第10話:主人公を取るか、ヒロインを取るか
「残念ですが、ロイスロット君はわたしと用事がありますので、カグヅチ君はお引き取りいただきませんか。」
そう言ってミズキは俺の腕をつかむ。
深い意味はないと思うがドキッとするのでやめてほしい。
「ん?お前ら二人遊びに行ってたの?」
リュウジが訝しげにこちらを見ていた。
まずいな…リュウジに余計な心配はかけたくない。
リュウジとミズキがまだそういう関係じゃないとはいえ、他の男と遊んでいるのを見せるのはよくない。
「いや…たまたま帰りに行きあっ…」
「今日はロイ君と一緒に演劇を見に行って、その後お茶をしたんです。」
ミズキが俺に言葉をかぶせてきた。
というか、なんで全部言ってしまうのこの子?
「そっか、じゃあこの後は俺に譲ってくれ。」
リュウジは特に言及することはなかった。ただ俺と一緒に飯を食べたい人になっている。
だがそっちはそっちで少しは疑問に思ってほしい、お前のヒロインだぞ。
「いえ、今日はわたしがロイ君と遊んでいるのでそちらが譲ってください。」
ミズキも譲る気はないようだ。こういうところは子供っぽい。
「ミズキばっかりずるいだろ!みんなのロイだろ!変われよ!」
リュウジがもっと子供みたいなこと言い始めた。俺はおもちゃか何かだと思われているのだろうか。
「いいえ!今日はわたしがロイ君を予約したんです!変わりません!」
ミズキはさらに俺の腕をつかむ。女の子に密着されているのに、うれしさよりも痛みが勝っている。
「ロイはどう思う!?」
「ロイ君はどう思いますか!?」
やっぱり君たち仲いいだろ。
『ロイ、どうすればいい助けてくれないか…』
『なんだかんだ仲良く見えるね、それこそ今日見たロミーとジェリーみたい。』
やはり、主人公とヒロインなだけあってかお似合いではあるんだよな。
ゲームだとこの二人くっつくと、喧嘩せずにずっといちゃいちゃしているんだけどな…
今だけ見れる景色みたいなもんか。
「この際二人で一緒に食べたらいいんじゃないか?」
現状二人で行動する機会なんてないだろうし、お互いの好感度稼いでおいて損はないだろう。
「却下。」「却下します。」
リュウジとミズキの言葉がハモる。
やっぱりお似合いだよ君たち。
とはいえ、このままだとお互い譲らないだろう。
仕方ない折衷案をとろう。
「しかたない、三人で一緒に食べよう。」
俺は肩をすくめて二人に提案する。
「まあ…それでしたら、よろしいですよ。」
ミズキは素直に応じてくれた。
ただそろそろ離れてくれないだろうか。
「悪い、ロイできれば二人で話がしたい…」
リュウジは譲らなかった。
普段だったら、人が多いほうが楽しいって言いそうなものなのに。
視線もあまり合わせてくれない。となるとちゃんとした悩み相談の可能性もある。
ゲームのシナリオにはないイベントだが、仕方がない。
今のリュウジにはプレイヤーがいない、だったら手伝ってあげるのが元プレイヤーとしての責務だろう。
できることならリュウジの力にはなってやりたいしな。
「全く、何か奢れよな?」
俺はリュウジに笑いかける。
「…いいのか?」
「そっちが言ったんだろ?」
「悪い…」
どうやら、本当に真面目な話らしい。
それに時期的にちょうどいいか。
こちらの用件もすませてもらおう。
「すまない、ミズキ。今日はお開きだ。」
「わたしよりカグヅチ君を選ぶってことですか?」
抗議するような目で、こちらを見てくる。
申し訳ないが、これ以上ミズキと仲良くするのもよくない。
心を鬼にするしかない。
「そうだ…この後はリュウジと一緒に行く。」
俺はミズキと目を合わせられなかった。
「…わかりました。」
ミズキは俺から手を放す。
ありがたいが、やけに素直に引き下がるな。
「ロイ君、今日はありがとうございました。」
「あぁ…」
「また一緒に遊びましょうね。カグヅチ君もごきげんよう。」
ミズキは俺に手を振り去っていく。
「なんか悪いことしちまったな…」
「埋め合わせはしてやってくれ。」
「…?あぁわかった。」
こう言っておけば、リュウジがミズキに対して何かしら埋め合わせをしてくれるだろう。
「それじゃ、さっさと行くか。行きたい店はあるのか?」
「だったら、適当に何か買って俺の部屋で食わないか?」
「わかった、行こうか。」
俺達は売店で買い物をし、そのままリュウジの部屋に赴いた。
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