↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章完結】人はいつか死ぬ。だから主人公たち、頼むからハーレムエンドになってくれ! ~悪役貴族に転生した俺の全員生存計画~  作者: 水無口 晶紀人
魔法実技大会:5月編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/47

第13話:スコーンの甘さとコーヒーの苦み

「ミズキ…朝から元気だな…」

「えぇ、早起きしたものですから。こうしてロイ君と会えたのですから、早起きはするものですね。」

 ミズキは嬉しそうにほほ笑んでいた。


「悪いが、これから朝食を食べて学園に行く準備をするからあまり時間がない。」

「えぇ、存じております。ですので、これから一緒に朝食を食べませんか?」

 ミズキが俺の目をまっすぐ見る。

 このすべてを見透かしているような瞳が前世ではとても好きだったが、自分が見つめられる側になるとそわそわするな。

 本当に心が読まれているのではないかという気分になる。


「寮の食堂に行くのか?」

「それも悪くはないですが、この時間は混んでおりますし…」

 ミズキは一瞬考えるそぶりを見せ、

「学園の準備もあると言ってましたし、ロイ君のお部屋にお邪魔してもよろしいですか?」

 そして俺にいたずらっぽい笑みを浮かべる。


「それはさすがにどうなんだ?」

「いけませんか?」

「それは…」

 ミズキと朝食自体は魅力的なんだが、リュウジのことを考えたらな…


「カグヅチ君でしたら、本日はクラスの日直当番ですので、もうニーナさんと学園に向かってますよ。」

「…そうなんだ。」

 もしかしてミズキって本当に俺の心が読めたりする?

 ここまで俺の心配事を見抜かれると、怖くなってくるな。

 天才という言葉で片づけていいのだろうか。


『どうする?部屋で話を聞くくらいなら大丈夫だと思うけど…』

『でもなぁ…どこで噂が立つかわからないし。』

 寮や学内はすぐ噂が広まってしまう。色恋沙汰は特に。

 だから俺とホノカは朝早く時間ずらしながらトレーニングしているし、寮まで一緒に帰るなんてことはしてない。

 入学して直後は一緒に登校していたのも、今は控えているし。

 そして今寮の前でミズキとのんびり会話するのもよろしくない。

 ここはしかたない、断ろう。


「ミズキやっぱり後で話さないか?クラスも一緒なんだし…」

「へぇ、まだ抵抗するつもりですか…」

 ミズキはさらに悪い笑みを浮かべた。

 これがよく笑ういい子だったらどれほどよかったことか…


「このままわたし一人で行くと、たまたま教室で日直しているカグヅチ君に話しかけるかもしれませんよ?」

「ん?」

 俺にはミズキの発言の意図がわからなかった。

「えぇと、別にリュウジとミズキが話すのはいいことじゃないか?」

 主人公とヒロインが仲良くする分には何も問題ない。


 ミズキは俺の言葉を聞いて、ニヤりと笑う。

「えぇ、カグヅチ君に会ってテンションが上がり、うっかりロイ君とホノカさんの秘密の仲を話してしまうかもしれません。」

「え?」

 俺の思考がフリーズする。

 いやこの2週間ホノカと朝に会っているが、誰ともすれ違ってもないし、見られてないはずだ。

 …そもそも何故ミズキが知っているんだ?


「これからロイ君のお部屋にお邪魔しても大丈夫ですか?」

「あぁっ…」

 頷くことしかできなかった。


------------------------------------------------------------------------------------------------


