホノカは俺の隣に座ってくる。ふわりとホノカの匂いがしてドキッとする。


「空を見ていたんだ…」

「ふぅん?」

 そのままお互い無言になる。

 心臓がバクバク言っている。ホノカの顔が見れない。

 ただ今は青い空を見上げて、心を落ち着かせよう。


「ロイ君ってさ、昔剣誰かに習ってた?」

 ホノカが尋ねてくる。

 はてどうなのだろう、もちろん俺自身はないがロイがあるのかもしれない。

 ただ俺は学園入学後前のロイのことはほとんど知らない、ゲームでも語られていない。

 こういう場合は本人に聞いた方が早いか。

『だそうだが、実際はどうなんだ?』

『うん?子供の頃遊びでちょっとやってたくらいで、本格的なことはやってないよ?

 ここ数年は魔法の研究しかしてなかったわけだし。』

『そうか。』

 ホノカには正直に伝えておこう。


「いや、剣は初めてだな。」

「へぇ、そうなんだ。それにしては筋がいいね。びっくりしちゃった。」

 たしかに、初めてにしては思ったより剣が体に馴染んでいる気がする。

 何年自転車に乗っていなくても、体が覚えているようなそんな感覚だ。

 とはいえ、ロイに心当たりがないなら気のせいなのだろう。


「先生の教え方がうまいんだろう。」

「えへへ、なんか照れるね。」

 ホノカが嬉しそうな声をあげる。

 照れている顔を見たかったが、こらえて空を見続ける。


「ロイ君も今度の実技大会に参加するの?」

「あぁ、そのつもりだ。」

「私も出るよ!学園卒業したら、騎士団長を目指すからね!やるからには優勝したいな!」

 ホノカが意気込んでいる。

「そうだな、お互い頑張ろう。」

 そう言いつつ、俺はホノカから目を逸らす。

 残念ながら、ゲームのシナリオ通りだとホノカは決勝にすらいけないことになる。

 ホノカはどちらかというと晩成型だから、どうしてもこの時点では結果を残すことはできないだろう。


 剣術はすごくても、今回の実技試験は魔法ありの決闘である。

 当然、魔法が強いほうが圧倒的に有利になる。そしてホノカが現時点で身に着けている魔法は攻撃力に欠ける。

 そう考えると、今俺がこうしてホノカと一緒にトレーニングしていることに意味はあるのだろうか。


 闇の精霊の力を使わないようにしたい、その能力の代替として今ホノカに剣を教えてもらっているが、今後の戦いに役立てられるかはわからない。

 そもそも精霊の力なしに、今回の実技大会で俺は勝ち残れるのだろうか。

 リュウジもだが、俺も勝ちあがらないとニーナを守ることができないかもしれない…

 もしどちらかの力が足りずに、ニーナが別の男に嫁ぐなんて展開になったとしたら…


「ロイ君、また考え事?眉間にしわ寄ってるよ?」

 気が付いたら、ホノカがこちらを覗き込んでいた。

「すまない、ボーっとしてた。」

「悩み事だったら、聞くよ?」

「いや…」

 あまりにもホノカに聞かせられないような悩みなので、どうするか悩んでしまう。


「話せばすっきりするかもしれないし、私じゃ役に立たないかもしれないけど。」

「そんなことはない!」

 まずい、反射的にそう言ってしまった。


「だったら、話してくれるとうれしいかな?」

 ホノカは俺に笑いかけてくれた。

 何も話さないなんてことは俺にはできなかった。


 直接は話せないが、似て非なる悩みならいけるか?