「入ってくれ…」

「えぇ、お邪魔させていただきます。」

 策略にはまり、俺はミズキを部屋に招き入れる。

 ミズキは上機嫌だった。なにがそんなに楽しいんだか。


「一旦ここにかけてくれ。」

「ありがとうございます。」

 俺はダイニングテーブルの椅子を引いて、ミズキに座ってもらう。

 ミズキの背が低いせいか、ちょっと高さがあっていない。

 今後遊びに来ることがあったとき用に、子供椅子でも買っておこうかな。


「ロイ君、何か失礼なこと考えてませんか?」

 俺の視線に気づいたようだ。するどすぎる。


「なんでもないです…」

 俺も対面に座った。


「それでは朝食にしましょう、スコーンを持ってきました。」

 ミズキは持ってきた包みを開く。

 できたてのようで、いい香りが部屋に広がる。


 俺は慌てて小皿とジャムを用意して、ミズキの前に置く。

「ありがとうございます。」

 ミズキは素直にお礼を言ってくれた。

 何故だかすごく微笑ましい。

「飲み物はなにかいるか?」

「えぇ、紅茶をいただいてもよろしいですか。」


 なんてこった、俺の家にないものをリクエストされた。

「すまない、紅茶はない…牛乳かコーヒーかオレンジジュースでいいか…?」

「それは残念ですね、スコーンと紅茶の組み合わせが好きなのですが…」

 ミズキは本当に残念そうな顔をしている。

 貴族のお嬢様だし、そういうのは常備されているのだろう。

「悪い、今すぐ買ってこようか?」

「いえ、時間もないですし。牛乳をいただいてもよろしいですか?」

「わかった…」

 俺は牛乳をマグカップに注ぎ、ミズキに渡す。

「ありがとうございます。」

 嬉しそうにミズキは受け取ってくれる。

 紅茶今度買っておいた方がいいな。


 俺もコーヒーを用意して、席に着く。

「はい、ロイ君も。」

 そう言ってミズキがスコーンを差し出してくる。

「いいのか?」

「一緒に食べるために持ってきたのですよ?」

「わかった、じゃあ遠慮なく。」


 俺はミズキから差し出されたスコーンを一口食べてみる。

 スコーンは硬いイメージがあったが、出来立ては別のようで、外はサクサク中はふわふわだった。

「おいしいな、これ。」

「そうですか…よかったです。」


 ミズキは安心したのか、ホっと一息ついていた。

 二人でのんびりとスコーンをつまむ。

 コーヒーともあっていいなこれ。

 俺も一息ついてそして気づく。


 そういえば、俺は今ミズキに秘密を握られていることに…

 このままずっと秘密を握られ続けるのはよくない。

 ここはミズキとうまいこと交渉するしかない。


「あの…ミズキ…」

「どうしました?ロイ君。」

 ミズキは上機嫌にスコーンを食べていた。

 しぐさはかわいいけど、食べ方は上品だな。


「あの先ほどの秘密の件で相談なんだが…」

 駆け引きはしても勝てない、単刀直入に進めていこう。

「秘密ってどの秘密です?」

 ミズキはとぼけた風を装って、話を逸らす。

「俺がホノカと毎朝一緒に剣のトレーニングをしている話だよ、頼むから秘密にしておいてくれないか…」

 俺はミズキに誠心誠意頭を下げる。


「へぇ、ホノカさんと一緒に二人きりで毎朝トレーニングですか…」

 ミズキの言葉に違和感を感じ、俺は顔を上げる。

 ミズキは笑顔だったが、目が全然笑っていなかった。


「初めて知りましたよ、ロイ君。秘密を教えてくださりありがとうございます。」

 どうやら俺はミズキに騙されていたようだった。

『なんで自分から話しているのさ…』

 ロイにも呆れられた。


「はぁ…」

 ミズキはため息を一つついた。


「今度の実技大会に備えてトレーニングってことですか?」

 今の情報だけでそこまでたどり着くのは恐ろしいな。

「それだけじゃないが、そうだな。」

 これ以上ミズキに下手に隠しても無駄そうなので、正直に話す。


「わたしではなく、ホノカさんを頼ったことはおもしろくありませんが…

 剣の方の練習でしたら、たしかに適任ですね。」

 ミズキは淡々と現状を分析していた。

「ホノカも実技大会に出るみたいだから、一緒にトレーニングしてもらっているだけだ。」

 本来はホノカも頼らない予定だったが、なりゆきでこうなってしまっただけだし。


「それでしたらロイ君、わたしもお手伝いしましょうか?」

 ミズキはそう提案する。

「魔法でしたら、同世代では一日の長があると自負しております。」


『悪くないんじゃない?ミズキの魔法もっと見てみたいし。』

 ロイも乗り気である。


 たしかに、ミズキの魔法は優秀だ。

 水魔法が主だが、使える魔法の幅が広く使い方も柔軟性がある。

 是非とも手伝ってほしいが、リュウジを差し置いてヒロインを二人独占するのはいかがなものだろうか。


 いや、待てよ…

 確かゲームでは実技大会当日仲間たちの協力もあり準備することができたってリュウジが言っていたな。

 つまり、ミズキにリュウジのトレーニングの手伝いをしてもらうことで話がうまく進みかつ、リュウジとミズキが仲良くなるのではないだろうか。

 現状あまり話すところ見てないし、ここは好感度も稼いでおこう。誰とトレーニングするか選んで好感度を上げるイベントでもあるし。

 リュウジの選択ではなく、こちらから提案するのがちょっと怖いがやる価値はあるだろう。


「ミズキ、それならリュウジに魔法を教えてやってくれないか?」

「え?」

 ミズキは困惑した表情を浮かべている。

「わたしはロイ君の手伝いがしたいのですが…?」

「あぁ…だからリュウジの手伝いをしてくれないか…?」

 さすがのミズキも俺の提案を読めなかったのか、頭にハテナが浮かんでいる様子が見える。


「それがロイ君のためになると?」

「あぁ、リュウジにも強くなってもらわないといけないからな。」

「それはロイ君にとって大事なことなんですか?」

 ミズキの顔から笑みが消えていた。俺の顔をじっと見つめている。

 リュウジが強くなるかどうかは大事なんてものじゃない、ハーレムルートのため間接的にはミズキのためである。


「あぁ、俺にとっては一番大事まであるな。」

 ここに関しては譲れないし、嘘はつけない。


「そうですか…」

 ミズキは顔を伏せ、呟く。

 とはいえ、無理やり過ぎたのは確かだな。

「ミズキ、嫌ならいいんだが…」


「いえ、わかりました。ロイ君がそうしたいのでしたら、手伝います。」

 ミズキは顔を上げて言った。

「いけませんね。スコーンが冷めてしまいますので、食べましょう。そろそろ出ないとまずい時間ですし。」

「あ、ほんとだ!ありがとうミズキ。」

「えぇっ…」

 俺は慌ててスコーンをかきこみ、準備をする。


「それではわたしは先に学園に行きますね。」

「あぁ…わかった。」

 一緒に行こうと言い出すかと思ったらそうではないんだな。


「ロイスロット君、それではまた学園で。」

 ミズキはそう言って部屋から出て行った。


ここまでお読みいただきありがとうございます!


面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価、感想などで応援していただけると嬉しいです。


今後の執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。