 ホノカも賢い子だし、別視点の話を聞かせてくれるかもしれない。


「いや、結婚について考えていた…」

「え!?結婚!?ロイ君、誰かと結婚する予定あるの!?」

 ホノカは慌てた声を上げる。女の子だし、そういう話題好きなのかな。


「いや、特に予定はないんだが…いかんせんうちの家系は俺以外跡継ぎいないし、多少は意識しておかないといけないかなって…」

「そうなんだ…びっくりしたよ。」

 ホノカは胸をなでおろしていた。

 よし、このまま話題を逸らしていこう。


「ちなみになんですが、ホノカさんは婚約者っているのかな?そういう話ってあるの?」

「えっ…?」

 言った後に気づいてしまう。

 しまった、この流れだと遠回しに告白しているみたいになっているではないか。

 ニーナのことを話さずにスキップしていたせいで、意味が変わってしまっている。

 貴族の政略結婚事情を知りたかっただけなのだが。

 ゲームでは、そういうの無縁だったからいないと思うけど。立場的にホノカは婚約者選ぶ側の人間だろうし。


「昔一人だけいたよ…」

 だが、ホノカから信じられない言葉が放たれた。

「は?」

 思わずホノカの方を見る。ホノカは顔を赤らめて、俺から目を逸らした。

 え?どういうこと?ゲーム内で昔のことはリュウジ関連以外では語られてないし、設定資料集にもそんなこと書いてなかったぞ。

 ホノカに婚約者が昔いた?リュウジじゃなくて?

 思考がぐるぐるする、リュウジ以外に男の影がするのがプレイヤーとしてどうしてもモヤモヤしてしまう。


「だれなんだそいつは?」

 俺はホノカに問いかける。そんなこと聞いてもどうしようもないというのに。


「…言わないよ?」

 ホノカは俺と目を合わせてくれない。

 これはニーナの件以上に重いかもしれない。

 もしそいつがホノカに復縁を申し出てきたら?そしてホノカが受け入れたりしてしまったら?

 シナリオ通りなんてレベルじゃない、これから先わからない人間の警戒をずっとしないといけないのか。

 そしてなによりホノカがリュウジ以外の男とくっつく未来を…俺が見たくない。


「頼む…教えてくれホノカ。聞きたいんだ。」

 俺はホノカの肩をつかむ。

 ホノカはその手をつかんで言う。

「絶対に言わないからね?」

 ホノカは瞳をうるうるさせて言う。触られて怒っているのか顔も真っ赤だ。

 だけど、それでもリュウジのハーレムルートに支障が出る要素は取り除いておきたい。


「どうしても聞いておきたいんだ。そいつの名前を。だからホノカ言ってくれ!」

 俺は腕に力をこめてホノカの手を振り払う。


「きゃっ!」

 無理に力を入れたせいか、俺とホノカはバランスを崩す。


 俺はホノカを押し倒してしまう形になってしまう。

 幸い地面は芝生だったため大丈夫そうだ。

 ホノカは恥ずかしそうにこちらを睨んでいる。

「ホノカ…」

「だ、ダメだよ…こんなところで…」

 ホノカは俺から目を逸らす。


 顔を赤らめたホノカ、呼吸で上下する胸、汗ばんだ体と身にまとう体操服。

 あまりにもその光景が扇情的に映ってしまう。

 まずい、俺は大変なことをやらかしてしまったのかもしれない。

 だが、この光景に見入ってしまっていた。

 どかないといけないのに、体が動かない。


「どうしても言わないとダメ…?」

 ホノカはうるんだ瞳で俺を見る。

 俺もホノカを見つめ返し、そして…


『なにしてんのさ!早くどかないと!』

 ロイの声で思考が切り替わる。

 危ない、なんてことしているんだ。

 俺は理性を振り絞って、ホノカから体を離した。

「す、すまないホノカ。」

「うん、大丈夫だけど。無理やりはやめてほしいかな…

 まだ明るいし、それに…」

 ホノカは何か言いかけていたが、やめた。


「あぁ、気を付ける…」

 何をやっているんだ、俺は…


「ごめん、私先に行くね?また学園でね。」

 そう言ってホノカは慌てて去っていった。


『僕の身体でなにしようとしているのさ…』

『全くだ、すまない…』

 こればかりは反論の余地もない。


『…学園に遅れないように僕らも行こう。』

『あぁ…すまない、ありがとう。』

 ロイのおかげで事なきを得られた。

 今ので、ホノカに嫌われてないといいのだが。


 俺は片づけをして、寮へと戻る。

 寮の門の前で一人誰かが立っていた。


「おはようございます、ロイ君。少しお話をさせていただきませんか?」

 ミズキが俺を待っていた。

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